エピローグ
*描写あり
「全く……みのる、貴様何をしたか分かっておるのか」
「すいません…」
翌日、みのるは鬼々に説教を受けていた。
「一度吸血鬼になったら人間には戻れんというのに」
「だって鬼々さんがいなくなるとか言い出すから…」
「うるさい!わしは貴様の事を想って……!!ッ、今のはだな……!!」
さらりと想っている、と言ってしまい鬼々は顔を赤くする。
「人間よりも長く生きるんじゃぞ。飲める血がなくなるまでな」
「でも鬼々さん、眠ってたんだよね?」
「あれは…」
鬼々が眠りについていた理由。
それは、エサとしてたまたま噛んだ女に粘着され襲われかけたから、ということらしい。
そんな事で、とみのるは思ったが、鬼々はそれがたまらなく怖くて気持ち悪かったらしい。
ただ、血が飲めないのは吸血鬼にとって苦しいもので、少し眠れば血が無くても、多少乗り越えられるらしい。
(その多少が5、60年か、凄いな)
とみのるは感心した。
鬼々が眠りについていた棺桶は、知らぬ間に東京から遠く離れた北海道に持ち運ばれ、何者かに開封され、そして今に至る。
「眠らせてくれたその人に感謝しなくちゃ」
「はぁ?」
「だって、こうして鬼々さんと出会えたんだもん」
口に軽くキスをする。
「みのる……」
空気が甘いものに変わる。
鬼々も満更ではなさそうだ。
と、そこに。
「イチャイチャタイム終わらせてもらっていい?」
空気をぶち壊すように蓮華が現れた。
「チッ」
鬼々が思い切り舌打ちをする。
蓮華より少し遅れて宝と来夢がやってきた。
狭い部屋の中で、蓮華から吸血鬼は何か、どう生きていくか、血術とは何かとその使い方などを教わる。
「オーケー?とりあえず、あまり日には当たらないこと。昔より耐性がついてるって言ったって、油断しないこと。あとニンニクは本当に無理、香りはセーフだと、思う。僕は匂いも嫌いだけどね」
などと説教臭いおじさんのように念押ししてくる。
ご両親にはどう説明したの?と聞かれたが、二人はありのまま話し、驚きはされたが二人が幸せならよい、と言われた事を話した。
そして互いの恋人の事も。
館山家は、これからゆっくりと家族としての時間を取り戻していくのだろう。
***
「鬼々さーん」
「何じゃ」
「血、ちょうだい?」
朝、いつもの日常に一つ加わった事がある。
それは、みのるが鬼々に血を求めること。
「ん……ありがと。血って美味しいのかなって思ってたけど、美味しいんだね。鬼々さんのだから?」
「吸血鬼というのはそういうものじゃ、ほれとっとと仕事へ行け」
みのるはあの後もずっと和泉の元で臨床心理士として仕事をしている。
鬼々も相変わらず、来夢と共にモデルの仕事をしている。
しかも今や二人は二枚看板として売り出されていて、広告にされた商品は売り切れ続出らしい。
そして、宝は今、草間の事務所で弁護士として働いている。
大変な事も多い様だが、充実した日々を送っていると言っていた。
***
「っあ、はぁっ、んんっ」
「鬼々さん、かわいい、好き」
「うるさぃぃっ、今、噛むなぁっ!」
もう一つ変わったことがある。
SEX中にみのるが鬼々を噛むことだ。
それが気持ちいいのか、噛む度に鬼々のナカがきゅうっと締まる。
「なんで?気持ちいいの好きでしょ?」
「……ッ!わしにも、噛ませろっ!いつもいつも、わしばっかり…!」
「かーわいい、好きだよ鬼々さん」
以前よりもみのるの好き好きアピールが増えたこと。
そして。
「ん、わしも、す………す、すす、……きじゃ、ぞ」
照れながらも、好きだと言ってくれるようになったこと。
「もう可愛すぎ~!!」
「う、うるさい!だまれっ!!ひぁぁっ!」
「愛してる、ずっとずっと一緒だよ」
「ん…わしもじゃ、わしの傍から離れたら絶対に許さんからな」
二人が進む道に、もう邪魔者はいない。
これからも二人、ずっと一緒に歩いていく。
みのるは鬼々を抱きしめ、明日の朝を迎えるために瞼を閉じる。
これから先の未来に胸を膨らませて。
【完】
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