95 最終決戦②
音速にも匹敵する超速度で飛行する魔龍神王と、それについて行く咲。
「おお! この速度にもついてこられるとはねえ。中々やるじゃん。別に自慢じゃあないけど、飛行に特化したドラゴンよりも数段速いのよこれ?」
「この程度なら……問題ない!」
あまりにも速すぎるその飛行速度に咲の精神は持っていかれかけていた。
いくらアルティメットカルノライザーの性能がずば抜けて高いとは言え、これだけの超速度で動き続ける経験など咲には無かったのだ。
一歩間違えれば取り返しのつかない事故に繋がる。
そんなとんでも無い集中状態を常に強いられてしまっては精神にも相応のダメージが入ることだろう。
「なあーんだ、結構限界みたいじゃん? 俺を倒したいんだったらもっと頑張んなよ」
「言われなくても!!」
魔龍神王の挑発に乗ったのか、或いは元々攻撃するつもりだったのかはわからないが、咲はスピノライザーの専用武器であるスピノブラスターを呼び出して攻撃を開始した。
もちろんただのスピノブラスターであれば魔龍神王の体には傷一つ付かないだろう。
しかしアルティメットカルノライザーとして呼び出した武器はそのどれもが何十倍も強化されているのだ。
「おあっとぉっ!? 痛いなーもう!」
その証拠にスピノブラスターから放たれた銃弾は魔龍神王の体へと命中し、彼の体に決して無視できない規模の傷を付けて行く。
とは言え魔龍神王も黙って攻撃されている訳では無く、このまま攻撃を許してなるものかと反撃に出た。
「それを待ってた!」
そんな彼の突進を咲はトリケライザーの専用武器であるトリケラシールドで受け止め、間髪入れずに今度はケツァライザーの専用武器であるケツァランチャーで攻撃するのだった。
所謂グレネードランチャーに似た武器であるそれから放たれた無数のグレネード弾が連鎖的に爆発を発生させ、魔龍神王の体を爆炎で包み込んでいく。
「やったか……?」
確かな手ごたえを感じた咲は思わずそう呟いていた。
山すらも容易に吹き飛ばせる程の火力を持つケツァランチャーによる一斉攻撃。
それを真正面から無抵抗に食らえば流石の魔龍神王とて無視できないものとなるだろう……と、そう思っていたのである。
「駄目だってその言葉を言っちゃ。それ、倒してない時に言うヤツだからねえ?」
しかし現実は非常だった。
確かに魔龍神王の体には傷が増えており、間違いなく今の攻撃は通用していた。それは紛れも無い事実である。
だがそれでも、残念ながら致命傷とまではいかなかったのだ。
「さあて、そろそろ底が見えてきたんじゃないの?」
「まだまだ……!」
口ではそう言う咲だが、ケツァランチャーによる全力攻撃がこの程度のダメージにしかならない時点で残念ながら彼女に勝ち目は無い。
出力を上げるにも、もう彼女に残されたエネルギーは少ないのだ。
……だが、実際にはただ一つだけ魔龍神王に通用しうる攻撃方法を彼女は持っていた。
しかしそれは本当の本当に最後の手段に出るしかないものである。
自身の全生命力を瞬間的に爆発させ、何十倍ものエネルギーとして放出する自爆攻撃……それこそが彼女の持つ、文字通りの最後の切り札であった。
「桜……」
それを使わなければならない状況になってしまったことを理解した咲は、自分の帰りを待っている桜の事を思い浮かべていた。
当然だが自爆攻撃を行えば咲の命は無い。もう二度と桜に会うことも出来なければ、桜との約束も違えてしまうことになるのだ。
「おやおやぁ? なにやら思い詰めている様子だけど……ああ! そう言うことね!」
咲の様子がおかしいことに気付いた魔龍神王は何かを思いついたらしく、突如として空中でピタっと止まったのだった。
「残してきた者への未練……それはいつの時代も人を弱くする。ならば、それを俺が全て解消してやりましょうとも!!」
「なっ……!? あなた、どこを狙って……」
魔龍神王はそう言うとあらぬ方向へと狙いを定めて攻撃の準備を始めた。
「……あっちの方って、まさか!?」
咲はその瞬間、魔龍神王の狙いを理解したのだった。
「穏健派の拠点……! 桜!!」
その瞬間、咲の体は無意識に動いていた。
「絶対に、守り抜いて見せる……!!」
咲はトリケラシールドを巨大化させ、彼の攻撃から穏健派の拠点を守るようにして立ちふさがる。
今から魔龍神王を攻撃しても彼の攻撃を止められるかは怪しく、それならもう穏健派の拠点を彼の攻撃から庇うしか無かったのである。
「チャージ完了っと! てなわけで、いっちょ魔龍神王レーザーを食らってみな!!」
一瞬、辺りの空間が歪む。
と同時に、極太のレーザーが魔龍神王の両手から放たれた。
「ぐっ……うああぁぁぁっ!!」
自らを鼓舞するように雄たけびを上げながら、咲は彼の放つレーザーを受け止める。
しかし物凄い硬度を持つアダマンタイト鉱石よりも遥かに高い強度を持つはずのトリケラシールドですら徐々に欠けて行き、ついには砕け散ってしまった。
全てを防ぐはずのこの大盾ですら、魔龍神王の極太レーザーを防ぎきることは出来なかったのである。
「あーららぁ、ちょっとやり過ぎちゃったかねえ」
それから少しして、攻撃を終えた魔龍神王は未だ煙が出ている両手の平をブンブンと振りながら、あまりにも規模のデカい攻撃をしてしまった自分自身に呆れたかのようにそう言う。
「って、どこ行っちゃったのよ? もう、せっかくこれからだって所なのに……」
そしていつの間にか咲がいなくなっていることに気付くやいなや彼女を探し始めるのだった。
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