第六幕 踏切の前にて その2

 今日も踏切の前で立ち続けている。

「今日も異常なし、と」

 王が変ってから今日で三日だ。別に何も変わっていない。人々はみな幸せそうだし、僕の仕事も変わっていない。

「これからもずっとここに立ち続けるのかなぁ」

 僕は退屈で少しウトウトしてしまった。そのため、その変化に気付くのが若干遅れた。

 あれほどけたたましく鳴り響いていた警告音が止んでいた。僕は目を疑った。踏切は開いていた。僕は慌てて足元の拡声器を拾い上げ、踏切が開いたことを声の限り叫んだ。

 ぞろぞろと人が集まってきた。人々は踏切が開いていることを確認すると、我先にとまたぞろぞろと渡っていった。

 そうだ、僕も行かなくては、あの本を探しに――

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