#47 お人好しみたまちゃんと、クラスメートとの遭遇

 短めですまねぇ!

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 色々な検証を終えて、僕は神薙みたまの姿からいつもの姿に。

 やっぱりこっちの方がいいけど……なんでだろう。身長的には向こうがいいような気がしてなりません……。

 そう言えば、神薙みたまは僕よりも一センチ大きい設定だっけ。

 ……あの変身能力、実は大人の姿になれたりしないかなぁ。


「椎菜ちゃん、どしたの?」

「あ、うん、その、大人になりたいなぁ、って」

「エッ!?」

「僕、(見た目が)子供でしょ? だから、その、お、(身体的に)大人になりたいなぁ、って……そしたら、(物理的に)見える景色も違うのなかなぁって思って……」

「お、おおお、オトナぁ!? し、ししし、椎菜ちゃんがぁ!?」

「う、うん……変、かなぁ?」


 大人になりたいと言うと、お姉ちゃんがなぜか慌てだしました。


「い、いいいや、へ、へへ、変じゃないですぞ!? いや、で、でも、し、椎菜ちゃんにはまだ、は、早い、んじゃないかなぁ!?」

「ふえ? そ、そうかな……? だ、だって、僕の周りなんて、僕よりも(見た目が)大人だし……柊君とか、麗奈ちゃんとか……」

「はいぃぃぃ!?」

「お姉ちゃん?」


(え、なに、今の高校生ってみんなそうなん!? もうすでに捨ててるん!? 大人の階段上っちゃってるの!? し、しかも、あの鋼鉄の意志を持った柊君も、だとっ……!? それに、あの麗奈ちゃんって娘、どう見ても椎菜ちゃんのことが好きそうなのに、椎菜ちゃんを差し置いてぇ!? で、でも、もしそうなら、椎菜ちゃんがオトナになりたいと思っても、お、おかしくないっ……! い、いやでも、あの純粋無垢だった椎菜ちゃんが……っ! け、けど、椎菜ちゃんが望むというのならァッ……!)


「椎菜ちゃん、ホテル、行く?」


 ころころと表情をたくさん変えながら何かを考えこんだお姉ちゃんは、最後にすごくいい笑顔を浮かべて、そう言って来ました。


「どういうこと!?」


 どうしてホテルになるの!?


「大丈夫。私はどんな椎菜ちゃんでも愛せるッ……! というか、椎菜ちゃんなら無条件で私の銀河よりでかい愛を与える覚悟です! さぁ! 行こうか!」


 なんでそんなに慈愛に満ちてるの!? あと、呼吸がちょっと荒いよぉっ!


「ほ、本当にどういうこと!? なんで大人になりたいからホテルになるの!?」

「え、だって、オトナになりたいんでしょ?」

「そ、それはそうだけど……」


 藍華お姉ちゃんや千鶴お姉ちゃんたちみたいに、おっきい大人になりたいけど……だけど、どうしてホテル?


「じゃあ何も問題は無いね☆ さぁ、お姉ちゃんと愛し合おうぜ☆」

「どういう意味なのっ!? 僕、体が大きくなりたいだけだよ!?」


 なぜか僕の手を握っておかしなことを言うお姉ちゃんに、僕は大きな声でそう言いました。


「……はい?」


 すると、お姉ちゃんの表情がにっこり笑顔で固まった。


「だ、だから、その、大きい大人の人になりたいなぁ、って思ってるだけだからぁ……」

「あー……えー……もしかして、こう、身長を伸ばしたい! 的な?」

「そ、そうだよ……? むしろ、それ以外にあるの……?」

「……」


(あ……あっぶねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?? あ、危うく姉妹仲がとんでもねぇことになるところだったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? お、大人ってそう言うことぉ!? そ、そうだよね! 椎菜ちゃんが下的な方に興味を抱くわけないよね! だって、椎菜ちゃんだもんね! ふぅ、危うく椎菜ちゃんを襲うところだった……いやでも、椎菜ちゃん、そう言う知識を知り始めたら絶対にむっつりになりそうな気が……ま、まあ、その時はその時! とりあえず……)


「帰ろっか」

「え、あ、う、うん。そう、だね」


 なんだろう、お姉ちゃんがすごく綺麗な笑顔を浮かべてるんだけど……。

 何かあったのかな?



 色々な検証を終えて、お家に帰る途中。


「うぇぇぇんっ……!」


 ふと、通りがかった公園から女の子の泣き声が聞こえてきました。


「なんだろう? お姉ちゃん、僕ちょっと行って来るね」

「じゃあ、お姉ちゃんも行くー。椎菜ちゃん可愛いんだから、誘拐されちゃうかもだし」

「さすがに白昼堂々はないんじゃないかなぁ……」


 けど、そうやって心配してくれるのは嬉しいです。

 ……元男としてはすっごく複雑だけど。


 というわけで、僕とお姉ちゃんは泣き声が聞こえた場所へ行くと、そこには小学生くらいの女の子が地面に座り込んで泣いていました。


「わわっ! ど、どうしたの!?」


 よく見ると、女の子の右足首の辺りが少し腫れていました。

 僕は慌てて女の子に近寄ると、しゃがみ込んでどうしたのか尋ねました。


「ぐすっ……あ、あし、いたくしちゃって……お、おねえちゃんもいなくて……」

「んっと、じゃあ君はお姉ちゃんとはぐれちゃって、転んで足を痛くしちゃったのかな?」


 そう尋ねてみると、女の子はこくり、と小さく頷きました。

 うーん、これ、どう見ても捻挫っぽいよね……女の子は見た所三年生とかそのくらい、かな?

 それぐらいの年で捻挫は痛いし……。

 きょろきょろ、と僕は周囲を見回して、人がいないことを確認。


「ちょっと待っててね」


 僕は女の子にそう言うと、少し離れて建物の陰に。

 もう一度誰もいないことを確認すると、組み紐を着けて再び変身しました。

 これならまだ、なんとか誤魔化せるはず!


「こんにちは!」


 と、何食わぬ顔で再び女の子の前に現れました。


「わぁ……!」


 笑みを浮かべながら挨拶すると、女の子は今まで泣いていたのが嘘のように泣き止み、キラキラとした目で僕を見つめました。


 よかった、子供ならこういうのは受けるかも、って思ったからね。


「足、痛くしちゃったんだよね?」

「うん……すっごくいたいの……」


 僕が尋ねると、女の子はキラキラした顔から一転して、少しだけ辛そうな顔でそう言いました。


「うん、じゃあお姉ちゃんが治してあげるね!」

「ほ、ほんと……?」

「うん! ちょっと待ってね」


 治してあげると言うと、女の子はどこか期待するような、そんな嬉しそうな表情を浮かべてじっと僕を見つめてきました。

 僕はうん、と肯定して、すぐに手の平から青白い球を創り出しました。


「わぁ、きれー……」

「痛い所は右足でいいのかな?」

「うん……」

「じゃあ、ちょっとだけ触るね」


 一言言ってから、僕は光の球を右足首に当てると、お姉ちゃんの傷を治した時のように、優しい緑色の光を発しました。


「わ、ぽかぽかする……」


 どうやら治療される側は温かく感じるみたいです。

 あれかな、新陳代謝を良くして、治癒能力を上げてるのかも?

 なんてことを考えながら、当て続けること10秒ほどで光は収まり、同時に足首の腫れも引いていました。


「どうかな?」

「わー! いたくなーい!」


 治療を終えて声をかけると、女の子はバッ! と勢いよく立ち上がって、その場でぴょんぴょんと跳ねた後、無邪気に笑いました。


「よかった! これで大丈夫だね」

「うんっ! ありがとー! みたまちゃん!」

「ふふ、気にしないで――え?」


 気にしないで言いと言う前に、僕の言葉はそこで止まりました。

 今、あの、みたまちゃんって言ったよね……?

