ナイトメア・プロトコル 〜適正無しの俺、気づいたら限界を超越し最強に〜
α星人
異世界に飛ばされ編
プロローグ
夏休み、父の趣味で天体観測に家族に来ていた。
家族たちは空を埋め尽くす星々の光に夢中になっている。
そんな中、厨二病を発症していた俺は……。
眩い満天の星空を眺め、アンニュイな顔を浮かべて一際目立つ星に向かって手を伸ばし『今の俺かっけぇ……』と浸っていた。
──そんな時だった。
眺めていた星が、思わず目を瞑ってしまうほどの光量を放った。
そして、俺は強い衝撃に襲われ地面に倒れる。
何が起きたのかはわからなかった。バチバチと火花のようなノイズが耳元で響く。
このままじゃマズいと起き上がる為に体に力を込めた。
しかし、体は一切動く気配がない。
感覚はある、痛みはない。なのに身体が反応しない、指一つ動かない。
「────」
大声を出そうとしたが、やはり出ない。
意味不明な状況と音に焦燥感に駆られるが、今の俺にはどうしようもなかった。
今の俺にできるのは綺麗な星をただ眺めることだけ。
俺はバチバチと鳴っているノイズをBGMに星を眺めていたが、すぐに雲が星空を隠した事によって、俺の楽しみは強制的に中断させられた。
俺は「あぁ、なんだよ」と言いたかったが、相変わらず声は出ない。そこでようやく俺は、唯一動く目を使って辺りを見渡した。
そして一通り見渡した後に俺は気がついた。
あれ、なんかおかしくない? と。
すぐそこにあった筈のコテージや、持っていたはずのカバンがない。それどころか人の気配が一切ない。見える範囲にいたはずの家族も消えてる。
あるのは先の見えない深い森と俺が寝ている草原。そして目線の先、草原の中心にある石でできた何か。あと変な音。
なんだこれ……。
そう思わずにはいられない。おかしいというか、おかしすぎる。
どこだよここ、明らかにさっきまで場所じゃない。てか気づくの遅すぎるだろ俺……。
もしかして俺、厨二病拗らせすぎて頭おかしくなったのか?……? 夢でも見てるのか……? それとも異世界にでも飛ばされたってのか?
こういう時こそ、頬をつねるって動けないんだったわ。
うん。かなりまずい状況だ。だが落ち着け……こういう時にこそ冷静になれ。なにかあるはずだ、この状況を抜け出せる方法が!!!
◇◇◇◇
この場所……なんか変。
なところに来てから一日ほどたった。その間にいくつか発見があった。
まず、これは夢じゃない。確証はないが感覚的にわかる。この感覚は夢じゃない。つまり、本当に異世界に迷い込みました。
次に、この場所の時間の流れは地球とさほど変わらない。体内時計で正確性はないがしっかりと朝、昼、夜があった。
そして何よりの発見は、この場所おそらく生理的欲求が湧かない。喉の渇きや食欲などが全くない。
うん、何? この世界は? 時間が経って謎が深まっただけだわ!! クソゥ!!
◇◇◇◇
異世界に迷い込んで十日ほど過ぎた。
初日に比べて特に発見もなく。ただただノイズを感じたまま暇すぎる日々を送っていた。そんな俺に遂に転機が訪れた。
目の端、常に視界に映り込んでいた七つの柱が突然輝き始めたのだ。
それを見た瞬間、俺は心底こう思った。
やっと「来た」な、と。
これだよ!! これ!! こういうのでいいんだよ!!
どうせ意味わからない状況ならこういう異世界っぽいイベントがないとやってらんないんすよ!!!
さぁ、何が来る!? 神か!? 神なのか!?
頼む来い!! 来い来い!! 神様降臨しろ!! そして俺を暇から解放してくれ!! あとチートスキルとかもくれ!!
暇すぎて頭がおかしくなっていた俺の思考はヒートアップしていく。それに合わせてなのかは知らないが七つの柱もまたその輝きを増していった。
その末に、それは───起った。
七つの柱から、虹色の玉が花火のように打ち上がり……盛大に爆発した。
感じたことない衝撃と轟音に体が浮き上がり、その場を弾き飛ばされる。地面を何度もバウンドして数十メートル飛ばされたところでようやく止まる。
「あぁ、めっちゃ痛い……って、え?」
声が出る……??
俺は思わず自分のだした声に思考停止してしまう。
まじか! 声が出た!! 十日ぶりの自分の声が聞こえる!!
「てことは……!?」
俺は、恐る恐る指を動かしてみる。
動く。腕も、足も、全部動く。
「動く!! 動くぞ!! ありがとう神様ぁ!! うぉぉ!!」
吹き飛ばされたせいで全身が痛い、が気にならない。俺は勢いよく起き上がった。ようやく自由になったんだ。こっからだったんだ。俺の異世界生活……!
そして俺は駆けだした。七色の輝きが降り注ぐ草原を。
◇◇◇◇
「ふん、やっと起き上がったのか。随分と遅かったが、まぁいい」
運命の一歩を踏み出した少年。
その遥か上空、星空の中で寝そべる白銀の髪を靡かせる身震いを起こすほどの美しい少女はニヤリと笑みを浮かべた。
「試練の本番はここから。この先、折れるか化けるかは、すべて己次第」
「至高の知能、最高の技術、最強の肉体、その全てを持ってしても足りない領域。正に神の領域。そこに至る人間」
「そんな存在が我は欲しい。星の如き光を持った存在が」
「少年、貴様には期待しているのだ。だから……早く来い、我の元まで』
白銀の少女は来るかもわからない未来を夢想しながら嗤う。寂しく広い星界の中で。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます