第8話 : 再会した運命 [3]
「こんなに無理してまで頑張る理由があるの?」
「当然、願いを叶えようとしているんだ。」
「そうだけど。」
彼女が言う「願い」というのが、もっと気にならざるを得ない。 一体何のためにここまでやるんだろう?
「じゃあ、あなたは今、一生懸命にやっていないということ?」
「ああ! そんなことは絶対に違う!」
明らかに彼女とはやり方が少し違うが、私もそれなりに最善を尽くしている。
「もちろん、何の問題もないよ。」
そう言って、しばらく日が暮れるのをじっと見つめる。
いつの間にか暗くなり、少し肌寒くなる。
カレーを食べながら水を飲みすぎたせいか、小便がしたい。 冷たい夜の空気がさらに刺激するようだ。
「ちょっとトイレに行ってくるね。」
「そうだね、行ってらっしゃい。 ここで待っているよ。」
トイレを探して周囲を見回すが、近くに公衆トイレが見当たらず、もう少し奥に進む。
焦りの信号だけがますます強くなり、我慢できなくなりそうだ。
仕方なく、闇の中に隠れたまま草むらで用を足す。
急いで彼女のところに戻ろうとした時、暗闇の中で輝く小さな炎が浮かんでいるのを見つける。
きらびやかな炎に取り憑かれたように、少しずつ深く暗いところに入る。
急な傾斜を登り、高いところで上がる花火を階段で追いかける。 どれだけ飛び上がってきたのか息が切れる頃に頂上に到達する。 目に入るのはかなり古いと思われる神社の建物だ。
入るか戻るか迷っていると、神社の方向から誰かの声が聞こえてくる。
「いらっしゃいませ。 今日一日はいかがでしたか?」
漆黒の静寂の中ではっきりと響く見慣れない声に鳥肌が立たずにはいられない。
「それはどういうことですか? どなたですか?」
闇の中で誰なのかも分からない相手に警戒しながら質問する。
「あ、失礼しました。紹介が遅くなりました。 暗くてよく見えませんよね。 私が面白いものをお見せします。」
彼女が暗闇の中で手招きすると、突然紳士が明るくなる。 薄暗かった神社に数多くの花火が舞うように飛び回る。 花火がどこから来るのか疑問に思わずにはいられない。
「これは一体…」
両目を捕らえる恍惚とした美しさに自然に感嘆詞が出てくる。
「美しくないですか? 体も心も温かくしてくれる思い出の花火が止まる神社。 ここの意味を理解すると、より美しく見える場所です。」
彼女は私が吐き出す感嘆詞に意味深長な笑みを浮かべながら共感を表す。
「はい。」
不思議な光景にぼんやりと眺めていたのが恥ずかしくて、努めて平気な表情をする。
「さあ、こちらへどうぞ。」
私はただ彼女の後を追って行く。
神社の片隅にまるで井戸の穴のようなところから花火が湧き出るのを発見する。
「この穴は?」
「深い闇の中で花火が上がっているのが見えますか? 誰かの願いが花火という形を成し、行くべき場所を失った願いはあちこちに浮かんで、ここを通って流れてきます。 叶えてくれる主人がいないまま燃え上がる熱望こそ、この場所のエネルギー源になるわけです。」
「私の役割は、その熱望を落ち着かせること。 この花火が誰かの未練だということです。 この火鉢に火をつけると懐かしい煙が立ち、まるで霧のようにここを覆います。 その演技が見せる歓迎で、この空間が飾られます。 この場所はどこにでもなり得るのです。 小さな部屋一つになるかもしれないし、都市になるかもしれないし、深い山の中になるかもしれません。」
「こんなことをする理由はただそれだけですか?」
「誰かの切実な夢だったはずの花火が、ただ主人が来るのを待ちながら燃え上がるのが可哀想ではないですか?」
「それは…」
「言葉が続きませんね。」
「手紙を書いて私をここに呼んだのは、あなただったのですか?」
「恨みが混じった口調で私を撃ち込む必要はないと思います。 これを望んだ人は私ではありません。 誰かの切実な願いが叶うように助けるだけです。 そんなに私を責めることはできないと思います。」
私はただ幻想に浸って利用されたことが悔しい気がするが、いざ的を射る返事に言葉を失ってしまう。
「こちらへどうぞ。」
彼女は祠堂に歩いて行く。
彼女は小さな香炉の前に立ち止まる。
「花火が見えますか? その証拠です。 望みがまだ消えていないのです。 いや、もっと強く乗ってます。 何が必要なのかはわかりませんが、この本心に背を向けることができると思うなら、諦めた方がいいでしょう。 絶対にこの花火を騙すことはできません。」
彼女の断固たる主張が私の好奇心をさらに刺激する。
「それでは…」
