30話 ふすま  

 


   「日本で日本刀が作られるよりずっと前からエジプトに日本刀作ってる職人集団がいるんだよ」


  「それじゃ、エジプト刀になるだろう」


  「いや、本当だって。俺の今までのマイマスター達は、エジプトに繋がり強かったし」


  「今までも、ずっとエジプトに居た気がする」


  「ふすまぁ」


  僕は、日本刀には憧れがあった。


  エジプトで日本よりずっと前に日本刀が作られていたなんて、受け入れがたいので、

 暫くスマホで情報を探していた。


 結局それらしい情報どころかまったく何も見つからなかった。


 武器男子の以前のマイマスター達の記憶なんてのはあてにならないから、情報源として聴く事ではないんだ。


 武器男子にとってマイマスターが死ぬのは、僕達生物が異世界転生をするのと同じようなものだ。


 前回のマイマスターとの記憶の多くを失い、また1からやり直す。


 異世界転生者も、前回の世界を生の記憶の多くを失い、また1からやり直す。


 次のマイマスターが誰になるかは、完全には選べない。


 異世界転生者も、次の異世界を次の生を完全には選べない。

 

 次のマイマスターの素質は、次のマイマスターとの歩む生は、1度では大きく変わらない。


 異世界転生者も、新たな異世界も生も、1度では大きく変わらない。


 武器男子も異世界転生者も、前回の記憶をしっかりと覚えてる事も、まったく覚えていない事も、

偽の記憶もない。


 だから、双口がエジプトに縁があるというなら、それは本当なんじゃないだろうか。


 武器男子の前回、今までのマイマスターとの記憶を否定するなら、それは僕の前世、今までの世界の生の記憶を

否定する事になる。


 それは、悲しい。


 それをしてしまったら、僕達はいつまでも変われない。


 僕は、いつまでたってもティアリスを死なせてしまう事になる。

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