第18話 文化祭
『文化祭嫌です。やりたくないです
あのはしゃぎぶりに混ざれないです』
学校中が文化祭の準備で浮き足立ってる中でそんな事を真顔で言う奴が俺の前にいる。
いや、こいつは元々そう言うやつだった。
俺の前でこそ明るいが、基本内弁慶でコミュ力がないんだったと思い出す。
『文化祭はみんなとの思い出作りの一環だし、
クラスのみんなと協力して1つのことを成し遂げることで絆が・・』
『クラスで話せるの、まだそんなにいないですし、そんな先生が言ってくるような事聞きたくないです。なので先輩のクラスに混ぜてください』
と俺の話を遮り、真剣な顔で言ってきた。
『いや混ぜられる訳ねーだろ。俺が浮いちまうわ』
えぇ〜と駄々をコネ始めようとする涼翔に続けて伝えた。
『それに明日から文化祭準備期間で夜まで教室で準備する予定だし、部活もないから文化祭終わるまで遊ぶのも難しいな』
そう伝えると、この世の終わりのような顔をしている。
『そんな顔するなって、3日間だけの辛抱だし
てか同じ学校にいるんだから』
『不服です・・・』
『今回ばかりはしょーがないだろ』本当に不服そうな顔をする涼翔の頭を撫でて別れた。
文化祭の前々日、今日から文化祭の準備を本格的に進めていく。
クラスの出し物はお化け屋敷をやる事になっていて、小道具を作る係になり
人数が多い班なので多少サボっていても作業は進んでいくので気持ちは楽だった。
ひと段落したところで休憩となり、涼翔のクラスでも眺めようかと向かうとカフェの様なものをやるらしくガヤガヤと騒がしかった。
やんちゃな生徒が多いのか、賑やかなクラスに自分も馴染めないかもと思いながら涼翔を探すと教室の一番後ろの席で黙々と折り紙を折っていた。
『スズっ・・・』
呼びかけようと思ったが、俺の顔を見たら泣きついてくるのを想像して涼翔の自立のためにも心を鬼にして教室に戻った。
夕方過ぎにその日の作業は終了してクラスのみんなでファミレスに行くことになった。
文化祭乗りでみんなのテンションが高い中、気がつけば解散したのは23時で深夜俳諧で補導されないか不安になりながら帰った。
スマホを見ると涼翔から着信が3回来ていたが気づかなかったらしい。
夜も遅かったので明日かけなおすことにしてベットに入った。
文化祭前日は作業を意地でも終わらせないといけなかったが20時ころまでかかってしまい、ヘトヘトにみんな疲れていた。
クラスの中の良い友人に、このまま遊ぼうと誘われてしまった為、その誘ってきた友人の家に数人集まり、最新型のゲームをして朝まで過ごした。
朝方まで涼翔のことが頭から抜けて、着信があったことも気づけなかった。
友人たちと駅前で朝マックによってから教室に向かうと、先にみんな集まっていて今日の段取りについて話し合っていた。
お化け役の変装の手伝いして準備が終わったのは文化祭開始の30分前で各々自分の役割に就く。俺は受付係を任されていたので廊下の扉の前で待機する。
開始と共に他校の生徒やOB、保護者がずらずらと校内に入ってきてお化け屋敷はもの凄く好評で人がヅラっと並び行列ができていた。気づいたらお昼過ぎになっていた。
受付係を他の人と交代してもらい校内を散策する。
涼翔に謝らないと1年生の教室へ向かうとカフェも好評でそれなりに繁盛していたが涼翔が見当たらない。
『涼翔いる?』そう聞いた1年生はキョトンとした顔をした後に「知らないです」と言われていしまった。
「涼翔?今どこにいるの」
『先輩に関係ありません。 クラスの人達と思い出作っててください』
電話をかけると1コールで出てくれたが拗ねているようだった。
『何拗ねてんだよ。
せっかくお前と思い出作るために時間作ったのに』
電話しながら涼翔の居場所を探し歩く。電話の向こうは静かだった。
屋上なら静かそうだと思い、階段に向かう。
『先輩、電話に全く出てくれないし』
『それはかけ直そうとしたけど、忙しくて』
『僕なんかやっぱり邪魔なんですよね
先輩には友達いるのに、僕とばかり遊んでてもつまらないですよね』
「ああー、もううるさいな。俺はお前の彼氏だろ。
『怒らないでくださいよ・・・」
「怒ってねえよ。デートするぞ」
屋上にたどり着くと、涼翔を見つけた。
背後に忍び寄りそう言うと、涼翔は振り向いた。
『いいんでずがぁ?』
涼翔が泣き止むまで抱きしめた。
「不安にさせてごめん」
喫茶店、お好み焼き、舞台発表など
他のクラスの出し物や体育館でのバンド演奏などを見てまわっているうちに
涼翔は機嫌を直していつ元通りに戻っていた。
自分の教室に戻ると、仕事をほったらかしてたのでクラスの女子にこってり怒られてしまった。
文化祭は成功に終わりクラスのみんなも満足気だった。
『お疲れ様でした!!!
みんなのおかげで無事終了できました!』
片付けも終え学級委員長がみんなにお礼を言い解散した。
その日の夜のクラス会に参加しているときにLINEが届いた。
【先輩はやっぱり優しいですね 僕の為に今日はありがとうございます。】
本当は文化祭を通じてクラスに溶け込んで欲しかったが
いい思い出ができたと、笑みが緩んだ。
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