風になれないウタ

ふみその礼

第1話  ウタ


ずっと閉じられたままの宇宙があったさ

さびしがりやの空ばかりが集まっていた


いつのまにか その子たちは

言葉を忘れていた

でも みんなひとつずつ

ウタを覚えていたな


誰かに聴かせたり

誰かに届けられる

ものではなかったけれど


そのウタが落ちてくるとき

下の世界の住民たちは

なぜか幸せを感じていた


なぜか みんなの悲しみを

ぜんぶ受けとめて 溶かしてくれる

そんな やさしさを 感じていたな


それは ウタが

すぐに消えてしまうものであること

その寂しさを思うたび

自分がいま そこにいられる幸せを

思いだすことができたから


ウタは待ち受けてるみんなの手のひらで

楽しそうにおどりながら

したへ したへ 落ちていったよ

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