第18話 泰希との電話

『へー、結構充実した一日だったじゃん』

「そうだな」



 夜、泰希との電話で日中の出来事を話した。夕方過ぎになった後、俺は天鷲と白鷹をそれぞれ家まで送り、そのまま帰ってきた。相手が男の泰希ならまだしも相手が異性で年下の天鷲と白鷹であり、俺は誘ってもらった側なので最後までついているのが礼儀だと思って送ってきたのだった。



『それにしても、贈り物がペンダント……ペンダントかぁ……』

「なんだよ? それにも意味があるのか?」

『あるさ。まずペンダントって広義的にはネックレスの一つなんだ。ネックレス自体が首飾りの総称だからな』

「へー、そうなのか」

『つまり、お前はネックレスを贈った事になるんだけど、ネックレスは『幸せ』や『飛躍』みたいな意味を持っていて、贈り物にする中では良い部類ではある』

「じゃあ問題ないじゃないか?」

『ただ、意味は他にもあって、『束縛』や『独占』という意味もあるんだよ』

「え?」



 驚く俺の声を聞いて、泰希はため息をつく。



『……それで、ネックレスをプレゼントするという行為には、独占したいと思う程に一緒にいたいという想いがこめられてるという解釈が一般的なんだ。二人がそこまで知ってるかはわからないけど、天鷲は自分が好きかもしれない相手が好きな少女漫画と同じようにペンダントを贈ってくれて、白鷹は意識的かはわからないけど独占したいという意味を持つキスをした相手から同じような意味を持つプレゼントを贈られた。お前さ、ウチの姉ちゃん狙いながら他にも彼女作ろうとしてない?』

「してないしてない! そんな器用な人間じゃないのはお前が一番よく知ってるだろ!?」

『まあな。ただ、二人にとっては色々な意味で思い出のペンダントにはなってしまった。それだけは覚えておけよ、大和』

「……そうだな」



 答えた後に俺はため息をつく。プレゼントした事を後悔はしていない。天鷲達から少女漫画の話を聞き、二人でセットの星形のペンダントを見つけてこれをプレゼントしたら喜んでくれそうだと思ってしただけではあるからだ。ただ、好きな人を落としたいと言う割りには、まだまだ勉強不足な事ばかりなのもわかった。これでは夕希さんを落とすどころか呆れられてもおかしくない。



「……俺、もっと色々な事を学ばないとな」

『学校じゃ教わらない色々な事をな。ただ、お前の心配はいらないと思う』

「え?」

『お前、その内姉ちゃんに呆れられるとか思ってたろ? 少なくとも、今のお前ならあり得ねえさ』

「そうかな……」



 自信はなかったが、電話の向こうで泰希はクスクス笑っていた。



『そうだよ。だから、明日の姉ちゃんとの外出も楽しんでこい。姉ちゃんも楽しみにしてたしさ』

「わかった。楽しみながら頑張ってみるよ」

『おう。それじゃあおやすみ』

「ああ、おやすみ」



 泰希との電話を終え、携帯に充電器のプラグを挿した後、俺は部屋の電気を消してベッドに入った。



「……色々な事になってるけど、夕希さんの事を落とすのが俺の目的なんだ。それだけはしっかりとやるんだ」



 自分に言い聞かせるように言った後、俺は目を瞑り、そのまま眠り始めた。

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