独身おじさん、エアコン修理をする

 さて、今日も大雨だ。

 仕事を再開しようと思うんだが、雨降ってるとどうもやる気出ないな……ザナドゥから帰ってまだ四日目だけど、まだまだダラダラしたい。

 外を見ると、天に穴でも開いたのかってくらい雨が降っている。


「はぁぁ……やる気出ないな。どうすっかなあ」


 蒸し暑い。

 家の中はエアコン利いてるけど、窓を開けるとムワッとする。

 というか、この世界って十月まで夏なんだよな。秋と冬が一か月しかない。

 去年は、温泉の町レレドレで冬を過ごしたっけ。今年も行くつもりだ。


「蒸し暑い今、温泉とか考えられないな……ん?」


 すると、インターホンが鳴った。

 こんな雨の中誰だ? と思ってドアを開けると、そこにいたのは。


「……おじさん」

「アオ? なんだ、一人で」


 アオだった。

 傘もさしていないのに濡れてない。頭上に水の膜みたいなのがある……魔法だよな。


「何かあったのか? こんな雨の中……」

「うん。エアコン、動かなくなった……おじさんのお店、まだやってないから、家に来た」

「ああ、エアコンか……魔石の劣化かな。よし、修理に行くよ。準備するから待っててくれ」


 仕事道具、家にあるので対応できるだろう。

 道具をカバンに詰め、久しぶりに仕事用のツナギを着る。

 準備を終え、アオと一緒に家を出た。


「……おじさん。ごめんね、お休み中に」

「気にすんな。というか……」


 俺の頭上にも水の膜がある。

 この世界にも傘は普通にある。雨合羽もあるし、雨対策は地球と変わらない。

 アオは水魔法で、水の膜を作って雨を回避している。普通に傘をさすより防水性高い。俺が動くと水の膜もちゃんと付いてくるのが面白い。

 エアコン修理、さっさと終わらせますかね。


 ◇◇◇◇◇◇


 久しぶりに来たロッソたちの拠点には、ケモミミチルドレンもいた。

 現在、スノウさんが作ったスイートポテトをみんなで食べている。

 ロッソ、ブランシュ、ヴェルデが言う。


「あ、おっさん来たー」

「よかった。助かりましたわ」

「うう、暑い……蒸し蒸しするぅ。ゲントクぅ」


 みんな暑そうだ。

 エアコンが壊れたのは個人の部屋みたいだ。リビングのは無事なようだ。

 リビングは後でチェックするとして、個人の部屋だな。

 

「さて、まずは……」

「アタシの部屋!!」


 というわけで、ロッソの部屋へ。

 エアコン設置の時はあまり見なかったけど……こうしてみると、ロッソの部屋ってすげえな。

 まず、服や装備が床に散らばっている。大剣は壁に掛けてあるけど、正直かなり汚い。

 スノウさんが定期的な掃除してるんだろうけど、すぐ汚れるとかなんとか。

 ベッドもめちゃくちゃだし、ってか……下着くらい見えないところにおいてくれよ。

 俺は脚立を出し、エアコンの下に置いてエアコンをチェックする。


「どれどれ……あ~、魔石は大丈夫だけど、魔導回路の傷だな。九つ星の魔石の魔力に、魔導回路の方が先に劣化しちまったようだ」


 魔石がいかに頑丈でも、魔導回路はどうにもならん。

 魔導回路は、魔力の通り道だ。エアコンに直接魔導回路を彫っているんだが、このエアコンの素材が九つ星の魔力に耐え切れなかったんだ。

 本来のエアコンは四つ星の魔石を使ってるからこのエアコンの素材でも大丈夫だけど、九つ星となるとそうもいかない。

 とりあえず、応急処置して、後日に新素材でエアコンの本体を作るしかないな。

 

「とりあえず、応急修理しておく。明日以降、エアコンを新素材で作り直すよ。その時にまた交換しに来るから」

「うん。ありがとね」


 魔導回路を調整し、魔石をセットしてスイッチを入れると、エアコンが動き出した。

 いい魔石を使えばいいってもんじゃないな。高い魔石を使った魔道具は、素材も高いモノを使わなければならない、ってことか。

 アオ、ブランシュ、ヴェルデの部屋も確認したが、やはり魔導回路の劣化だった。

 それぞれ応急修理をすると、ちゃんと動き出した。


「よし、応急修理完了だ」

「……ありがとね、おじさん」

「助かりましたわ~」

「あーよかった。蒸し暑くてたまらないわ」

「ああ。最後に、リビングのチェックするよ」

「あ、おじさま。エアコンですが、スノウさんのお部屋にも付けてもらっていいでしょうか?」

「あーそうか。スノウさんの部屋にはないんだな。じゃあ、新しいエアコンを付ける時に、合わせて付けることにするよ」

「あ、シュバンとマイルズの部屋にもお願いね」

「わかった、任せておけ」


 リビングに行くと、ケモミミチルドレンが遊んでいた。


「にゃあ。みてて……」


 何をしているか見ていると……ユキちゃんが、ネコミミを交互に動かしていた。

 右耳を倒し、左耳を倒し、両耳を倒し、左右別々に動かした。


「おみみを動かすのとくいなの。みんなできるー?」

「がうう……むずかしいぞ」

「きゅうう、できないよ」

「わうー……」


 クロハちゃんはどっちの耳も動き、リーサちゃんは片方だけ、シアちゃんはプルプル動くだけだった。っていうか……なんて可愛い遊びしてるんだこの子たちは。

 俺は邪魔しないよう、エアコンをチェックする……やっぱりこっちのエアコンも止まる寸前だ。

 魔導回路の調整をしていると、ユキちゃんがの背中に飛びついた。


「にゃあ。おじちゃん、えあこんなおすの? わたしとおかあさんのおへやにもほしいよー」

「ははは、今度来た時にちゃんと付けるよ」

「がうー、おじちゃんも遊ぶぞ」

「きゅう、あそぼう」

「わううー」


 おお、ケモミミチルドレンがくっついてきた。

 ちょっと危ないので、前に飛びついてきたクロハちゃんを抱っこして床へ。


「こらこら、危ないぞ。お仕事が終わったら遊んでやるからな」

「がるるー」

「はぁい。みんな、おじさんの邪魔をしちゃダメよ~」

「にゃあああ」

「きゅううん」

「わううう」


 スノウさんが子供たちを引き剥がす。

 その隙に、エアコン修理を終わらせた。

 すると仕事を見ていたロッソが言う。


「ね、おっさん。たまにはうちでご飯食べていきなよ。スノウさん、シュバンとマイルズが作る料理はおいしいよ」

「……それもそうだな。じゃあ、ごちそうになるよ」

「にゃあ。おじちゃん、ごはんまであそぼう」

「いいぞ。さーて、何して遊ぼうかな」


 俺はユキちゃんを抱っこ……そして気付いた。


「ユキちゃん。重くなったなあ……もう四歳だもんな」

「にゃう?」

「ふふ。ゲントクさんにもわかりますか。ユキ、大きくなったって」

「にゃああ。おとなになるの。おとなになったら、おじちゃんとケッコンするね」

「ははは、そりゃうれしいな。ありがとう」


 独身主義だが、子供のこういう話は聞くと嬉しいもんだ。

 この日は、のーんびりロッソたちの拠点で過ごした。

 料理は美味かったし、酒も出たので飲んでしまった。

 家に帰るころには夜も更けていたし、雨もやんでいた。

 アオに送ってもらいながら、静かな裏通りを歩く。


「……明日から仕事再開するかあ」

「おじさん、酔ってる」

「まあな。いやー、酒はやっぱいいもんだ。アオ、たまには二人で飲み行くか?」

「……いいかも。おじさん、行こう」


 というわけで、アオと二人で静かなバーに入り、またしても飲むのだった。

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