第13話 美咲と隼人の秘密の会合

週明けの夜、隼人と美咲は都心の高級ホテルのスイートルームで再び会うことにした。二人は仕事の合間を縫って、互いの存在を確かめ合うための時間を過ごすことを約束していた。


隼人が部屋に入ると、美咲は既に到着していた。窓から見える夜景が美しく輝き、部屋全体に静かな雰囲気が漂っていた。


「美咲、お待たせ。」隼人は美咲に近づき、そっと抱きしめた。


「隼人…会いたかったわ。」美咲は隼人の胸に顔を埋め、彼の温もりを感じた。


二人はソファに座り、手を取り合った。隼人は深刻な表情で話し始めた。「沙織に、僕たちのことがばれた。」


美咲は驚きと心配で目を見開いた。「どうして?何があったの?」


「メモを見られてしまったんだ。僕たちが会う予定を書いたメモをね。」隼人はため息をつきながら続けた。「沙織にはすべてを話した。でも、今は時間が必要だと言われた。」


美咲は隼人の手を握りしめ、「隼人、私たちの関係がこんな形で知られるなんて…。でも、どうするつもり?」


「沙織を傷つけたくない。でも、君を失うこともできない。」隼人は美咲の目を見つめた。「僕たちの未来をどうするか、真剣に考えなければならない。」


美咲は静かに頷いた。「隼人、私もあなたと一緒にいたい。だけど、圭介のことも考えなければならないわ。」


隼人は美咲の手を優しく包み込んだ。「そうだね。でも、僕たちの愛を貫くためには、どんな困難も乗り越えなければならない。」


その時、隼人のスマートフォンが鳴った。彼は画面を確認し、龍也からのメッセージを見た。


「龍也からだ。」隼人は眉をひそめながらメッセージを開いた。


「隼人、話がある。明日の朝、オフィスで会おう。」メッセージは短く、冷ややかなものだった。


「明日、龍也と会う必要があるみたいだ。きっと、僕たちのことを追及するつもりだろう。」隼人は美咲に説明した。


「気をつけてね、隼人。私たちのことを守るために、何があっても冷静に対処して。」美咲は隼人を見つめ、心配そうに言った。


「分かっている。僕たちの愛を守るために、全力を尽くす。」隼人は美咲を強く抱きしめた。


翌朝、隼人は清水コンツェルンのオフィスに向かい、龍也との約束に備えていた。オフィスの雰囲気は重く、緊張感が漂っていた。


隼人が会議室に入ると、龍也が既に待っていた。龍也の表情は冷たく、隼人を鋭い目で見つめていた。


「隼人、座ってくれ。」龍也は冷静に言った。


隼人は席に着き、龍也の次の言葉を待った。


「君と天城美咲の関係について、聞きたいことがある。」龍也は直球で切り出した。


隼人は深呼吸をし、冷静さを保とうと努めた。「兄さん、僕たちはビジネスパートナーとして一緒に仕事をしている。それ以上の関係はない。」


「そうか。」龍也は机の上に書類を広げ、隼人の目の前に置いた。「だが、この証拠はどう説明するつもりだ?」


書類には、隼人と美咲が一緒に過ごしたホテルの予約や、二人の親密な写真が含まれていた。


隼人は驚きを隠しながら、「兄さん、これは誤解だ。僕たちの関係は仕事の延長に過ぎない。」と答えた。


「隼人、君を信じたいが、これでは難しい。君の行動が会社にどれほどのリスクをもたらすか、考えてくれ。」龍也の声には冷たい怒りが込められていた。


隼人は冷静に言い返した。「兄さん、僕たちの関係がどうであれ、僕は会社のために全力を尽くしている。誤解を解くために、僕たちの行動を改めるつもりだ。」


龍也はしばらくの間、隼人を見つめた後、「分かった。だが、今後の行動には十分注意してくれ。」と静かに言った。


隼人は深く頷き、会議室を後にした。彼の心には、龍也の監視の目が常にあることを意識しながら、美咲との関係を守るための新たな決意が芽生えていた。

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