第45話

第45話 リディア杯 第1試合(シャドー vs ルーク)




 リディアの街、リディアタウンは華やかな装飾で彩られ、待ちに待ったリディア杯の開幕を迎えていた。巨大な円形の石造りのスタジアムには、多くの観客が集まり、その期待感が会場全体に漂っていた。スタジアムの中央には高台が設けられ、そこにリディアが立っていた。彼女は出場者と観客を見渡し、静かに手を挙げた。




「皆さん、リディア杯を開幕します!」リディアの声が澄み渡り、会場に響き渡った。「この大会は、私たちの力を試し、友情を深める場です。全ての出場者が全力を尽くし、素晴らしい戦いを繰り広げることを願っています。」




 その言葉に応えるように、観客席からは大歓声と拍手が巻き起こった。リディアは微笑みながら高台を降り、次の段取りへと移った。




 トーナメントの組み合わせ決定の瞬間がやってきた。選手たちは、特別な箱の中に入れられた玉を引くことで、自分の対戦相手を決めることになっていた。箱にはそれぞれの色と番号が振られた玉が入っており、その組み合わせでトーナメントが決定する。




 選手たちは、緊張と期待の入り混じった表情で箱の前に並んだ。一人一人が玉を引くたびに、観客席からは歓声やざわめきが上がる。玉を引いた選手たちは、自分の番号を確認し、その場で対戦相手を知ると、それぞれの決意を新たにしていた。




「これで全ての組み合わせが決まりました!」リディアは再びマイクを握り、選手たちに向けて声をかけた。「選手の皆さん、全力を尽くして戦い、リディア杯を最高の大会にしましょう!」




 選手たちは力強く頷き、観客席からは再び拍手と歓声が湧き上がった。リディアはその光景を見つめ、心の中で次の戦いを楽しみにしていた。スタジアム全体が一体となり、これから始まる激戦に向けて、熱気と興奮がさらに高まっていくのを感じた。




 こうして、リディア杯は盛大に開幕し、選手たちはそれぞれの目標に向かって歩みを進め始めた。大会の幕開けは、街全体に希望と興奮をもたらし、リディアタウンはさらなる盛り上がりを見せることだろう。




 ▼抽選結果


 第1試合:シャドー vs ルーク


 第2試合:ロゼッタvs ルミナ


 第3試合:龍王 vs バルド


 第4試合:セリーナ vs セラフィム


 第5試合:フィオナ vs エヴァ―


 第6試合:エルフ vs ダークエルフ


 第1試合:シャドー vs ルーク


 早朝の空が淡いピンク色に染まり、武道場の周りに集まった観衆の視線が一点に集中していた。そこには、スライムのルークとヴァンパイアのシャドウが立っていた。互いに一歩も譲らぬ構えで、次の動きを見計らっている。観衆のざわめきが次第に収まり、二人の呼吸の音さえ聞こえそうな静寂が訪れた。リリィが審判として高台に立ち、試合の開始を宣言する。




「皆さん、注目してください。第1試合、シャドー対ルークを開始しますの~!」リリィの声が響き渡り、緊張感が一層高まった。




 ルークはスライムの柔軟な体を揺らし、にやりと笑った。「シャドウ。全力でやろう!」




 シャドウは冷たい目でルークを見据え、牙をむき出しにして低く唸った。「ルーク。これからの勝負。お互い全力で戦いんしょう」




 その言葉が終わると同時に、シャドウが闇の魔法「ダークランス」を放った。暗黒の槍がルークに向かって高速で飛び込む。しかし、ルークはその攻撃を正面から受け止めると、体全体を震わせて特殊な反射の波動を放った。その波動はダークランスを包み込み、エネルギーの方向を逆転させてシャドウに向けて跳ね返した。シャドウは驚きつつも、その反射を回避する。




「へぇ~。そんなこともできるのでありんすか!」シャドウは驚きの声を上げたが、すぐに態勢を整えて再び攻撃の構えを取った。「であれば、これならどうでありんしょうか!」彼女は両手を広げ、炎の魔法を放った。




「フレイムバースト!」




 巨大な炎がルークに襲いかかる。しかし、ルークはその炎を吸収し、体の色が赤く輝いた。「その程度じゃ効かないよ、シャドウ。」




 ルークはそのまま一気にシャドウに突進した。シャドウは素早く防御の魔法を展開し、ルークの攻撃を受け止めた。しかし、ルークの勢いは止まらず、そのまま力を込めて押し続ける。シャドウの防御が徐々に押し負け、彼女の顔に焦りの色が見える。




「なんて力でありんしょう…!」シャドウは苦悶の表情を浮かべながら、必死に防御を維持しようとする。しかし、その瞬間、ルークは少し後退し、体を揺らし始めた。スライムの柔軟な体が変形し、美しいエルフ型の女性へと変わっていく。彼女は艶やかな剣道着をまとい、その姿は一層際立っていた。シャドウはその光景に一瞬たじろぐ。




 ルークは手をかざし、光魔法を発動させた。彼女の手元には、赤色に輝く光剣が現れた。「主に教わった剣道みせる!!」ルークは笑顔を浮かべ、その光る剣を手に構えた。その姿はまさに剣士そのものであり、観客の視線を一身に集めた。




「へぇ、そのような技も使うんでありんすね・・・」シャドウは冷静を装いながらも、次の動きを見据えた。




 ルークは一瞬でシャドウに接近し、剣道の技を繰り出した。赤色に輝く光剣が風を切り、シャドウの防御を崩そうとする。シャドウは必死に防御しつつ、反撃の隙を探していた。




 ルークの光剣がシャドウの肩に命中し、彼は痛みに顔を歪めた。しかし、シャドウはそのまま闇の魔法を放つ。「ダークバースト!」




 暗黒のエネルギーがルークを包み込むが、ルークはその攻撃を吸収しながらスライムの形に戻った。「その程度じゃ効かないよ、シャドウ。」




 シャドウは驚愕の表情を浮かべながら、目の前にフレイムバーストを展開した後、バク転して距離を取った。着地と同時に悔しげに呟いた。「はぁ。今のルークへの攻撃もだめでありんしたか…」




 ルークはスライムの形に戻り、その攻撃を吸収していた。「その程度の攻撃では、僕を倒せないよ、シャドウ。」




 その瞬間、ルークは一瞬の隙を見せた。変身の過程でわずかに防御が緩んだのだ。シャドウはその隙を逃さず、さらに攻撃を続けた。「くそっ、これでも食らえ!」彼女は最後の力を振り絞り、最大の魔法を放とうとした。しかし、その瞬間、ルークは再びエルフ型の女性に変身し、シャドウに向かって突進した。




 ルークは手元に光の剣を作り出し、その剣で連続の突きを繰り出す。三段突きのように高速で繰り出される突きは、まさに剣術の極みだった。シャドウはギリギリでその突きを避けようとしたが、最後の一撃が右肩をかすり、服が破けた。その瞬間、シャドウは痛みを感じつつも、ルークの突きが終わった瞬間に足払いを繰り出した。ルークはバランスを崩し、地面に倒れる。




「ここからが本番だ!」シャドウは叫びながら、倒れたルークを蹴り上げた。その瞬間、シャドウは手元に火で作り上げた火球を連続で叩き込んだ。火球がルークに命中し、爆発が連続する。




 しかし、ルークは再びスライムの形に戻り、その爆発のエネルギーを吸収していた。「その程度では終わらないよ、シャドウ。」




 シャドウは驚愕の表情を浮かべながら後退する。「はぁ。今のルークへの攻撃もだめでありんしたか…」彼は息を切らしつつ、再び攻撃の構えを取る。




 ルークは笑顔を浮かべ、再びシャドウに接近する。ルークは素早くシャドウの懐に入り、強烈な蹴り上げを繰り出した。シャドウはその一撃で5メートルほど上空に蹴り飛ばされ、空中でバランスを失った。




 その瞬間、ルークは両手にエネルギーを集中させ、光の火球を作り出した。「ソラソラソラ!」と叫びながら、次々と火球をシャドウの背中に叩きつける。シャドウは防御する間もなくその攻撃を受け、上空で連続する爆発の衝撃に耐えきれず、地面に叩きつけられた。




 シャドウが地面に倒れ、動かなくなったのを確認すると、リリィが高台に立ち、声高らかに宣言した。「勝者、ルーク!」




 観客からは大きな歓声と拍手が湧き上がり、ルークは微笑みながらリリィに一礼した。シャドウも苦笑しながら立ち上がり、ルークに歩み寄って手を差し出した。




「ルーク、まいりんした。本当に強うてかないません…」




 ルークは微笑み、「いい戦いだったよ、シャドウ。また戦おう。」




 こうして第1試合は幕を閉じ、リディア杯の熱気はさらに高まっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る