第19話 ウルフ系モンスター

「王命である。ウルフ系モンスターの大軍が王都に迫っている。討伐を命じる」


 毎度おなじみの王命ね。

 しかし、王様も人使いが荒い。

 俺がブタキムの皮を被ってなければ暴れたところだ。

 ブタキムの記憶では拒否したことは一度もない。

 500レベルを越えて調子に乗っていたからな。


「承りました」


 ディータとフラッチェをお供にウルフ系モンスターを待ち構える。


「ディータなら出来る」

「はい。【性魔法】二酸化炭素収集」


 大気から二酸化炭素が集められる。

 そこに踏み込んだウルフ系のモンスターが、音もなく死んでいく。

 いや倒れる豪雨のような音はする。


 ディータの魔力は無限大。

 魔力棒で俺と繋がっているからな。

 ウルフ系で呼吸をしないモンスターはいない。

 二酸化炭素の効果はてきめんだ。

 まあ、無限魔法のディータがいればこそだが。


 そして動く物はなくなった。

 二酸化炭素が散るまでしばらく待つ。


「まだるっこしい。ディータ、暴風だ」

「はい。【性魔法】暴風」


「よし、フラッチェ。手の空いている冒険者を全員雇え。毛皮祭りが始まるぞ」


 毛皮祭りが始まった。

 商店のいくつかは泣きをみただろうな。

 文句を言ってきたら支援ぐらいしてやる。

 無担保で金を貸すだけだが。


 まだ毛皮がなめされていないのに、毛皮の値段が暴落。

 干し肉も暴落。

 爪や牙なども暴落。


 まあ、俺のせいじゃない。

 モンスターが悪いんだ。


 祝勝パーティは欠席というわけにはいかない。

 今回は儲かったからな。

 だから、俺が金を出してダンスパーティではなく立食パーティにした。


 料理のほとんどには醤油が使われている。

 料理に刺身がある。

 分かっているじゃないか。

 そう言えば刺身が食いたいとネジル教徒にぼやいたな。

 邪気を使えば細菌と寄生虫を殺すのはわけない。


 ワサビでなくてハーブなのがちょっとだが、これはこれで美味い。

 生で食うのは初めての人もいたが、白身の魚の刺身は綺麗だ。

 透き通って宝石のようだ。


 美味いと食べた人が口々に声を上げた。

 納豆ご飯が食べたい。


 豆を腐敗すれば納豆は作れる。

 問題は米だ。

 米は腐敗では作れない。


「こういう穀物なんだが知っているか」


 フラッチェとディータに聞いてみた。


「どこかで見たわね」

「もしかして牛の飼料ではないですか。奴隷のご飯に出てきました。あまり美味しくなかったような気がします」


 米が見つかった。

 米を買いに行かせ厨房で料理を始めた。

 脱穀は済んでいる

 精米が面倒。

 もみ殻を邪気で腐らせる。

 綺麗に洗って研いで、炊く。


 この匂いだ。

 納豆に醤油を入れてかき混ぜ、ご飯に掛ける。

 涙が出るほどうれしい。


 酢もあったのでなんちゃって寿司も作る。

 前世で食ったのと違うがこれはこれで美味い。


 こうなったら、玉子掛けご飯も行っちゃう。

 細菌はやはり邪気で殺した。

 邪気万歳。


 うひゃあ。

 玉子掛けご飯うまし。


 ネジル教徒の仕事が増えたな。

 刺身をやる時の殺菌。


 玉子の殺菌。

 精米は機械があるんだよな。

 えっスキルでやるの。

 じゃあ邪気でも良いか。


 精米もネジル教徒の仕事だな。


 立食パーティは盛況のうちに終わった。


 たぶんしばらく経つとウサギ系モンスターが大繁殖するな。

 その時はネジル教会でウサギ系モンスターの買取依頼を出すさ、高値でな。

 ウサギ肉は干し肉に加工して、飢饉が起こりそうな所へぶち込めば良い。


 そうそう、ウルフ系モンスターの干し肉だけど、醤油と酒が使われている。

 美味いと評判だ。

 まるでみりん干しみたいな感じだ。

 この味が受けた。

 外国にも出荷した。


 物凄く儲かったと言っておこう。


「ぶう、ディータだけ活躍して面白くない」


 フラッチェがすねた。


「すねるなよ。魔力量は着実に上がっているんだろう」

「上がってるけど、活躍できないんじゃあ」


 まあ、フラッチェがすねるのも分かる。

 ディータは今回の討伐で大量に経験値を得た。

 レベル60目前だ。

 伝説の人物に近い。


 まあ中身は淫乱の性魔法大好きっ娘なんだけどな。

 なりたいよな英雄。


「分かった。必殺技を一緒に考えよう」

「範囲攻撃がいい」


 身体強化と鷹目でか。

 無茶を言う。


「よし、性魔法を覚えろ。根性があれば身体強化が覚えられるんだよな。じゃあ性魔法もなんとかなるだろう」

「痛いのは駄目だから」


「ああ、気持ちよくしてやる。【供与】魔力棒流動」


 魔力棒の魔力を動かしてみた。


「ちょっと感じる」

「神経を集中しろ。激しく行くぞ」


「あー!!」


 フラッチェが絶叫。

 激しく行き過ぎたか。


「どうだ」

「しゅごい。もうらめ」


「ステータスを出せよ」

「しゅてぃたしゅ。ありゅ。せいみゃほうがありゅ」


 良かったな。

 これで今度から大軍がきた時には任せられるぞ。


 固定砲台、それも超弩級がふたつ。

 俺はもうヒーラーの魔力タンクで良いな。


 フラッチェも夜に魔力補給をねだるようになった。

 二人して嬌声を上げている。

 俺の周辺の部屋はネジル教徒で埋まった。

 悶々としたら、ネジル神殿で抜いて来るらしい。

 何をとは言わない。

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