 気のせい、だよね!? ねぇ!?


「すごーい! ほんもののみたまちゃんはまほーも使えちゃうんだね!」


 気のせいじゃなーい!?


「え、あ、え? も、もしかして、その、神薙みたまを知ってる、の……?」

「うんっ!」

「ど、どうして……?」


 今って、小学生の女の子もVTuberって視るの……?

 ああいうのってその、中学生くらいからかなぁ、なんて思うんだけど……。


「んっとね、おねえちゃんがみてて、りなもいっしょにみるの! みたまちゃん、かわいくてすきー!」

「そ、そう、なんだ」

「ふふふ、みたまちゃんの良さがわかるなんて、将来は有望だねぇ……」


 後ろでお姉ちゃんが何かを言ってた気がしましたが、そんなことを気にする余裕はなかったです。

 小学生にも好かれてるの? 僕……。

 う、嬉しいけど、なんだろう……大丈夫? 色々と。


「と、ところで、えっと、りなちゃんのお姉ちゃんはどうしたのかな?」

「んっと……わかんない……」

「わかんない……そっか。じゃあ、お姉ちゃんと一緒に探そっか」

「いいの!?」

「うん、もちろん。きっと、お姉ちゃんも探してると思うから。……あ、お姉ちゃん、勝手にお話を進めちゃったけど、いい、かな?」

「もっちろん! というか、みたまちゃんの良さがわかる子は大歓迎! 当然だよね!」


 基準がおかしいと思うなぁ……。


「ありがとう! じゃあ、早速――」


 と、僕がりなちゃんの手を引いてりなちゃんのお姉ちゃんを探しに行こうとした時のことでした。


「りなー!? りなどこーーー!?」


 ふと、りなちゃんを呼ぶ声が……って、あれ? この声って……。


「あ、おねえちゃん! おねーーーちゃーーーん!」


 やっぱりりなちゃんのお姉ちゃんだったみたいで、声に気付くと、りなちゃんはすてててー! と笑顔を浮かべて駆け出しました。


「りなっ! よかったぁ! もう、勝手にどこか行っちゃだめだよ?」

「ごめんなさい!」

「まったくもう……あ、もしかしてこの子を助けてくれた……って……え!? みたまちゃん!? リアル!? どゆことぉ!?」


 りなちゃんのお姉ちゃんは、僕にお礼を言おうとしてこちらを見た瞬間、素っ頓狂な声を上げて驚きました。

 というか、あの……。


「れ、麗奈ちゃん……?」


 麗奈ちゃん、だよね……?


「へ? あたしを知ってる? というか、その声に……って、愛菜さん? あれ? あれれれ?」

「学園祭ぶりかな? 麗奈ちゃん」

「あ、はい、一週間ぶりくらいです! って、そうじゃなくて! あの、そこにいるリアルみたまちゃんって、もしかして……」

「あ、あの、はい、桜木椎菜、です……」

「……うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 桜木椎菜と名乗ると、麗奈ちゃんは空に響くくらいの大きな声を上げました。

 だ、だよね……。


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 はい、12時に投稿できなかった私です。

 まあ、15時には間に合ったからセーフセーフ!

 余談ですが、椎菜が仮にそういう知識を持った場合、なんというか、むっつりな女の子になります。多分、勝手に勘違いして自爆して、周りに可愛い、と思われるタイプの。

 とはいっても、椎菜は別に子供はどうやったらできるのか、ということを知らないわけじゃないです。ただ、本当に保健体育程度の知識で止まっているので、そう言う方面に疎い感じです。ちなみに、意味を理解した場合、顔を真っ赤にして気絶しちゃいますね。というか、そう言う話に免疫とか耐性が無いので、知ってる知識の話をされただけで顔を真っ赤にして気絶しかけるし、保健体育の授業の時は終始顔が赤くて、クラスメートたちには心配されました。

 尚……そんな姿を見た女子生徒たちは興奮したとか……男子? 邪な感情を抱いた奴は柊にぶん殴られました。

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