添い遂げる為の歩み寄り

アワイン

一歩目

契約するか否か

「さあ、選んでほしい」


 長机に挟んで、彼はいた。

 黒薔薇のような凛々しく美しい男性がいた。成人男性なのは間違いないが、普通の成人男性が龍の瞳なんぞ持たない。サラサラとした長い黒髪は三つ編みで一つにまとめており、黒いスーツを着て少女と対面していた。

 少女は深い黒のミディアムヘアと茶色の瞳を持つが、しっかりとした雰囲気を持った月下美人を思わせる。しかし、そんな彼女も出された提案にはすぐに答えを出せなかった。

 彼らはキチンとした身なりで、とある和室にいる。

 父と母も同席していた。

 険しい顔つきであるが優しい父は、目の前に出された紙二枚に悲しげな顔をしている。優しいがしっかりしている母は、顔色を悪くしていた。

 紙にあるのは婚姻届と離婚届。目の前の男性が出したものだ。


「……それしか、解決する方法がないのですか」


 男性は彼女を見据えて口を開く。


「それ以外の方法となると、法外的に解決することになるけどいいかな?」


 法外的。犯罪や手を汚す事を意味する。彼女は口を閉ざすと、彼は真剣に話す。


「三人のためにも、決めて貰わないとならない。自分たちを守るために、契約をして籍を入れるかどうかを」


 どうしてこうなったのか。彼女は過去の記憶を振り返る。

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