第11話 頼りになる……?part2

 ノア……好きだ……じゃなくてノアにかっこいいところを見せないとだった。冷静になれ私、確かにノアは可愛いし、薬草を間違えなくてすごかった。が、次のスライム討伐はそうは行かない。ノアは刃物を持ったことが無いと言っていたし、ここで私が文字通り手取り足取り教えることで好感度を上げるのだ!きっと──────


「くっ……このっ……!!うわっ!?」


 といった風に慣れない動きでスライムを倒そうと試みるも、スライムからちょっとした反撃を受けてしまうだろう。そこで私が颯爽と駆け付け、スライムの体を華麗に一刀両断。そして尻もちをついてしまったノアに顔を近づけ──────


「怪我は無いかノア?」


 かっこいい声を出して頬にそっと手を触れる。そうしたらノアはきっと──────


「う、うん……大丈夫……」


 といった風に顔を赤くする。そ、想像しただけでも可愛すぎて鼻血出そう……じゃなくて私のことを頼りになると思うかつ、ノアの好感度を上げることが出来る!


 ふっふっふ……我ながら良いプランだ。薬草の採取の時はたまたま運が良かっただけだが、今回はそう上手くは行かない。スライムはとても弱い魔物だが、倒すには核を完全に潰す必要があり初見で倒すのはかなり苦戦する。


 もちろん反撃もしてくるがこれに関しては心配していない。所詮はスライム、ちょっと体を押されて尻もちをつくくらいなら多少痛いくらいで済むだろう。


「いたぞ、あれがスライムだ」


 私は指を差し、ノアにスライムがいたことを伝える。


「わぁ……本物のスライムだぁ……」


 今までスライムを見たことが無いのか、ノアは目をキラッキラに輝かせてぽ四ぽ四と跳ねるスライムを見つめる。スライムくらい見たことがある男も多いのだが……ノアは相当親に可愛がられて育ったのだろう。というか目を輝かせてるノア可愛い……。


「今回は好きなように倒してみると良い。形が崩れたり、変な動きになっても構わない。まずは刃物に慣れること、そして魔獣を倒す感覚を覚えよう」


「分かった!」


 ノアは鞘に納めていたナイフを取り出し、ゆっくりとスライムの近くへと歩み寄る。


 全く気配隠せてないけど……頑張ってるからもう何でもいいや。気配を消そうとしてるだけでもう偉い。すごいよノア、頑張れノア、可愛いよノア。


 ティオは後方腕組全肯定お姉さんとしてノアの頑張りを見守ることにした。彼女の脳内ではノアが歩く度に「偉い」と「可愛い」の文字が浮き上がる特殊すぎる万歩計状態と化している。何も口出しせず、全ての行動を肯定し、そして大量のお金を貢いでくれるというティオはまさにオタクの鏡だろう。


「えい!……ってうわっ!?」


 スライムの手前までやって来たノアはナイフを両手で持ち、スライムの身体へ座栗と突き刺した─────のだが、突き立てられたナイフはぽよんと弾き返されてしまう。


「くっ……このっ!!」


 ああ……頑張れノア……あっ、惜しい!!でもあとちょっとで行けるぞ……頑張れ……!


 運動会の子供を見に来たお父さんよろしく、ティオはノアの事をただひたすらに応援していた。しかし先ほどティオが考えていたようにノアはスライムの討伐にかなり……それはもうかな~り苦戦していた。


 ……なんかスライムの数、多くないか?


 そう、何故かノアの周りにたくさんのスライムがやって来たのである。本来スライムは群れで活動をすることなく、1匹1匹が自由に活動している。そのため、スライムと相手をする時は大体が1対1になることが多いのだが──────


「えい!ってうわっ!?ちょ、まっ!」


 何故かノアの周りには8匹ほどのスライムがおり、ノアの周りをぽよんぽよんと元気そうに跳ねているのである。もちろん戦闘経験が無いノアが対応できるはずもなく、あっという間に尻もちをついてしまう。


 そこまでは良かった。しかしどういう訳かスライム達はノアの身体へ群がり始めたのである。手、腕、足、胴体、体の至る所にピタリとくっついたスライム達によってノアは地面に寝転んだ状態から動けなくなってしまう。


 ノアは魔獣を引き寄せるフェロモンでも放出してるのか!?というか助けに行かないとまずい!!


 私は大剣を手に取り、ノアの下へと急いで駆け寄る。そしてノアに当たらない様スライムの核を狙って腕を振るう。自分の身長と同じ大きさの剣を繊細に扱うことは神業と呼ばれるほどに難しいが、ティオは普段と変わらないといった様子で大剣をしなやかに振るう。


 ティオの鋭い大剣は見事にスライム達の核のみを切り裂いた。核を失ったスライムは先ほどまでの元気を失い、どろりと溶けていく。


 ふぅ……ちょっとしたアクシデントはあったが、何事も無くて良かった。


 私は剣に着いたスライムの死骸を落とし、鞘へ納める。そしてノアの方へ視線を向け声を掛け──────


「ノア、怪我は無……ってぶふっ!!??」


「ってて……うう、ぬめぬめする……」


 ようとしたのだが、スライムの死骸により全身がぬるぬる状態のノアを目撃してしまう。ノアの体勢とスライムまみれの身体、そしてノアの表情全てが相まってとても煽情的な構図が生み出されていたのである。


「ありがとうティオ……ってティオ!?」


 こんなものを見てしまえば溢れ出る衝動を抑えられるはずも無く、ティオは鼻から真っ赤な血をだばーしてしまう。


「えっ……すぎ……る……」


 そう言ってティオは先ほど倒したスライムと同じように地面へ倒れこむのであった。せっかくかっこいいところを見せたのに全てが台無しになってしまったのだが……



 スライムまみれのノア……えどぉ……


 幸せそうなのでOKです()。

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