第13話 夕焼けの帰り道
部活終わり、一緒に帰る約束をしていた泰希と待ち合わせ、俺達はのんびりと歩きながら帰っていた。
「なあ」
「んー?」
「白鷹は何の用だったんだ?」
「俺が夕希さんが好きな事はわかってるけど、結婚している相手を好きになるのはやっぱりよくないんじゃないかと言われたから、夕希さんは離婚した事を言っちまった。ごめん」
「いや、良いって。それだけだったのか?」
俺は首を横に振ってから答えた。
「あとは本人は自覚がないとは思うけど、天鷲が俺の事を好きみたいだ。それで、自覚したら暴走しかねないからその時はどうにかしてあげてほしいってさ」
「あー……天鷲のあれって自覚なしだったのか。てっきりお前へのアプローチのためにあんなにべたついてたんだと思ってた」
「それでわかったって答えたら、お礼の先払いをされた」
「へー、どんなの?」
泰希が少し興味ありそうな様子で聞いてくるのに対して俺はあの時の事を思い出して少しだけ顔が熱を帯びていた。
「……キスされた」
「……え、マジ!? どこにだ!?」
「首もと。痕はついてないけどさ」
「首、首かぁ……」
泰希は腕を組みながらうんうんと頷く。その様子を見て俺は首を傾げた。
「なんだよ? ちょっとドキッとはしたけど、キスなんて挨拶でする国くらいあるだろ?」
「少なくともこの国じゃしないけどな。というか、首っていうのがポイントなんだよ」
「何か意味でもあるのか?」
「ああ。ちょっと待ってろ」
泰希は携帯を取り出すと、手早く操作をし始めた。そして何かを見つけたようで笑みを浮かべると、画面を俺に見せてきた。
「ほら、このサイトを見てみろよ」
「どれどれ……へー、場所によって色々な意味があるんだな」
そんな事を言いながら見ていき、首や首筋へのキスが書かれた部分に来た瞬間、俺の顔は更に熱を帯びた。
「しゅ、執着心の表れ……?」
「独占欲やもっと近づきたいっていう意味があるキスだってさ。お前、白鷹にも何だかんだで恋心を抱かれてるんじゃないか?」
「し、白鷹が俺に恋を……?」
「同じ部活の後輩にも聞いたんだけどさ、白鷹は本当に男子と話す事がないし、天鷲と一緒にいる事が多いから男子側からも話す機会を作りづらいんだってさ。なのに、お前は白鷹から警戒されてないし、お礼の先払いという形で独占欲や近づきたいという想いの意味があるキスをされた。これは脈アリだろ」
「そ、そうなのか……」
突然の事に動揺する。これまでそれらしい言動をしてこなかった白鷹が俺の事を好きだと突然言われても混乱するのは当然のはずだ。
「け、けど……俺には夕希さんが……」
「それはわかってる上での勇気なんだよ、きっと。だから、その気持ちやお願いは受け止めて、いつか本当に白鷹から告白されたらその時はしっかりと返事をしてやれ。それが男ってもんだぞ」
「泰希……そうだな、くよくよしてても仕方ない。その時はその時で、今は夕希さんを落とすのに全力を尽くすんだ」
「ああ、頑張れよ。未来のお兄様?」
「その通りだけど、なんか気持ち悪い言い方だな」
俺の言葉に泰希が笑みを浮かべ、俺はそれを見ながらふうと息をついた。その後も俺達は夕焼け空の下を馬鹿話をしながら帰った。
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