ラーナ大陸記 黒髪の公爵と銀の乙女
atias
受け継がれる爵位
ある日の夜にラーナドゥール王国のアカトス女公であるアリシアは病に冒されて自分の命がやがて尽きる事を予感していた。
アリシアは若き頃の事を思い出していた、かつてレイノルズ王国の王女であるシエナやセレディア王国の伯爵ディオンとその妻ソフィアそして聖騎士ルークとシェイダル教団の司教アルナと少女ナディアと共にアルムガルド帝国と戦い冒険した時の事を。
死を迎えることはアリシアにとっては怖くは無かった、ただ一人息子のルシアスの事を置いて去る事を考えるとこの上なく辛かった。
自分がこの世を去る前にアリシアはルシアスに出来る限りの事をするように決心した。
病に冒される前アリシアは夫を亡くして忘れ形見となって溺愛するルシアスに甘かったが自分の命が長くないと感じた日からルシアスが自分の後を継ぎ公爵としてやっていけるように厳しく接するようになった。
最初の頃はそれまでとは違うアリシアの関わり方に反発するルシアスだったが厳しい態度の中にも愛を感じたルシアスは徐々に母の言う事を良く聞き剣術や魔法を学び成長していった。
それから2年アリシアは倒れた、最後を迎えようとしていた日アリシアはかつての仲間やラーナドゥール王エイベルそして父であるレイノルズ王国の王ディレートと母であるカタリナ達に見守られていた。
姉であるシエナがアリシアの手を握るとアリシアは皆にルシアスの事を頼んだ。
シェイダル教の神殿で母の病が治るように祈っていたルシアスの元に城の従者からアリシアが亡くなった事を告げられた。
ルシアスはその場を去って亡くなったアリシアの元に向かった。
亡くなったアリシアを前にルシアスは泣き崩れた、アリシアの葬儀が終わってからしばらくの間ルシアスはまとまに食事もとらなかった。
アリシアの顔を思い出しては泣くそんな日々を過していた。
そんなルシアスを心配したドラゴンのバルアは人は死ぬと皆シェイダル神の元に帰り身体は失われてもその魂は生き続けて今もルシアスの事を見守っていると話した。
ルシアスは友人であるドラゴンのバルアの言葉を聞いて思った。
(母上は今も見守っている?)
そしてバルアはルシアスを背中に乗せるとゆっくり空を飛んで街を眺めさせて言った。
「この街や、この土地をアリシアが守ったように今度はお前がアリシアの代わりに守るのだ、私はそのお前の為に生きよう!」
ルシアスはバルアの言葉を聞いてアリシアの後を継ぐ事を心に誓った。
そしてバルアと街を眺めた日から1週間後ルシアスは王都に招かれて十二歳の若さでアカトス公爵となった。
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