神様の試練ってあんまり意味がない。
さんまぐ
別れと再会と出会い。
第1話 2人の願い。
神は対処できる人にしか試練をお与えにはなりません。
そんな事を、テレビかラジオで聞いた気がする。
なら俺が、これから死ぬのは対処可能な試練なのか?
この俺、
学校で倒れて、病院で検査をしたらもう手遅れで、悔いなく最後を迎えるしかないと言われた。
泣きはらした。
家族と思い出も作った。
同じくらい辛かったのは、余命宣告を受ける少し前に彼女が出来た事だった。
彼女は俺より泣いてくれた。
一日程悩んだ。
なんて伝えるか困って、別れたくないけど別れたいと言って混乱させた。
学校には最後まで通いたい。
だから隠しきれないし、隠すものでもないとしてキチンと伝えたら大泣きしてくれた。
「こんな初彼氏とか嫌だろ?ノーカンにも出来るって」
そう言ったら、「そんな事ない」と何遍も言ってくれて、文字通り毎日一緒にいた。
家族とのお別れ会にも来てくれて、キチンと「験さんの彼女です」と言ってくれた。
歩けなくなって入院しても病院に通ってくれていて、「こんな青春おかしくね?」と聞いても、「いいの!いさせて!」と言ってくれた。
彼女が通えるように、委員会活動や掃除当番を代わりにやってくれたクラスメイトには申し訳ない気持ちにもなった。
だが、日々確実に衰える。
もう、出来ないことの方が多くなった。
それからはあっという間の事だった。
今はもう何も見えない。
たまに聞こえてくる彼女の呼び声。
応えなきゃと思っていても、口ひとつ満足に動かない。
また会いたい。
「今度会えたら、また一緒に」
そう言わなきゃと思いながら、また気付くと彼女が名前を呼んでくれている。
「
そう伝えたいと思っている時、「験!今度も会えたらまた一緒になろう!」と涙声で言ってくれていた。
同じ気持ちで嬉しさの中、意識は遠のき、彼女の声すら、その周りにいる両親の声すら聞こえなくなってきた。
多分死ぬ。
これで終わるんだ。
貰えないって言ったのに、キスも何も全部くれた
貴重な17歳から18歳の青春を俺なんかにくれた。
申し訳なかった。
ありがたかった。
生まれ変わりがあるなら、また巡と一緒になりたい。
どんな障害もものともせずに、巡と幸せになりたい。
俺が猫で、巡が犬とか人間とかはやだな。
キチンと人間同士で添い遂げ幸せになりたい。
そう思った時「言ったな?」と聞こえてきた気がした。
直後、目の前が明るくなった。
死んだのに?
そうか、これがあの世かと思ったが違っていたのか、これがあの世なのか、あの世は俺の部屋だった。
「え?俺の部屋?」
思わず呟いてしまう。
てっきり雲の上で、小学生の時に死んだ爺ちゃん達が迎えにきてくれて、なんて考えていたのだが、あの世と言っても何も変わらないんだなと呟きながら部屋を見回すと、スマホは死ぬ前に使っていた奴の前の機種。
高校合格と同時に買ってもらって、買ってすぐに落としてケースにはバカでかい傷がついていて、巡と付き合って余命宣告された時、親が巡の機種変にあわせて、まだ使えるのに機種変してくれるまで使っていたスマホ。
リアルなのは傷もそのまま。
だがなんで最後の機種じゃなくてコイツなんだ?
と言うか、あの世ってスマホ使えるの?どこに繋がるんだ?
そんな気持ちで液晶を見ると、日付は2025年4月になっている。
ん?2年前?
死んだ正確な日はわからないが、いよいよ介助をして貰っても歩けなくなって入院したのは梅雨入りした頃だった。
困惑する中、階下からは母さんの「験!起きてるなら降りてきてご飯食べなさいよ!片付かないでしょ!」が聞こえてきて、すっ飛んで降りると母さんが朝食を作ってくれていた。
困惑は次第に混乱に変わり、「母さん、俺死んだんじゃ?」と聞くと、「寝ぼけてんの?高校合格して入学する前に死ぬわけないでしょ。お母さんの方がやる事多くて死にそうよ!」と返される。
死ぬ頃には「なんでアンタなのよ。死ぬなら私のが先なのに」と抱きついて泣いてくれていた。
それが、口癖のように言っていた「やる事多くて死にそう」に戻っていた。
俺はここで、本当にアレは未来の夢だったのかと思い始めると同時に、背中にチリつく痛みが走る。
この痛みを気のせい、たまたま、余裕と言って放置したら悪化して助からなかった。
夢じゃない。
夢だとしたら予知夢だ。
食事をする為に持った箸を置いて、「母さん、俺死ぬかも」と言うと、真剣な顔で冗談に聞こえなかった母さんは「え?」と聞き返してくる。
「背中が変なんだ。大久保クリニックって日曜日も診てくれてたよね?」
母さんは面食らいながら「え…えぇ」と言ってくれたので、「昨日の夜って夕飯何時だったっけ?」と聞きながら身支度をして歯だけ磨く。
「8時でしょ」と言われて時間を確認すると絶食は済んでいる。
大久保クリニックにはレントゲンもCTもある。
俺はとっとと乗り込む事にすると、身体がまだ動く今はこんなに身体が軽いのかと感動してしまった。
あの鉛がまとわりついて、沼地を進むような感覚は二度と味わいたくない。
大久保先生は見た感じ元気そうな俺を訝しむが、背中の痛み、痛みの具体的な位置、絶食は済んでいる事、レントゲンとCTを頼み、いきなりで信用されないので、死んだ時の病名を出して不安を訴えて、患部の位置を正確に伝える。
大久保先生から「何がある?なんでそんなに詳しい?」と聞き返されるが、覚えるくらい巡と言った。
2人で手を繋いで寝転がりながら、「患部が憎い」と言いながら、位置を暗唱していたら覚えた。
「値が張るぞ?」
「それでもやって欲しい。大人になったら両親にキチンと恩返しするからお願い」
「…出世払いをしてでも頼み込む。まあ伊達や酔狂ではなさそうだ。待つ事になるぞ?」
「それでもお願いします」
これにより午後まで待たされたが、午後には最低最悪、そして最高最良の検査結果が出てくれる。
大久保先生は出た結果を見て、「本当にあった。初期だ。すぐに取れば問題ない」と言ってくれる。
「助かった…。大久保先生が取ってくれます?」
「勿論だ。今度の水曜日、ここが午前診療の日の午後は、間蛭総合病院にいる。予約をねじ込むからそこで手配をしよう」
大久保先生は来年患部が見つかって手遅れだった時に、「助けたかった」と悔やんでくれていた。そこで終わりにしないで手配もしてくれたし最後まで会いにきてくれた。
だから頼めるなら大久保先生が良かった。
「あ、そうだ。いきなり言っても母さん達が信じないと思うから、電話頼めたりします?」
「任せなさい」
これにより母さん達はすっ飛んで大久保クリニックまで来て大久保先生に感謝を伝えてくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます