4ー21 モスクワ・2025年(現在)
ダーチャのクリーンルームで、SVR長官は言った。
「会談の正確な日時が掴めました」
ロシア大統領が疑り深そうに長官を見つめる。
「確かな情報なのか?」
「間違いなく」
「何が話し合われるかも探れたか?」
「1回目のネット会議は2日後で、ノムラ教授の最終見解が発表されます。そこで『千島アイヌ条約』を公表するか否かが討議され、方向性が統一されたのちに各国の調整に入ります。第2回はその1週間後で、おそらく国連での条約発表が決定されるでしょう」
「我が国への攻撃は揺るがない、ということか?」
「利害調整に手間取れば、分裂を促す余地は残っているかと」
「会議の内容はぜひ知らなければならんな。ハッキング可能か?」
その質問を待っていたかのように、長官が微笑む。
「ニュージーランドの回線が穴です」
「中国からの情報か? 奴らに借りを作ると、あとが面倒だぞ」
「いえ、今回の件では人民解放軍には頼っていません。何が起きるか、どう絡んでくるのか、そもそもこの件が中国の策動でないという確証もありません。中共は単純ですが、隠し事も多いので」
「では、どこからその情報を?」
「マット・ギャラガー」
大統領が息を呑んだ。
「奴を取り込めたのか⁉」
「セクフィールに協力していたこと自体、金が目当てですから。金になびく者は、金で転びます。よくご存知でしょう?」
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