第11話 昼のばか騒ぎ

 その日の昼、俺達は教室で他の奴と一緒に昼飯を食べていた。普段から他の奴がコンビニで買ってきた物なのに対して泰希がおばさんお手製の弁当、そして俺のは俺が作った弁当であるため初めの頃は結構珍しく見られていた。



「お、今日のも美味そうだな。流石は家庭科部」

「やっぱり料理が出来るに越したことはないからな。お前達も母さんの手伝いくらいはしておいていいと思うぞ?」

「それはわかってんだけどさ」

「なんかこう……今さらになって親の手伝いを進んでするっていうのは少し恥ずかしいというか……」

「そうだよな」



 クラスメート達の言葉に泰希は苦笑いを浮かべる。そうして食べていた時、クラスメートの一人が何かを思い付いたような顔で話しかけてきた。



「そういえばさ、柴代」

「ん、なんだ?」

「お前の好みの女ってどんなだ?」

「好み……いやに突然だな」

「だってさ、お前って秋田ほどじゃないけど、二年の男子に大人気の天鷲に懐かれてたりその友達の白鷹にも警戒はされてないだろ? でも、好きって感じじゃなさそうだし、そうなるとどんな女が好きなのかなと思ってさ」

「好き、か……」



 それは当然夕希さんだ。一度諦めはしたが、まだチャンスが巡ってきたわけだからやっぱりこのチャンスは逃したくない。ただ、これを素直に言ってもいいのか少し悩んでしまった。


 そうして悩んでいた時、泰希は俺の事を見てからクラスメート達に話を始めた。



「一つだけ言うと、コイツは年上の方が好きなんだよ」

「お、年上か! それじゃあ天鷲達に反応しないのも当然か」

「年上、いいよな……同い年や年下にはない色気みたいなのがあってさ……」

「それでいてやっぱりボインな方がいいよな。あのおっきいのに顔を挟まれてその中で寝たいわぁ……」

「うっわ、変態いるわ、ここに」



 クラスメート達は楽しそうに話し始め、その様子を女子達は呆れたような顔で見ていたが、それを見てから俺は泰希にこそっと話しかけた。



「ありがとな、泰希」

「いいんだよ。コイツらはネタさえ投げ込めばこんな風にばか騒ぎする連中だし、このままこの話題で昼休みも終わるだろ」

「そうだな。でも、やっぱり誰にでも言えるようにはなりたい。別に言えない事ではないわけだしさ」

「まあな。けど、そのためにはまずコイツらに変にばか騒ぎしないように言い含めないといけないし、今はこれでいいんだよ」

「そうだな」



 俺達が話している内にクラスメート達は今度は自分の好みについて話を始めていて、その話を聞いていた時、俺の携帯がブルブルと震え始めた。


 画面を見ると、そこには白鷹の名前が表示されていて、どうやらトークアプリにメッセージが来ていたようだった。



「ん、どうした?」

「白鷹からトークアプリにメッセージが来てたんだ。見た感じ、今日の放課後に少し話したいって感じだな」

「そっか。まあ何か聞きたい事でもあるんだろうな」

「だな」



 白鷹のメッセージに返事をした後、俺は再びクラスメート達とのばか騒ぎに加わっていった。

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