この機会を逃すわけにはいかないという気がしては、何かをより一層問い詰めようと口をもぐもぐさせる。
その時、彼女は私が話を切り出そうとしていることに気づいたかのようにきっぱりと言葉を切ってしまう。
「さあ!ここまで! すべてを教えてあげたら面白くないじゃないですか? 疑問はこの幻想の世界を楽しみながら解いてみましょう。 正解に直接近づく楽しさがありますね。」
「ちょっと待ってください。」 私はそれを聞いて急いで彼女を捕まえようとする。
いざ彼女はすでに漆黒の中に姿を消してしまう。
自分が言いたいことだけ言って去った彼女が卑怯に感じられ、その炎を一度じっと睨みつけてみるととぼとぼと戻ってくる。
神社を訪れる時と変わったことは何もない。 ここに関する断片的な情報を得ただけだ。 何かをたくさん食べて体が重くなったわけでもなく、その短い間に疲れが2倍にたまったわけでもない。 漠然とした好奇心だけで花火を追う時は鳥の毛のように軽い足取りだったが、これが責任の重さを実感するものなのかもしれないと思う。 知りながら無視した事実を自分にはっきりと刻印させる時に感じる罪悪感の重さかもしれない。 ここで何かをしなければならないという重圧感が両肩を押さえつけている。 もしかしたらその重さを自ら実感することがその本質に向き合うために避けられない部分ならば、自らそのパズルを合わせる達成感のために喜んで耐えなければならないのもやはり運命であるわけだ。
神社の入り口に戻った瞬間、すべての花火が消える。
もうこんなことに驚くことはない。ただ、虚しい感情が大きくなるだけだ。
とぼとぼと階段を下りると、彼女が私を迎えに来ていた。
「どこにいたの? ずいぶん探したよ!」
「ごめんね。暗くてよく見えなかったと思う。」
神社で彼女の言うことを聞いたら、今目の前に立っている彼女もやはり違うように見える。 声、行動、話し方が全て同じなのに、ただの幻想に過ぎないという事実一つがその違いを作る。
「もしかして何かあったの?」
「何もなかった。 何も見えなくて道を少し迷っただけだ。」
肌寒い天気にもにこ笑いながら迎えてくれる彼女に今これが心境の変化なのかを問い詰めることは特に重要ではない。
「ここでこうしているより、早く宿舎に帰って暖めた方がいいと思う。」
「よし、行こう。」
私は彼女と暗い道を歩いている。 空を彩った明るい星が目をひきつけ、波の音が耳をくすぐる。 意志が弱くなるかもしれないが、ただ暖かい雰囲気が気に入っている。 この幻想にじっと頼ってもいいかは分からないが、あえてこの感情を無視したくはない。 信じたくなくて自分で否定しただけで、もしかしたらここにずっといたいというのが本当かもしれない。 このままでいても悪くないような気がする。
私がさっきと何か違うことに気づいたのか、先に言い出すのは彼女だ。
「私たち明日も一緒に楽しく遊ぼう。」
「明日も?」
無意識に飛び出した反応だ。 私さえどうして問い返したのか理解できなくて自分でかみしめてみる。 一人で他のことを考えていて彼女の声にびっくりして本能的にそうかもしれないし、彼女もやはり歓迎だと知ってから警戒心があったからかもしれない。
「なんで?ダメ? 試合で勝った人に適当な補償があると!」
彼女が寂しい表情をしている。 当然の反応だ。 私もやはり明日彼女とこの賭けを続けることを当然視していた。
「ああ…もちろん、いいね。」
一歩遅れて曖昧な口調で納得する。 努めて戸惑いを隠そうとする。 彼女が本当に望んでいることを知らなければならない。 これさえ成し遂げれば自然に花火も消えるし、ここから出ることができるだろう。
しばらく波打つ音が静寂を埋めてくれる。
「何か言いたいことがあるみたいだね。 隠さずに言って。 そんなにぐずぐずしているのをじっと見ている私も不便だよ!」 彼女が先に言い出す。
「もしかしてその願いとは何か言ってくれる?」
まるでこの瞬間だけを待っていたかのように勇気を出す。 本当に彼女の言ったことが事実なら、きっとお互いに関係があるはずだ。
「それはなぜ?」
「ただ気になって…」
「それを知ったら面白くないんじゃないかな?」
「そうかな…」
「そうだよ!」
「それでも言ってくれたら…」
「まだ何なのかよく分からない!」
「本当に知らないの?」
「諦めるつもり?」
「あ、そうじゃない!」
「それならいいんだよ! 君も心の中に望むことが一つくらいはあるに違いない! そうでなければ、そもそも私を見に来ようと電車に乗りもしなかったからね! これは私が断言できる!」
「わかった。」
その夜、私は彼女とホテルに戻る。
「部屋がとてもいい。」
彼女は伸びをして、ぴょんと部屋の中を走り回る。
「そうだね。」
ぬくもりのある部屋に入ってきたら心も安らかになる。
「ここの温泉が本当にいいって聞いたけど、一緒に行く? 寒いところから来たので、お湯でのんびり体を温めてみよう!」
「一緒に?」
「そう!一緒に! ここは混浴になるそうだから、一緒に行ってみよう!」
「よし!」
私は彼女と簡単にタオルを持って温泉に入る。 湯でゆらゆらする湯気に当たるだけでも、今日溜まっていた疲れが一瞬にして雪が溶けるように消える気がする。
「じゃあ、ここで3回目の賭け!」
「望んでいたことだ。」
もうこれに慣れている。
「温泉に長く滞在するんだよ! 先に湯から出る人が負けるんだよ!」
「ああ!こんなことを我慢するなら、私は自信がある!」
「私も負けないぞ!」
彼女と温泉に入ると少しずつ体が熱くなり始める。
しばらく沈黙が流れる。
この状況で先に言い出すのは彼女だ。
「ここにずっといたいと思わない?」
「それはどういうこと? 今、温泉で賭けをすることを言ってるの?」
「こんなに今私とこうしているのが幸せじゃない?」
「幸せだよ。」
「私とずっとこのままこうしていても大丈夫だと思うの?」
「それは…」
「それは違うってこと?」
「ところでこれを今どうして聞くの?」
「君が先にその願いだということを知りたがっていたじゃないか?
「うん、そうだよ。」
「もし私がこの賭けに勝って、あなたとずっとこのまま一緒にいたいという願いを抱いたら、あなたはどう思う?」
「さあ…」
理解できない短い会話が終わり、再び沈黙が流れる。
体が楽になると、心もだるくなるようだ。 もしかしたら、これまで状況を判断して解決しようとした私が初めて心から緊張をほぐす瞬間だ。 長く持ちこたえる賭けなのに、むしろ出たくないというのがアイロニーなだけだ。 眠りに落ちるように、すべてが止まったようだ。
どれくらい経ったのかも鈍くなる頃、私を無感覚で起こしてくれるのは、ピリっとした刺激だ。
「うっ…」
温泉に入ってから初めて出たくなる瞬間だ。 努めて堪えようとびくびくする。 確かにおしっこを一度したのにまた信号が来る。 水を飲みすぎたようだ。 ホテルに到着して賭けを始める前には何の信号もなかったことが残念だ。
「どうしたの?もう限界なの? 少なくとも忍耐力だけは私より良いと思ったのに、こんなに簡単に諦めることを考えるなんて。 がっかりしたな。」
彼女が私を横目で見ながら変な気配に気づいたようだ。
「そんなはずがない。もっと我慢できる!」
努めて平然としたふりをする。 こんな賭けがあると知っていたら、あらかじめトイレに行ってきたはずだ。 温泉で休むことにとても浮かれていた。
「そんなに大変なら、もう諦めて。」
彼女は私のわき腹を突く。 私がこのように否定することをむしろ本当に出たがっているという一種の信号と受け止めているようだ。
「あ、違う。 私はここから出たいのではない!」
ただ温泉で小便をすることも考えてみるが、どうしても人間になった道理でこのような恐ろしいことをすることはできない。
「それじゃ、急にどうしてそんなに体をひねっているの? どこか不便なところでもあるの?」
「それは…」
おしっこがしたくて出かけたいというのは恥ずかしくて言えない。
「やっぱり忍耐力が限界に達したんだね!」
私は彼女の挑発に意地を張ってもう少し我慢しようとするが、結局我慢できず温泉から出てくる。
「よし!今度は私が勝ったね!」
彼女が勝利を祝うが、トイレに行くのが急いでいて目さえくれない。 おしっこをして初めてすっきりした気分になる。
いざ部屋に戻ると顔がほてっとする。 温泉ではお湯に慣れたせいか、どうしても感じられなかった。 彼女も同じように顔が真っ赤になって冷蔵庫を開けて水から探す。
「今日はどうだった?」
私が扇風機の風に当たっているとき,彼女は言い出す。
「何と答えるべきか? 良かった?それともイマイチだった?」
「そうだな…こんなに一日中一緒に遊んだのにまだぎこちないのかな?」
「うーん…」
神社で彼女が言ったことを考えると、心境はさらに複雑になる。 温泉で彼女が訊いたのも普通の質問なのに、なんとなく気になる。 率直に聞いてみたらどうか考えてみるが、口から出ない。 勇気が出なくて心に留めておくだけだ。 私自身も確信のない質問を彼女にすると、かえって逆に飛んでくる質問にきちんと答えられなくて困ってしまいそうだ。
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