9話 ダンジョンマスターの皆様にお知らせです。
しばらく人が来ない予想はしてたけどさ、まさかあれからさらに半年以上も人が来ないとは思わなかったよな。
渋谷駅のダンジョンの攻略と群馬のダンジョンの消滅で勢いづいたのか、人類は大阪の梅田にあるダンジョンに挑んだ。
ダンジョンのある土地の所有者がネットで呼びかけ、50人ほどが集まり、一生に突撃したのだ。
個人的には梅田も渋谷と同じくらい栄えているので、拠点にポイントを使いすぎており、まともなダンジョンになっていないと予想していた。
だから攻略も成功すると思っていたのだが、予想に反して6人の死者、8人の重症者を出し、みんなどこかしらを怪我して帰ってきた。
しかも完全攻略とはいかず、3階層までしか進めなかったようだ。
渋谷駅のダンジョンより放置されていたくせに随分と凶悪なダンジョンだ。
あんまり信じたくないんだが、もしかして梅田のダンジョンはポイントを支払わずランダムで拠点を決めたんじゃないだろうか。
もしそうならポイントは潤沢だろうし渋谷駅のやつとの違いに納得が行く。
そしてこの市民による特攻で犠牲者を多く出してしまったことによって、政府がダンジョンに入場する規制を強くしてしまったのだ。具体的に言うとその土地の持ち主でさえ入れないようになった。
それにはなんの権利があって規制しているんだと一部の国民が激怒した。
多くの人はダンジョンを恐ろしい場所だと思っている。実際その通りだし、モンスターと戦う覚悟がないならダンジョンには近づかない方がいい。
ダンジョンに入場規制があっても多くの人は困らないだろう。
けれども、ダンジョンからは魔核という資源が取れるので、規制してほしくない人もいるのだ。
なにより、人類がダンジョンを攻略しないでいいわけがない。
それは1月1日。ダンジョンが公開されてからちょうど1年が経った日。
声が聞こえた。
いつもの中性的なAIの声じゃない。やっぱりどこかで聞いた事があって、少し懐かしい声。
『ダンジョンマスターの皆様にお知らせです。1年間人類から攻略されなかったダンジョンには、特典として拠点の周辺地域を侵略する権利が与えられました。なお、この権利は24時間で消滅します。特典を利用したい方は時間内にお使いください』
残念ながら俺のダンジョンは対象外で詳しい事はわからなかったけど、日本では5箇所のダンジョンからモンスターが溢れ出た。
ダンジョン内とは違って地上では銃器などの武器が使えるため、すぐにモンスターは駆除された。
ちなみにステータスの身体能力やスキルはダンジョンの外では使えない。
地上でできることと言えば、ステータスを見たりスキルをとったりなどの簡単なことのみだ。
もしスキルがダンジョン外に使えるようになってたら世界情勢はもっと荒れてただろう。
普通に拳銃より怖い攻撃スキルあるし。気配消すスキルは犯罪に使えちゃうし。
鑑定スキル持ちにステータスを見られたらダンジョンマスターとバレるので、こっちとしても使える範囲がダンジョン内のみというのはありがたい。
話は戻るが、モンスターが討伐される様子を撮っていた人がおり、その映像がお茶の間流れた。モンスターが青い血を流しながら死んで消えていくという絵面はなかなかショッキングで、だいぶダンジョン攻略のやる気を無くすものだった。
この時点で俺は数年ダンジョンに人が来ないことを覚悟していたのだが、結局なんやかんやあって、政府がダンジョンの探索者ライセンスが発行。
2月になる頃には、土地の所有者と国が揉めていないダンジョンには、一般人でも入れるようになった。
こうしてようやく俺のダンジョンにも探索者が現れた。
まず最初に来たのは男4人組。
順調に進んで行きそうだったので、俺はすぐ未完成だった7階層にゴブリンスポナーとドレッドスパイダースポナーを置いた。
でも4人組は6階層の途中で帰ってしまったのであんまり意味なかったかな?
次の日。男女の2人組が来た。5階層のオークをうまく倒せず、大きな怪我をする前に撤退。
そのあとすぐに昨日の4人組がまた来た。
しかし、モンスターはまだリポップしていないタイミングで来てしまったため、5階層の扉を開けられず。10分ほど待った後に帰った。
たった10分で帰るとは堪え性がないな。
次の日も先に男女の2人組が来て、今度はオークを討伐。6階層に進んだ。
初日から来ている4人組はタイミングが悪く、また5階層の扉を開けられなかったため帰った。
そんな感じでちらほらとダンジョンに人が訪れ、運がよかったグループのみが6階層を攻略する日々が続いた。
ある日。いつものダンジョン情報収集をしていた時。
気になるSNSの投稿を見つけた。
《町田のダンジョンはクソ
攻略にモンスターからドロップする鍵が必要なのにいつ行っても倒すモンスターがいない
ズルすぎるだろ
他のダンジョンに行く方がマシ》
お前のタイミングが悪いだけだろ。待ってればリポップするんだから文句言わず待ってろよ。それが嫌なら他のダンジョンに行って死んでしまえ。
……って言いたい。
言わないよ?言わないけどさ?本当に他のダンジョンに行かれて困るのこっちだし。そもそもダンジョンマスターってバレたくないし。
まぁ、探索者に不満があるなら改善してあげるのが人類の味方をしているダンジョンマスター勤めである。
俺は看板の内容を変えた。
【チュートリアル① モンスターを倒してみよう!
※モンスターは1時間毎にリポップするよ
※95%の確率でドロップアイテムの鍵が出るから拾って先に進んでね】
わざわざリポップ時間を書くなんて、他のダンジョンじゃまず無い対応だ。
ついでに鍵が落ちなかった時にも文句言われそうだから文言を書き足しておいた。
これで大丈夫だろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます