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 ピピピ、と、鳥の声。カーテンごしにやわらかく入ってくる朝日。身じろぎして、ぱちりと目を開ける。休日で、家族はみんなまだ寝てる。


 私・三科みしな早彩さあやは音を立てないようにベッドからおりて、自分の持ち物を入れている棚に近寄った。

 小物入れにしている引き出しを開けて、すみっこにある封筒の束を取り出す。


 10を超える、たくさんの封筒。

 和紙に筆文字。

 おしゃれなブラウンにシールのデコレーション。

 あわい水色――かと思いきや封筒自体は半透明で、中に入った便せんの色が透けている、なんてものもある。

 色も質感もひとつひとつ違って、どれも精いっぱいの工夫がこらされているのが伝わってくる。




 実はこれ、全部同じ人から届いた手紙なんだ。

 名前は、美文さん。私と同い年の女の子。通信教材(月1回、5教科のワークを届けてくれるサービス)のオマケ雑誌に、「文通広場」っていうコーナーがあって、そこで出会ったの。

 「文通広場」は読者同士をつないで、文通を始める手助けをしてくれるもの。そこに美文さんが「P.F.(ペンフレンド)募集!」のお便りを出してるのを見つけたのが始まりだった。

 私は編集部を通して手紙を出して、晴れて美文さんの文通相手になった。

 それが、中学生になってすぐの話。


 あれから1年弱。私と美文さんの文通は2か月に1回くらいのペースで続いてる。


 美文さんのお手紙は、いつもすごい。

 毎回全く違うテイストなのに、便せん、封筒、文字の色、そして文面の雰囲気までも統一感があって。

 なんだかまるで、色んな異世界から届いてるみたいなんだ。


 だからこそ、いつも不思議に思ってる。


 美文さんって、どんな人なんだろう。



✒ ● ✒ ● ✒ ●



 そうだ、そういえば。昨日、前に出した手紙の返事が届いたんだった。

 一番上に重ねてある封筒を手に取る。

「わあ……!」

 きれい……!

 羽根模様の封筒だった。銀色のラメがキラキラ輝いて、華やかなのに、ふわっとはかなげな印象がある。あて名はアルファベットの筆記体。ちょっぴり青みがかった、うすい灰色のインクで書かれている。涼しげで、封筒の雰囲気によく合っていた。

 やっぱり、すごいな。

 中を見ると、封筒と同じ羽模様の便せんが1枚入ってる。


――――――――――――――――――――

Dear,さあや

 お引っ越しのお知らせありがとう。新しい住所見たんだけど、これ、うちの近所! すごい偶然だね! もちろん、これからも文通友達としてよろしくね!

               by美文

――――――――――――――――――――


「え?」

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