第18話
「生き返った後、この国に戻って来てもすぐに導かれることなく少しの間留まった人がいた。
その人は呆然としていた。
どうした、と私は聞いた。
その人は、全てが終わった、とそう言って導かれた。
何かが違うと、よくないことが起きていると、ただ不安と恐怖がだけが私の心にはあった。
それから色々と調べた。
生き返った人たちの世界を見てみれば、ぽっかりと空洞のように何もなかった。
惑星だけではなく、星系や銀河系だけでなく、宇宙そのものが消えていた」
「……は?」
「私たちは、◾️がなんなのかよくわかっていなかった。死の神だと思っていた。魂を導く存在だと思っていた。実際その通りだった。
だが少し違った。それだけじゃなかった。
◾️は、多数の世界にとって有害になるモノを少数の世界ごと消し去る、そういう役割もあった。だから、生き返るのはやめておけ」
生き返った人は、世界にとって害になる。
そして、害のある世界は消える。
それを聞いた装飾卿は、嘘だと思う気持ちと妙な納得があった。
生き返るとはいえ、肉体などに魂を宿すのではなく、魂そのものを物質化しそれを身体にして活動する。
それが有害か無害かと聞かれれば、有害だろう。無尽蔵に世界のリソースを喰らい、無尽蔵に溜め込めるということになる。
それを滅ぼす存在を、この国にいる誰もが実在を疑えない。
死んだ時、何かに導かれる感覚を誰もが体験する。
大いなる神は、存在する。
「……だからって、諦めろと言うのか」
「ここは、そういう場所だ。生前に積み重ねてきたモノを捨てていく場所だ」
「……一言、伝えたいだけなんだ。それだけでいいんだ、それで十分なんだ」
だんだんと力が抜けていく装飾卿を見て、どうするかとアインは悩む。
おそらく、そう時間もかからず装飾卿は導かれるだろう。心が折れかけている。
頭がぼやけている時ならば、アインはそれでいいと考えるだろう。
しかし、今のアインには膨大な記憶が存在する。
生前から存在する使命感と、死後にできた殺意が、目の前の哀れな男を引き込めと言っている。
「…………どうにか、できるかもしれない……と言ったらどうする?」
「……なに?」
「安全に、何の心配もなく生き返れるかもしれない、その可能性があったらどうする」
「愚問だ。しかし、何故だ? お前は諦めろと言った。それを翻して、教唆している」
「……そうだ、貴方をそそのかしている。私のために、貴方を利用しようとしている。私は、◾️を殺したいんだ」
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