第6話 ロリコンバーター
まさか初っ端から、エロ犬を超える異常者が現れるなんて思わなかった。緊張と一緒に、頭が痛くなってくる。
「こいつの魔法って、その部屋を作るタイプの魔法?」
「そうパコ、そこにロリショタを閉じ込めるパコ」
「ロリショタじゃない場合は?」
「部屋が嫌がって吐き出してしまうパコね」
「ククッ、当然であろう。性的なものはこの世に二つ、ロリとショタのみなのだからな」
何故だか、自信満々にそんなことを述べる目の前のカスは、どう足掻いても性犯罪者だった。最悪すぎる、2次元で満足してれば良かったのに。
「それで、こいつは例の魔法で滅ぼせるの?」
「使えればハメ確で勝ち確パコが、こころ一人でイメージと魔力を練り上げるにはスケベさが足りてないパコ。魔法を使おうとする間に、逆に使われて負けちゃうのがオチパコよ」
「じゃあどうやって戦えば良いの!!」
色々な意味で最悪なことに、僕はあの"ハイレグレオタードを見ていると性癖がドスケベ魔法少女になっちまうッ!! クソ、もう我慢できねぇ、膣内に出すぞ!!!"しか使える魔法がない。
それだって、鈴と連携してやっと使えるタイプの魔法だ。一人で使おうと練習してみたけど、自分がエッチな気持ちになるのとおじさんたちの射精するイメージのすり合わせが全然出来なくて、何度も発狂しそうになっちゃったし。
ただ、それが出来ないと、僕はこいつに勝てない。嫌な汗が背中に流れながら、僕はもう一度問い糾した。
「エロ犬、どうすればいい!?」
「別の魔法ならば、あるいはパコ」
「何でもいい、僕に使えそうな魔法を教えて!」
エロ犬に縋り付くように言葉をかけて。僕の懇願に、それならとこいつが口にしたのは。
「”ば、ババア何勝手に部屋に入ってきてんだよ! 思春期の息子が部屋を閉め切ってたら、シコってる最中なんだよそれは!! 見ろよっ、この無惨に萎えたチ◯コの姿をよぉ!”
この魔法なら、きっとこころにも使えて、効果があるはずパコ」
最悪すぎるシチュエーションだけど、今までで一番マトモな詠唱だった。でも、何か胸が痛くなる詠唱だ。そういうことしてる最中に、急に部屋に踏み込んでくる親は本当に何がしたいのか。息子の尊厳を破壊しようとする親は、絶対に許されてはいけない生き物。そんなイメージを抱けているし、確かに僕にも使えそうな詠唱だ!
「如何にも萎えそうな呪文、エロ犬にしては偉いよ!」
「エロイの間違いパコ」
「そういうとこ!」
僕は即座に、頭にそういうシチュエーションを思い起こそうとして。
「ククッ、敵はマグロやラブドールではない。その様に策を練っても、反撃されると知れ!」
「え、た、タンマ!」
「時間停止魔法など、貴様が如きヒップの輩に使えると思うてかっ!」
そうだった、これは訓練じゃない。相手は待ってくれないし、斟酌もしてくれない。
「喰らえぃ、"そんなっ、私の身体がみるみる小さく!? 年齢が据え置きなのにロリ化してしまって、性年誌に登場できる合法ロリにするなんて! あなた、私に何をするつもりなのっ!"」
「本当に何するつもりだよ、その呪文!!」
僕が悲鳴を上げるのと同時に、いつしかみたいに僕の身体がペカーと光った。その光が晴れると……着ていたジャージがダボダボになって、視点がさっきよりも低くなっている。これって、まさか!?
「ロリになってるパコ!」
「やっぱり!?」
背が縮んで、150cmくらいあった僕の身長が、気が付けば130cmくらいになっちゃっていた。サイズが合わなくなったジャージを脱ぐと、何故か魔法少女衣装だけはしっかり僕と同じサイズになっていて。
「何これ!」
憤然とロリコンおじさんを睨みつける。TSさせられた挙句にロリ化なんて、明らかにこいつらの性癖に弄ばれてる。本当にふざけてる、僕はお前らのおもちゃじゃないんだぞ!
