催眠アプリで恋人を寝取られて「労働奴隷」にされたけど、仕事の才能が開花したことで成り上がり、人生逆転しました

フーラー

プロローグ

プロローグ NTRの復讐は「寝取り返し」だけじゃない

ある高級な宿の一室で、醜悪な外見をした肥満体の中年男性「リマ」は、ワイングラスを片手にニヤニヤと笑っていた。


「さあ、ボクの可愛い妻たち? こっちにおいて、乾杯しよう?」

「はい、ご主人様」


そう言うと、美しい4人の女性が男たちの周りに集まってきた。

彼女たちは全員見栄えのいい下着姿をしており、ニコニコと愛想よく笑みを浮かべていた。



……リマは異世界から転移してきた存在だ。



ニヤニヤと笑いながら、リマは何もない空間から突然スマートフォンのような板を呼び出した。


「フフフ……。このチートスキル『催眠アプリ』は最高だねえ。これのおかげで、キミ達はボクの『性奴隷』になってもらえたんだから?」


そういうと、4人の美女たちはリマに抱き着いて答える。


「は~い! ご主人様の奴隷になれて光栄で~す!」

「そうだよねえ~? それじゃ『労働奴隷』のお前らや、可愛くない社員たちは、そっちで仲良くやっているんだよ?」



そういってリマはフン、と鼻を鳴らせて下座の方を見据えた。

こちらはこの4人の女性の元夫や恋人たちを中心に、見た目が良くない女性や中年の女性、その他十数人のメンバーと思しき男女が居た。



「ボク、お腹空いたな~。性奴隷1号ちゃん、イグニスに言ってやってよ?」



リマは、でっぷりと出た大きなお腹を押さえながら、隣にいたエルフの美女に、そうお願いする。


「ええ。……ほら、イグニス? ご主人様がお腹を空かしているのよ? はやく用意しなさいね、屑カレのくせにグズなの?」


彼女はそう言いながら、せかすように一人の獣人の男を罵倒する。

彼女は元々、先ほど屑カレと言われた獣人「イグニス」の元カノだ。




リマは催眠アプリで彼女を奪った際に「元恋人や彼氏に嫌悪感を持ち、罵倒することで興奮する」ように暗示をかけている。その為、このような口調になるのだろう。



……だが、イグニスは特に気にする様子もなく、台所から大きなピザを持ってきた。



「ええ、もうできましたよ! ほら、好きなだけ食べてください、ご主人様!」



湯気が立ちながら美味しそうなピザを見て、その場にいた全員が「お~」とつぶやく。


「うっひょ~! 美味しそう!」

「ええ、そうですね!」

「美味しそうですね、ご主人様!」

「本当、美味しそうですね!」



そう言いながら嬉しそうにするリマと、それに賛同するハーレム陣。

一方、下座の面々はイグニスに対して楽しそうに訊ねる。



「うお、すごいじゃん! このペパロニ、確か店売りしてない奴だよな?」

「だろ? 実はこれ、ニルセン社長の知り合いのレストランで教えてもらったんだ!」

「え、マジ? ひょっとしてそのレストランって、あそこの『ピザ・レジェンド』のこと?」

「ああ、分かるんだな、さすがヨアン!」

「私にもわかるよ。あのお店、おばちゃん世代にだって人気だもんね。……あら、美味しい。死んだ旦那も喜ぶね、こりゃ。チーズの溶かしかたに工夫があるでしょ?」

「あ、部長は分かります? これはですね……」



「…………」

料理は全部ハーレム妻に任せっきりで、自分ではパンを焼くことすらまともにリマには、このような話題が出てこない。


アハハハハ、と楽しそうに談笑するその様子を見ながら、面白くなさそうな表情をしているリマを見て、女性陣は必死な表情でフォローするような表情を見せた。


「あ、あの、ご主人様! ほら食べましょうよ? あ~んしてください!」

「うわ、凄い食べっぷり! うちの屑カレとは大違いですね!」

「あ、そうだ! おっぱいもみます?」


リマはそのフォローで、ようやく気分を持ち直したのか、ハーレム妻を見て笑いかける。


「う、うん! そうだね。そうだ、ボクには君たちが居るんだから。……そうだな。ほら、来いよ、労働奴隷『ニルセン』?」

「はい、ご主人様」



ニルセンと呼ばれたリザードマンは、リマに呼び出されてやってきた。

彼は元々雇われで働いていたが、現在は独立し、※ゲーム事業を営んでいる。



(※ この世界にも、我々の世界で『90年代後半水準』のゲームが携帯機で存在する。なお『市場の熱さ』も90年代後半並みである)



