最新の技術が明かす、人間の本性と医療の未来。命を守るはずのシステムが、命を奪う時、真実を追う者たちの戦いが始まる。

湊 町(みなと まち)

第1話 病院紹介とメディカスの導入

朝の光が星陽総合病院の広い窓を通して柔らかく差し込み、講堂内を淡い金色に染め上げていた。外では、初夏のそよ風が緑の木々を優しく揺らし、遠くには澄んだ青空が広がっている。院内の講堂には、白衣をまとった医師たちが整然と座り、これから始まる重要な発表を待ちわびていた。


講堂の舞台には大きなスクリーンが設置され、その前には星陽総合病院の院長、山本 大和が立っていた。山本の白髪が混じった髪がスポットライトに照らされ、微かに輝いて見える。彼の鋭い瞳が客席を見渡し、口元には自信に満ちた微笑みが浮かんでいた。


「皆さん、おはようございます。」山本はマイクを握り、静かに語り始めた。その声は深く、講堂全体に響き渡った。「今日は、当院にとって画期的な一日です。」


彼の背後のスクリーンに映し出されたのは、最新のAI診断システム「メディカス」のロゴとその詳細だった。スクリーンの映像は、CTスキャンやMRIの画像が瞬時に解析され、診断結果が医師に提供される様子を鮮やかに描き出していた。色彩豊かなグラフや図表が次々に現れ、その技術の先進性を訴えかけていた。


「このシステムは、世界中の膨大な医療データを学習し、非常に高い精度で診断を行います。」山本の声は一段と高まり、期待に満ちた目が客席を巡った。「これにより、我々はより迅速かつ正確な医療を提供することができるのです。」


医師や看護師たちの間には、興奮と期待が広がっていた。白衣が光を反射し、講堂全体が輝きを帯びて見えた。その中で、内科の医師、夏川 蓮はただ一人、眉をひそめてスクリーンを見つめていた。


夏川の瞳には、不安と疑念の色が浮かんでいた。彼は手を挙げ、その動きが白衣の袖を揺らしながら静かに立ち上がった。「山本院長、このシステムの導入にあたって、どれだけの臨床試験が行われたのですか?」


山本は一瞬驚いたように見えたが、すぐに笑顔を取り戻した。その笑顔には、少しの緊張が見え隠れしていた。「夏川先生、ご安心ください。メディカスは厳格な臨床試験を経て導入されました。我々の患者にとって最善の医療を提供するために、全力を尽くしてきたのです。」


夏川はそれでも疑念を拭いきれない様子で、山本の言葉を噛み締めるようにゆっくりと頷いた。彼の背後には、他の医師たちの期待と興奮が漂い、その中で夏川の不安は一層際立っていた。


講堂の窓の外では、日差しがさらに強まり、庭の緑が一層鮮やかに輝いていた。その光景とは対照的に、夏川の胸の中には暗い影が広がっていくのだった。

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