「ククッ、良い姿だ。あとはショタさえいれば、我が勃起角度は90°へと至り、セッ◯スしないと出られない部屋に閉じ込めてやれるだろうになぁ」
史上最低の人物がたった今、エロ犬からこのロリショタおじさんへと入れ替わった。エロ犬には腐ってる大義名分があったけど、このニタニタ笑っているおじさんにはそれすらない。許されない性癖の押しつけが、そこにはあった。
「お前の性癖、最低過ぎるっ」
「ククッ、何を今更。我はロリショタを愛好するもの、我が性癖は低めの極みなのは言われずとも分かっているとも」
「文脈が違う!」
やっばり、こいつはクソ頭の悪い異世界人だ。こんなことして、日本語が微塵も通用しそうにない。だから、もう容赦なんてする必要だって、微塵もなくて。
目を瞑って、僕が自慰行為をしている最中に、お母さんが部屋に踏み込んできた妄想を思い浮かべる。おじさんのチ◯コを、萎えさせて二度と使えなくするために。
そうして、目を開けた僕は高らかに叫んだ。
「”ば、ババア何勝手に部屋に入ってきてんだよ! 思春期の息子が部屋を閉め切ってたら、シコってる最中なんだよそれは!! 見ろよっ、この無惨に萎えたチ◯コの姿をよぉ!”」
そうして、僕の声は響き渡って……何も、起こらない。なんで?
「エロ犬!」
意味が分かんなくて呼びかけると、エロ犬は愕然としながら、僕を凝視して呟く。信じられないものを見たかの様に。
「こころ、まさかとは思うパコが──オナニーを、全くしていなかったパコか?」
「は?」
急に何を言い出しているのか困惑すると、天を仰いで遠い目をするエロ犬。
「エッチなムラムラが魔力になるのに、何で直ぐ発情できる様に開発してないパコか!」
「するわけ無いし、そんなのしちゃダメだからだよ!」
「何という怠慢コだパコ、自分の武器はちゃんと手入れしておくものパコ! 親にオナニー見られる妄想で発情できないなら、事前にオナって発情しておくのが魔法少女の嗜みパコにっ。妄想とエッチな気持ちはセットだと教えたパコよね?」
「ふざけんなっ!」
エロ犬は何故かキレ気味だけど、僕も頭がキレそうだった。どうして、エッチなことをしてない事が不真面目みたいな風潮になるのか、心の底から本当に解せない。
「ククッ、よもやと思っていたが処女か。流石は未開発人、斯様な年頃まで未使用とは世も末よな」
そんな僕を見て、おじさんは心底バカにした様に笑っていた。僕からしてみれば、そっちの世界の方がおかしいので何ら悔しくともなんともない。逆に見下した目で見つめると、何故だかおじさんは身悶えした、キモい。
そして、どうしてだか、馬鹿にされた僕以上にエロ犬がぬいぐるみの顔を真っ赤にして怒っていた。許さないパコッ、とおじさんに隠れもしない敵意を剥き出しにする。
「なんて差別用語を、許さないパコ! こころは今は処女でも、いつかはお◯んこガバガバの緩々になって、デカチンどころか前と後ろ両方でチ◯チンを受け入れられる、立派な非処女になれるパコ!!」
「なるわけないでしょっ、そんなの!!」
反射的にエロ犬を蹴りつつ、言葉の意味に思いを巡らせる。もしかすると、処女とか未開発人とか、そんな言葉は向こうでは差別用語なのかもしれない。意味合い的には、肌の色差別的な。
けど、そんなのまともに取り合ってたら、こっちまで頭がおかしくなる。差別じゃなくて、区別だということにならないかな、言葉の意味。
「こころ、どうして蹴ったパコか?
「そんなことより、どうすれば良い?」
カスみたいな会話を打ち切って、半笑いのおじさんに目をやる。どうしてだか、おじさんは僕たちがアホな言い争いをしてる間も手を出してこない。それが不気味で、余計に身構えてしまう。
僕はロリにされたけど、魔法の行使には恐らく影響はない。だって、エッチなことを考えると、キチンとムズムズして魔力を感じられるから。
だから、その余裕を崩すべく、僕はもう一度妄想する。お母さんに見つかって、オナニーを見つかった想定を。……ただ、今度は男子の僕じゃなくて、女子の姿の僕で。下には何も穿いてなくて、何も生えてすらいない。擽るように、こちょこちょとしてた所を見つかって、恥ずかしくて恥ずかしくて泣いちゃいそうな気持ちになってる僕の姿をした女の子。
本当にいけないことだけど、ちょっとドキドキしてしまう。
「これならっ」
それに手応えを感じて、僕は詠唱する。今度こそは、跡形もなく吹き飛ばしてやるって息巻きながら。
「”ば、ババア何勝手に──”」
「ククッ、お前は気になっていることだろう。どうして、自分のことをロリにしたのか。こいつは何故、こんなにも泰然としているのか」
聞いてもいないのに、唐突にド変態おじさんは自分語りを始めた。そんなことより、早くモゲて欲しいんだけど。
「”部屋に入ってきてんだよ! 思春期の息子が部屋を閉め切ってたら──”」
構わず詠唱を続けようとすると、おじさんは僕達の後ろの茂みを指差して。
「一人、観客が紛れ込んでおる」
その言葉に、思わず詠唱を止めて振り返ってしまった。もしかして、こんなバカ過ぎる現場に誰かを巻き込んじゃったのかって、背筋に寒いものを感じながら。
茂みの奥、そこには確かに人が居た。一人、それは小さな男の子で……。
「君、さっきの!?」
そう、その子は、ここに来る前に防犯ブザーを持って対峙ていた男の子。その子が、混乱したままの表情で、目をまん丸に見開いたまま、こっちを見ていた。
「何でここに!」
「お、お姉さんたち、急に走り出して。わ、悪い人だったらダメだって思って、追いかけて、それで……」
男の子の方も、今の状況が全然理解できていないみたい。何が何だか、この子も分からなくなってるのが話していて伝わってくる。
「何で、お姉さん、小さく?」
「……悪い人が、僕を弱らせるためにやったの。僕は正義の味方だから」
これ以上混乱させないように、簡潔に伝える。自分の立場と、おじさんの立場を単純化して言葉にする。男の子は、口をパクパクさせた後に、小さな声でボソリと一言。
「お姉さん、悪い人じゃ、なかったんだ……」
「そうだよ、だからここから逃げて。僕はこれから、あのおじさんを退治しなきゃいけないから。君が巻き込まれて怪我しちゃうと思うと、落ち着いて戦えない」
「あっ、じゃ、邪魔しちゃって、ご、ごめんなさい!」
「うん」
男の子が背を向けたのを確認して、僕はおじさんと再び相対しようとして……。
「ククッ、尊みが深い光景だ。我がチ◯ポもそう申しておる。見よ、この巨大化した我が魔羅を!」
振り返ると、何故か股間を膨れ上がらせたおじさんが僕と男の子を見て、恍惚の表情を浮かべていた。心底最悪な出来事過ぎる。
「え、な、何、あれ?」
「見ちゃダメ、目が穢れるから」
思わずと言った感じに、男の子も振り返ってしまったのだろう。盛り上がったおじさんのおじさんに、動揺を隠せていないみたいだ。
「小さい子にそんな物を見せつけて、巫山戯るなよこの変態性欲者! 今から全部、虚無に返してやる!」
怒りのままに、呪文を行使する──しようとする。だが、それよりも早く。
「ククッ、遅いっ!
”ロリショタがヘコヘコ腰を振り合うのは、世界で一番責任を伴わない無責任な行為で、それが一番尊くてシコいって全人類は自覚しろ! 分かれ!! 監禁!!!”」
「ちょ、まっ──」
「ロリとショタ、双方揃っていたのは誠に行幸であるぞ! ドシコリ申し上げる!!」
待ってという言葉が届く前に、おじさんの魔法は発動されて。僕と男の子は光りに包まれて、そうして……。
「どこ、ここ?」
気が付けば、何かピンク色に囲まれた薄暗い部屋へと転移させられていた。これってもしかして、エロ犬が言ってた例の部屋ってことなの!?
「う、嘘でしょ……」
「お、お姉さん……」
愕然とする僕に、不安そうな男の子。二人揃って、恐らく、推定エッチをしないと出られない部屋に閉じ込められていた。
………………ふっざけんなっ!!!
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