*
暑い、暑い7月のことだった。
僕は君が、
能天気に、ぼんやりとそんなことを考えることしか、できなかった。
「ねえ。
「なんだよ、急に」
「私は信じない。だって胡散臭いだけで、希望も何もありやしない。
いつかいいことあるなんて話、聞き飽きたよ」
いつもと違う雰囲気に、本能が警鐘を鳴らす。蘭が僕の手を取る。じっとり湿度を含んだ風が不快感を伴い頬を撫でる。
「なんでそんなこと言うんだよ」
その真意を聞き返しても、もう蘭が答えてくれることはなかった。
そうして蘭は、フェンスの方へと進んでいく。僕も抵抗できずについていく。そんな最中、もしかしてそこから、なんて最悪の思考が脳裏をよぎる。
信じたくなくて今すぐ校舎の方へと走りたいのに、体がどうしても動かない。いや、それより蘭を拒まずに一緒に行ったほうが楽になれるんじゃないか、と希望的観測を見出す気のない僕の脳がつぶやく。
それでも行きたいと争う生存本能に従って「待って」なんて言っても、まるで君には届いていない。いや、届いているのに無視されているのだろうか。
「ねえ、一緒に死のうか」
そう無邪気に笑って、抵抗できない僕の姿勢を肯定と読み取ったのか、ちっぽけなフェンスを軽々と飛び越した蘭は重力に逆らうことなく、僕を連れて飛び降りた。
それが、さっきまでのお話の全貌。そう、結局、そうなんだよ。
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