勿論、下座に居る社員はみな、ニルセンの従業員でもある。

リマは彼の妻(種族はサキュバス)の胸を揉みしだきながら、笑みを浮かべる。



「ほら、どうだニルセン? お前にはもう拝めない光景だぞ? 可愛いよなあ、お前の元妻、性奴隷2号ちゃんは?」

「見て、私の本当の旦那様、リマ様は? たくましくて立派でしょ? 男として恥ずかしくないの? この偽旦那!」



偽旦那、と妻から言われたニルセンは、悔しそうな表情を見せる。


「ええ、とても……って、すみません。ちょっと手紙が」


だがその瞬間、この宿の店主と思しき男が手紙を持って、ニルセンの前に飛び込んできた。

手紙を読むうちに、ニルセンの表情が、すっと実業家のものに変わった。



「ふーん。ボクを差し置いて手紙なんて。いったい何だったのさ」

「すみません、ご主人様。我々の会社が今度、××新聞社に表彰される話でした」

「え、嘘? ……あの、大陸中で読まれてるあの新聞社?」



それを聞いてリマは、信じられないという表情を見せた。



「この間のゲーム、大ヒットしましたから。シナリオも高く評価されたので、今度国際的な賞を頂けるんですよ」

「あ、うん……」

「ああ、失礼しました。どうぞ、私の元妻の胸をもんでください。精いっぱいくやしがりますので!」



よほど表彰される話が嬉しいのだろう、ニルセンは満面の笑みで答える。

その一言に興をそがれたのだろう、リマは、


「あ、うん。もういい、下がれ……」


そう言ってニルセンを返した。



「……まぐれですよ、まぐれ! 決して、あの偽旦那が10年間頑張り続けた結果が報われたってじゃないですよ!」

「そうそう! ご主人様だって、10年間……その……そうだ! 私たちとセックスし続けてたじゃないですか! それにゲームも沢山クリアしましたよね!」

「ですよね! 凄い、たくましい! ご主人様! ……おっぱいもみます?」

「う、うん……」



そう話をしていると、下々の連中は酒も進んだのだろう、映画の話を始めている。



「そういえば、この間ミケルが脚本した演劇、面白かったよな!」

「だろ? あの主演の女の子さ。演技も凄い上手かったし、俺もやってて楽しかったよ」

「そういえばあの映画のワンシーンって、確か少し年前に流行った『臆病ものの隠し砦』のオマージュでしょ?」

「あ、それじゃあさ、あの時の曲もそのパロディだろ? いや、あれはマジ熱い演出だよな?」

「そうよね。私も年甲斐もなく驚いちゃった! 感動して本当に泣くんだなって!」



元の世界に居た30年、そして転移してからの10年間、ずっとゲーム以外にコンテンツを消費してこなかったリマは、彼らの話を理解できないようだ。

イライラした表情を見て、ハーレム妻たちは声をかける。


「あ……あの、ご主人様?」

「あ、そうだ、ゲームの話しましょ、ゲームの話! ご主人様、最近どんなゲームが楽しかったですか?」


ゲームの話を振ってもらえたリマは、嬉しそうに口を開く。


「え? やっぱり最近ボクがやったゲームで面白かったのは『六道の過去』かな? あのゲーム、怖いのにキャラが可愛くってさあ!」


そう言いながらしばらくの間、一方的に気持ちよさそうにまくしたてるリマ。

それに対して、ハーレム妻たちも『ええ』『すごーい!』と合わせながら、リマの機嫌が直ったことに安心したように笑みを浮かべる。



「やっぱり、特に良かったのはシナリオだね! あのシナリオ書いた人がいたら、サイン欲しいくらいだよ!」


それを聞いて、今度は別のハーレム妻が頷いた。



「え? 分かりました、じゃあちょっと呼んできますね」

「……はい? なんで性奴隷3号ちゃんが呼べるの?」

「だって、そのゲームのシナリオライター、ミケルですから。ねえミケル? ちょっと来て~? ご主人様がお呼びだから!」

「え? ああ、はい!」



そう言われてやってきた有翼人のミケルは、いささか酔った様子でやってきた。

彼もまた、リマの「労働奴隷」である。

リマは、いわゆる「BSS(僕が先に好きだったのに)」をやってやりたかったため、当てつけのように彼の想い人を寝取ったのだ。



ミケルは、自身がかつて片思いをしていた女性、即ちリマが『性奴隷3号ちゃん』と呼んだ美女の前に立って尋ねる。



「何の用でしょう、ご主人様方?」

「なんか、あんたのサイン欲しいんだって。屑のあんたが偉くなったものね?」

「サイン? お安い御用ですよ!」



ミケルは慣れた手つきでサインを描いた。

相当書きなれているらしく、色紙に美しい筆跡のサインを描いた。

それを満面の笑みで渡すミケル。


「はい、ご主人様!」

「うう……嬉しいのに……なんだよ……!」



10年間なんの努力もしてこなかったリマにとって、自身の『労働奴隷』に偉業を成し遂げられたことがよほどショックだったのだろう。

また、ハーレムの女性たちは焦るような表情でフォローをはじめた。



「すごい、ご主人様! こんなに素敵なサイン貰うなんて羨ましいなあ!」

「ほんとう! あのミケルも、たまには役に立つわよね、ね?」

「そうそう! ほら、おっぱいもんでください!」



「くっそおおお……おい、そこのトップオブ屑のヨアン! こい!」


よほど自尊心を傷つけたのか、リマは一番最近妻を寝取った、ヨアンを呼びつけた。彼の種族はインキュバスだ。



「はい、なんでしょう、ご主人様?」

「今から、お前の元妻、性奴隷4号ちゃんと濃厚なキスをするから、黙ってみてろ!」

「え? はい……」

「あんたは悔しくみてなさいね、このゴミ旦那!」


そう言うと、ヨアンの元妻であるハーフリングの美女は、リマの膝の上に乗ると、唇を差し出す。


「ん……」

「ウヒヒ! 性奴隷4号ちゃんのおっぱいは小さくてかわいいねえ!」


それを見せつけるように濃厚にキスをしながら胸を揉みしだくリマ。

だが、


「やっぱり……ご主人様。すみません」

「なんだ? 黙ってみてろって言ったろ?」

「あ、はい……ですが……その……ごめん」


ヨアンは一度謝ると、『性奴隷4号』と言われた女性に声をかける。


「間違ってたら悪い。……その……体調悪そうだけど、多分『今日』だろ?」

「え?」


そう言うと、ヨアンは近くに置いてあったソファーから毛布を持ってきた。


「お腹を冷やすんじゃない。少し寝とけよ。……それと、薬は持ってきてるか?」

「あ、ううん……」



下着姿をした彼女が持っているわけがない。

それを理解したヨアンは自身の荷物袋から生理痛の薬を取り出した。彼女が普段服用しているものだ。


「そろそろだと思って、一応持ってきてよかった。あと、この懐石(炎で温めた小石を布でくるんだもの)も使ってくれ。暖かい飲み物は?」

「うん、お願い」



ヨアンはそう言われて、飲み物を机の上に置き、そこに寝るように伝えた。

そして、元妻のお腹をさするヨアン。

彼女は楽になったのか、先ほどよりも穏やかな表情で答える。



「ありがとう、ゴミ旦那のくせに、いいとこあるわね……」


その様子を見て安心したような表情を見せ、ヨアンはリマに向き直る。



「すみません、ご主人様。彼女は今体調が悪いようなので、今日は勘弁を。今度いくらでも悔しがりますから」

「あ、ああ……」



生理=女の子とセックスできない日、程度の認識しかないリマには、このような気遣いは出来ないのだろう。



「す、すごい、ご主人様! 生理のことに気づかないなんて、豪快ですね!」

「ほんとほんと! 私、あこがれちゃうなあ! その豪快さ!」

「そうそう! ほら、おっぱいですよ、ご主人様!」

「くっそおおおおおおお!」


それを見たリマは、うめき声をあげると、


「どいつもこいつもボクをバカにしやがって! おい、ニルセン!」

「はい!」

「このボクをお前の会社の社長にしろ!」

「え? ですが……」

「逆らうんじゃない! ボクだって、出来るんだからな!」


そう言うと、リマはスマホの催眠アプリを起動し、ニルセンに見せる。


「あ、はい、ご主人様……。明日から、そのように手配いたします……」

「フン!」



そう鼻を鳴らしながら、どっかりとリマは座る。




「ボクはな! 現代知識を持ってるんだ! それがあればこんな古臭いゲーム業界なんて、簡単に無双してやれるんだ!」




死ぬまで『女を侍らせているだけで幸せ』であれば、彼はまだマシな末路になっただろう。

これが彼の本格的な破滅の引き金となったのは言うまでもない。



……だが、このような状況になる前に、彼らに何が起きたのか、次章より10年前よりさかのぼり、ことの経緯を見ていくことにしよう。

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