第14話 文化祭。
学生の1ヶ月は忙しい。
朝から晩までなんでこんなにやる事がある?
前の時は「もう死ぬんだ」という気持ちと、巡と一分一秒でもいたい気持ちから気にしていなかっただけだが、それでもこんなに違うかと驚いてしまう。
中間試験は問題なく順当な成績を取る。
問題は、宮城光が「験、教えて」と言って来て、テスト前に居残り食らったことくらいだった。
体育祭はクラス対抗で、星野陽翔を殴った先輩達とは同じチームで、最後まで仲良くやり切れるのかと困惑したが、ある種血の気の多い俺達は勝利の二文字の為には一致団結できた。
敵チームの宮城光を「敵国人」と言ったら盛大に睨まれたが、違うクラスと戦う時には応援してくれていて、その声は確かに聞こえていた。
星野陽翔から「お前、モテモテな。宮城光とかすげぇ」と言われたが、「補習仲間で勉強見てるからなのと、死にそうって思われてるのかも」と返したら「…なんとなくそんな気もするな。良かったな、勘違いして告白したら笑い者だったな」と言われて身の毛がよだった。
体育祭は見事に優勝して気持ちよく終われた。
だが二学期は終わらない。
今度は文化祭だと?
「どんだけ忙しいんだ学生!」
そう言いながら文化祭に参加をする。
体育祭ではあれだけ燃えたので、燃え尽きた部分もあるのかもしれないが、文化祭には力の入らない俺達は「休憩所とかどう?」、「賛成」のやり取りで休憩所になり、椅子だけ置いてご自由にどうぞは担任の三ノ輪先生も承服しかねるので、ゴミ箱とお茶を出す事になった。
それでもやる事はある。
俺は巡と準備しながら「忙しすぎる」と言い、この機会にまだ知らない事になっている巡の誕生日を聞き出しておく。
無事に誕生日を知る事ができた俺は次の休みに巡に本を買う。
まだ友達としてしか贈れないし、贈るならやはり最初は本にしたい。
バイト先でスケジュールを見ていた白城さんが「あれ?高城くんは今度の土日休むの?どうしたの?」と聞いてくる。
「文化祭ですよ」
「ああ!この時期か、懐かしいね。何するの?」
「休憩所です」
この答えに、「淡白だねぇ」と言われたので、「うちのクラスは球技大会と体育祭に燃えて文化祭は燃え尽きました」と説明したら笑われた。
・・・
文化祭は1日目が生徒のみ、2日目は父兄参加になる。
1日目はクラスの手伝いをしてから巡と少し回って残りを星野陽翔達と回る。
そんな予定だったが、午後になると「験、回るわよ」と言って宮城光が現れる。
「…宮城?なんで?」と言いかけたが、俺はようやく気づいた。
コイツ、友達すくねーんだ。
「少し待っててくれ。ちょうど休憩所だから休んでいると良いよ」
俺の態度が気になった星野陽翔が、「高城?どした?なんかあったのか?」と声をかけてきたので、俺は宮城光から見えないように、そして聞こえないように気をつけて、憐れんだ表情で「アイツ、友達少ねえんだきっと。可哀想すぎる」と説明してから、「待たせたな宮城。いいぞ、ザッと見ような」と言う。
その間に星野から話を聞いた巡が何か言いたそうだったが、俺は穏やかに微笑んで首を横に振った。
恐らく巡は友達のいない宮城光の友達になってもいいと言うのかも知れないが、巡は優しいから、お腹が空いていても「宮城さんが食べないなら、今日は私もいいかな」なんて言いかねない。
巡は甘党天国で死ぬ程甘味を頬張って「験!美味しいよ!幸せ!」って言うのが可愛いんだ。
・・・
校内を見て回る宮城光は「へぇ、こんな物もあるのね」なんて初見丸出し。
変わって俺は前の時間で巡と学校中を見て回った。
懐かしい。
やんちゃな生徒が室内サッカーで割って新品になった窓ガラスはまだ古いままだった。
「なぁ、宮城のクラスは何やってるんだ?」
「うちはお化け屋敷よ」
「宮城も手伝ったのか?仕事はいいの?」という俺の質問に、宮城光は「設営も手伝ったし、お化け屋敷の手伝いもしたわ」と言う。
キチンと手伝ってもまだ友達が少ないのか…。
なんとかクラスメイトとの仲を取り持とうと思った俺は、さりげなく宮城光のクラスに誘導していき、お化け屋敷の客になる。
宮城光に「脅かす?一緒に入る?」と聞くと一緒に入ると言う。
運良く受付は高柳で、「高柳、宮城に連れられて客になりに来たよ」と言うと、微妙な顔で宮城光を見てから俺を見て、「高城?まあ良いけど、宮城さんの美女幽霊は一緒にいたら見られないよ?」と聞いてきた。
美女幽霊?
気になって宮城光を見ようとした時、確かに教室のポスターには一日一回、美女幽霊が1時間だけ驚かしてくる事が書かれていて、ノータッチで頼むと書かれていた。
「成程、宮城はもう仕事を済ませたのか」
「験は見たかった?」
「いや、まあ写真とか撮ってあったら後で見せてよ。とりあえず入ろう」
そう言えば、前の時は巡が怖がりなのもあったが、俺が冗談混じりに「そのうちこっち側かぁ」と言ったら、巡が怒ってお化け屋敷の話すらさせて貰えなくなっていた。
そう考えると感慨深い。
そしてそんな余裕はあっという間に消え去った。
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