第11話

装飾卿の船から遠くで、弱々しい光が灯る。

その光はだんだんと一点に集まっていく。

一瞬のうちに、船に小さな穴が空き、光が貫通していた。

即座に船の砲は、光の発生場所を狙撃する。

結界に異常はなく、三枚のまま。

ありとあらゆる防御や物質的強度を無視して、捕捉したものを破壊する収束光。


「狂人共がッ!」


司教と呼ばれている者の一派が殺し屋アインを補助しているのは明白だった。

装飾卿は、司教とその一派を嫌悪していた。


「神を盲信する愚人共め。お前たちに私の邪魔をする資格はない!」


装飾卿の眼が変化する。

瞳孔が泡立つように無数に分裂し、複眼のようになる。

それは呪術だった。

見ることができない場所を見えるように、眼球を作り変える。

見ることができるのであれば、呪うことは装飾卿にとっては容易いことだった。



装飾卿が行動を開始した直後。

アインから連絡を受け、司教を含め十一人の団体は、街の中央を陣取っていた。

そこには、五メートル程の大きな機械装置があった。

機械には、カメラのレンズのようなものがあり何かを投写するのだろう。

この街の住人は、遠巻きにそれを眺めながら雑談に興じていた。


「あれは、何やってるんだ?」

「さあ?」

「西に向いてるし、装飾狂いをヤるんだろ」

「あんな大袈裟な機械を使って?レイドでもないのに」

「で、その装飾狂いは何やってんだ?」

「さあ?屋敷の改築とか?」

「ドカンドカンうるさいよな。この国に五年ぐらいいるけど、こんなこと今までなかったぜ」

「五年もいるの?二、三年で成仏だか解脱だかするって聞いたけど」

「人によるはず」


司教が機械装置を操作すると、レンズから光が灯りだんだんと一点に集まっていき、その瞬間に光がパッと消えて、機械の下部から煙が出始める。


「高次元兵器…なのか……そんなものまで、ここにはあるのか」


誰かが呟いた。

高次元からエネルギーを抽出し、破壊力として打ち出す兵器。

極めて高コストであり、これを使うならビーム兵器に優れているところは少ないと言われるほど、あまりいい性能ではない。

ビーム兵器より優れているところは、点か線ではあるが狙ったものを確実に破壊できることである。

司教が使った高次元兵器は、この一射で内部が熱で変形し、使い物にならなくなった。


そして、司教以外の十人の頭が破裂した。

その次に、周囲にいた者たちの頭も破裂した。


「呪詛返しは上手く機能したようですね。さて、もう一つの方も上手く行けばいいのですが……全ては——」


司教は一人でそう呟き、頭が破裂した。

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2024年10月22日 23:00

死の国 戌亥 @abc123abc123abc123

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