「時間の迷宮」〜歴史の真実を追い求め、未来を救うために、彼は過去と未来を行き来する〜

湊 町(みなと まち)

第1話 出会いの予兆

リー・シャンは、薄暗い大学の図書館の中で、無数の古書が並ぶ棚を探索していた。彼の専門は古代中国文明であり、特に秦王朝と漢王朝の歴史に精通している。今日も彼は、未知の情報を求めてこの静寂な場所に足を運んでいた。


薄暗い照明の中、李 翔はふと一冊の古い巻物に目を留めた。それは他の書物と違い、まるで自分を引き寄せるかのような不思議なオーラを放っていた。彼は巻物を手に取り、丁寧に広げた。その瞬間、彼の心臓は高鳴り、全身に不思議な感覚が走った。


「この巻物には何か特別なものがある…」


巻物には古代の象形文字がびっしりと記されており、李 翔はその内容に引き込まれていった。その時、不意に背後から声が聞こえた。


「その巻物に興味がおありですか?」


振り返ると、そこには中年の男性と若い女性が立っていた。男性は落ち着いた表情で、女性は穏やかな笑みを浮かべていた。


「私は張 天明チャン・ティエンミン、こちらは王 ワン・イー。私たちは未来から来ました。この巻物は、時間移動の技術を解き明かす鍵なのです。」


李 翔は驚きと興奮で言葉を失った。未来から来た科学者たちが自分の前に立っているなんて信じられなかった。


「信じられないかもしれませんが、この装置を使えば、過去と未来を行き来することができます。」張 天明は小さな装置を手に持ち、李 翔に見せた。


装置は手のひらに収まるサイズで、未来的なデザインが施されている。装置の中央には青い光が柔らかく輝く球体があり、その周囲には精巧なメカニズムが露出している。球体の光はゆっくりと脈打つように点滅しており、まるで生きているかのようだ。装置の側面には小さなタッチスクリーンがあり、時代を設定するためのインターフェースが表示されている。


「この装置は、時空の座標を設定し、時間の流れを操作するためのものです。」張 天明は続けて説明する。「タッチスクリーンに目的の年月日を入力し、中央の球体に触れると、装置が作動して時間移動が始まります。」


「君の知識と情熱が必要です。私たちと一緒に歴史を守りませんか?」王 芸の声は優しく、心に響くものがあった。


「なぜ私を選んだのですか?」李 翔はようやく口を開いた。


張 天明は深く頷き、李 翔の目を見つめて言った。「君の研究は我々の時代でも高く評価されています。特に、秦王朝と漢王朝の歴史についての君の深い知識は、他の誰にも負けない。君が持つ視点と情熱が、我々が直面する歴史の危機を救うために不可欠なのです。」


王 芸も加えて言った。「そして、君の誠実さと倫理観。我々は君が歴史を尊重し、最善の判断を下す人物であると信じています。」


李 翔の心は決まった。彼は過去に行くことを決意し、時間移動の装置を手に取った。


装置を起動すると、周囲の空間が歪み、光の渦が李 翔を包み込んだ。目を閉じると、瞬く間に時空を超えて、紀元前210年の秦の時代へと飛ばされた。


目を開けた時、李 翔は広大な宮殿の庭園に立っていた。周囲は鮮やかな緑と、美しい花々が咲き誇っていた。その時、一人の女性が近づいてきた。


「あなたはどこから来たのですか?」


美しい瞳を持つその女性は、まるで絵画から抜け出してきたかのような存在だった。彼女の名は白 バイ・ラン、秦の貴族の娘であった。


「私は李 翔。あなたの世界には不思議な力によって来ました。」


白 蘭は微笑み、その微笑みは李 翔の心を温かく包み込んだ。彼は彼女の美しさと気品に圧倒されながらも、自分の使命を忘れなかった。


「あなたに助けが必要なら、私がお手伝いします。」白 蘭の言葉に、李 翔は胸の鼓動を感じた。彼は、この時代での冒険が始まることを予感し、そしてこの美しい女性との特別な絆が生まれる予感に胸を躍らせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る