第10話
「それでアンタは誰なんだ?」
『まずは自己紹介からアタシはエリーゼ・グランドハンマー。ドワーフ技術国の王女だった者よ。』
ドワーフのお姫様って事か。だから、子供の様な身長にドレスを着ていたんだな。でも、そんなお姫様がなんでこんな洞窟の中で幽霊になっているんだろうな。
「聞いた事のない国だけど。そのお姫様がなんでこんなところに?」
『えっ!聞いたことないの!!ど、どれだけ外では時間が経ってるのかしら?これでもエデン大陸の中では随一の技術を持っていた国なのに……。』
自身の国の名前すら知らない俺にどうやらこのお姫様はショックを受けている様だ。
これがこのアンデットオブアナザーワールド世界の住人であるNPCたちなら名前を知っている人はいるとは思うが。
「それで事情を聞きたいんだけど?」
『そうね……話すわ。』
落ち込んでいるのが分かる仕草に、幽霊の身体から放たれる何かも陰鬱な物へと変わっているのには同情するが、ここで俺がプレイヤーだから知らなかったのだと言っても意味は余りなさそうなので言わずにお姫様の話を聞くことにした。
『まず、アタシがここで幽霊になっている理由は誰かが来るのを待っていたのよ。』
「なんで?」
『ちょっと驚くだろうけど来てくれる?』
俺を手招きしてからお姫様は先ほど眩い光を放っていた場所へとスーッと移動していく。
あそこに何かあるのか?そう思いながら俺は止まったお姫様の場所へと向かうと、そこには今のお姫様が着ているドレスと同じ様な色褪せたドレスを着ている人骨があった。
「これは……。」
『これ、アタシ。ここで死んじゃったの。それでちょっと左腕のところを見てくれる?』
かなりの年月が経っている風化はしていないが古ぼけた遺骨の左腕の部分を言われた通りに見ると、そこには金色のブレスレットがはめられていた。
『この金色のブレスレット、聖なる腕輪オルゴーの継承をしてくれる者をアタシは待ってた。キミに継承して欲しいんだ。時間がない。アタシが生命力の全てを使って作り出した聖なる結界ももう保たないから。』
真剣な眼差しで俺のことをお姫様エリーゼ・グランドハンマーが見ながら言う。
これはかなり重要なイベントだ。本来ならこんな洞窟に来るのはだいぶ後なのだと思う。
洞窟の外で屯していたアンデットモンスターはチュートリアルのモンスターに比べても結界越しでも強いと分かる見た目や雰囲気をしていた。
そして本来なら聖なる結界が壊れてエリーゼ・グランドハンマーの幽霊も瘴気に侵されてアンデットモンスターに変えられていたに違いない。
アンデットモンスターに変わったエリーゼ・グランドハンマーを倒すことで、継承する様に言われた聖なる腕輪オルゴーが手に入るのだろう。
それを俺がランダム転移でこんな場所に転移したからこそ、この聖なる腕輪オルゴーを継承するイベントが発生したのだと思われる。
「このオルゴーって俺でも継承する事が出来るのか?俺にそんな凄そうな物を継承する資格があるとは思えないけど。」
そうそうなのだ。こんな重要そうなアイテムではなく、確実に重要なアイテムを手に入れて使える保証がない。
こんな凄いと分かるアイテムを資格がない者が使用すれば、最悪の事態になる!みたいなことになると凄い困る。
だが、そんな俺の疑念はすぐに解消することになる。
『問題ないわ。資格がないなら結界の中に入れるはずがないもの。だから大丈夫!』
自信満々にない胸を張っているお姫様の姿を特に絶壁の胸を見て、オルゴーの継承が大丈夫と言う安心と平たい胸に残念な気持ちになる。
「分かった。それならこれからどうすれば良いんだ?」
『難しいことはないわ。ただ聖なる腕輪オルゴーを腕に身に付けるだけだから。簡単でしょ?』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます