スノウデーン王国、二度目の冬⑤/大銭湯!

 さて、連結馬車で進むこと数日……ようやく見えて来た。

 俺は一両目の二階にある展望台から、大きなビル……ではなく、宿泊施設も兼ねているスーパー銭湯だ。

 今更だが……スーパー銭湯って宿泊施設ないよな。日帰り温泉施設で、家族で楽しめるような施設がスーパー銭湯って言うような……まあ、別にいいか。

 展望台にはサンドローネもいる。


「そういえばあなた、スーパー銭湯の全貌を知っているのかしら」

「いんや。アイデアだけで、細かいところはノータッチだ。『泊れる』のと『デカい施設』と『デカい温泉』ってのが俺のアイデアだからな」


 最後、立ち寄った時はまだ基礎を終えたばかりだった気がする。

 さてさて、ここで何が起きてるのかね。


「とりあえず、まずは支配人に挨拶ね。エアリーズ様も来ているらしいわ」

「お、エアリーズもいるのか。一年ぶりくらいだな」

「さすがに、到着してすぐ仕事に取り掛かれとは言わないわ。温泉でゆっくり休むことね」

「そうする。お前はどうすんだ?」

「もちろん仕事よ」


 サンドローネは下車の準備をしに行った。

 ちなみに、俺はもう一階に荷物のカバンを置いてある。

 すると、二階にロッソたちが上がって来た。


「おっさん。スーパー銭湯でとりあえず護衛はおしまいでいいんだよね」

「ああ。あとは帰りに頼む。それまで、サンドローネの奢りでゆっくり休んでくれ」

「……おじさん。一緒に遊ぼうね」

「ふふ、楽しみですわ」

「スーパー銭湯だっけ。大きいわね」


 みんな窓からスーパー銭湯の建物を見ている。

 さて、ここらで脳内解説を挟むとしますかね。


 ◇◇◇◇◇◇


 スノウデーン・スーパー銭湯。

 まず、最初に見えたのは広大な更地……ではなく、馬車を止める駐車場だ。

 今も、百台以上、大小さまざまな馬車が止まっている。


 次に見えたのは、王城の入口並に広い、『スーパー銭湯本殿』だ。

 横長で、煉瓦と木材のハイブリッド建築。大きさはとにかくデカい……地方にあるデカい図書館とか、大学みたいな大きさだ。

 

 そして、本殿の後ろにはビルみたいな建物がある。これは『温泉宿』である。

 その名の通り、宿泊施設だ。本殿は全て温泉施設であり、食事処、大広間、休憩用個室や土産物店など、いろいろ楽しめるものが多くあるのだ。

 

 離れには、アズマ風の建築物……俺の別荘みたいな家がいくつかある。

 これは俺のアイデアで出した『離れ』だ。超高い値段を出すかわりに、超豪邸で超サービスを受けながら温泉を満喫できるのだ。


 本殿、温泉宿、離れ。大まかにこの三つが組み合わさり、『スノウデーン・スーパー銭湯』となっている。まあここからは見えないけど、従業員用の寮とかもあるらしい。

 源泉は確か、ここから数キロ離れた場所。話で聞いたけどとんでもない量の温泉が噴き出しており、枯渇することはまずありえないとか。


 とまあ、長々と悪かった。

 これが、スノウデーン・スーパー銭湯の全貌である。


 ◇◇◇◇◇◇


 さて、長々と脳内解説を終え、俺たちは駐車場に降り立った。


「おおお~!! なんかすっごいね!!」

「……宿?」

「ええと、パンフレットによると、あの建物は温泉、お土産屋さん、休憩所などですわ」

「あっちの大きいのが宿ね。ふふん、シュバン、マイルズ、お泊りの用意!!」

「「はい、お嬢様」」


 こっちはいつも通りだな。

 スノウさんとユキちゃんは……お、リヒターといる。


「スノウさん、匂いは大丈夫ですか?」

「……ええ。思ったより、温泉のニオイはしませんね。ありがとうございます。リヒターさん」

「いえ……困ったことがあれば言ってくださいね」

「はい。ふふ、お優しいですね」

「い、いえ……」

「にゃうー」


 スノウさんはユキちゃんを抱っこする……なんだなんだリヒター、お前「意識してない」とか言ってたくせによ!! 今は邪魔しない方がいいかね。

 すると、サンドローネとイェラン、テッサが俺のところへ。


「とりあえず、離れを二棟確保したわ。私と、あなた専用だけど……」

「あたし、お姉様と一緒~」

「私は師匠と一緒ですねー」

「いやいやさすがに無理。サンドローネとイェラン、テッサも一緒にいいか?」

「ええ。広いし、構わないわよ」

「よし。と……ロッソたちは、あっちの温泉宿しかないか」

「言っておくけど、あっちの温泉宿は七階のワンフロア貸し切りにしてあるわ。離れほどじゃないけど、満足できる造りになってるからね」


 なんと、サンドローネの金持ちパワーでワンフロア貸し切りだ。

 ロッソたちに報告すると大喜びだった。

 さて、寒いしいついまでも駐車場にいるわけにはいかない……と、思っていたら。

 俺たちの元へ、半纏を着たガタイのいい純血の獣人と、見覚えのある女性、そしてもう一人来た。


「ゲントク、久しぶりだな」

「おお、エアリーズか!! はは、久しぶりだなあ!!」

「ああ。と、そちらはファルザンから聞いている。テッサリオンだったな」

「はい。エアリーズ様、よろしくお願いいたします」


 テッサはぺこっと頭を下げた。

 十二星座の魔女の一人、『牡牛座の魔女』エアリーズ・タウルスだ。ショートヘアで、片目を髪で隠した目隠れ美女。スタイル抜群で、今はシャツにズボン、半纏というスタイルだ。

 美女って何着ても似合うな……と思っていると。


「この格好が気になるか? 見ての通り、今はここを拠点にしている。ふふ、なかなか楽しい仕事場だ」

「なるほどな。美人女将ってわけか」

「オカミ……? まあいい。それより、紹介しよう。こちらは、スーパー大銭湯の支配人、純血の牛獣人、バルトロだ」

「は、初めまして。わたくし、バルトロと申します。ゲントク様のお噂はかねがね……」

「は、はい、どうも」


 う、牛獣人……でっけえ。

 牛っていうか、バイソンって感じ。側頭部から伸びた二本のツノ、ティガーさん並みのガタイ、二の腕とか丸太みたいにゴッツゴツだし、差しだされた手で握手したら手が砕けるかと思ったくらいの握力だった……この人、ティガーさんと同じく、めちゃくちゃ見た目ゴツイけど小心者タイプだわ。

 エアリーズは言う。


「長旅で疲れただろう。仕事の話は明日にして、今日はお前が考案した『スノウデーン・スーパー銭湯』を満喫してくれ」

「そうさせてもらうよ。と……」


 俺は、エアリーズの後ろにいた、二十歳くらいの女性を見た。

 どこかムスッとしているような……っていうか、この人ってまさか。


「トーラス。何度も言っただろう、私は忙しいんだ」

「お姉ちゃん。あたし、何度も言うからね。こんなところにいないで、一度帰って来て。ウンって言うまで付きまとうから」

「全く……」


 エアリーズは頭を抱えてしまった。バルトロさんも困ったようにしている。

 というか……この人。ふわっとしたロングヘアに、長い耳、エアリーズと同じ髪色、目をしてる。ってことはまさか。

 エアリーズは言う。


「一応紹介しておく。この子はトーラス・アリエス……魔女の一人で、私の実妹だ」

「別に覚えなくていいわ。私、あなたに興味ないから」

「あ、アリエスって……牡羊座か。つまり、『牡羊座の魔女』か」

「別に、そんな肩書どうでもいいわ。私、お姉ちゃんに用事があって、あなたに用事あるわけじゃないから」


 まさかの展開……なんと、十二星座の魔女、『牡牛座の魔女』トーラス・アリエスが現れた。しかも、エアリーズの実妹とか……どういう展開やねん。


 ◇◇◇◇◇◇

 

 さて、スーパー銭湯の従業員が何人も現れ、俺たちの荷物を運んでいった。

 そして、ここから二手に分かれて部屋に案内される。

 俺とサンドローネとイェラン、ミカエラとアベルは自前で離れを確保していた。残りはみんな温泉宿の七階へと案内される。

 せっかくなので、離れまでの道をみんなで歩く。

 案内は、支配人のバルトロさんが直々にしてくれた。

 到着したのは、木造の立派な建物だ。屋根に雪が積もっており風情を感じる。


「ささ、こちらが離れでございます。室内は温泉完備、食事はもちろん、マッサージなども手配も致しますので」

「いいわね。じゃあ、お風呂のあとにマッサージをお願いしようかしら。イェラン、テッサさんもどう?」

「やるやる。マッサージとかいいじゃん」

「私もです。やったことないので体験します!!」


 女性陣はキャッキャしながら離れへ。

 その次はアベル、ミカエラが離れへと入って行く。


「ではゲントク様、ごゆるりとお過ごしくださいね」

「おう。アベル、時間あったら本殿の酒場で酒でも飲もうぜ」

「ええ、ぜひ」


 二人は並んで離れへ……イチャイチャするんだろうなあ。

 そして、残りは俺。


「ささ、ゲントク様。こちらです」

「ああどうも……おおお」


 俺の使う離れは、レレドレにある別荘と同じくらいデカい。

 バルトロさんは言う。


「ゲントク様も、マッサージはいかがですか?」

「いいっすね。ぜひぜひ」

「……私も」

「はい。では二人分ですね」

「ええ、お願いしますってうおおおおおお!? ああ、アオ!?」


 超絶ビックリした……いつの間にかアオがいた。

 浴衣に着替えてるし。ほんとにビックリしたぞ。


「……おじさんの泊まるところ、見に来た」

「お、お前だけか?」

「……うん。ロッソは飲食店通りに行って、ブランシュは『美容湯』があること知ったらダッシュで行った。ヴェルデは普通に部屋でのんびりしてる」

「そ、そうなのか」

「……おじさん、早く中、はやく」

「お、おう」


 とりあえず、案内してくれたバルトロさんにお礼を言い、俺たちは離れに入るのだった。

 あ、ちなみに大福とバニラだけど、ユキちゃんが一緒にいたいって言うから預けたぜ。

 さて、まずは仕事前に、スノウデーン・スーパー銭湯を満喫しようじゃないか!!

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