とある喫茶店にて 回顧録
いくら喉が渇いていても、喫茶店なんて以前の俺なら入らなかっただろう。ましてやコンビニに行くような服装で。あんな地獄を経験してからというもの、他人の目も評価も些末なことにしか思えない。それにしたって周りにいる人間たちの、なにも考えていなそうな表情にはまだ慣れない。彼らに罪はない。ないと思う。ただ、彼らがなにも考えなかったから、あんなことになったのは事実だ。
バイトの女性が怪訝な顔をしながら俺のテーブルにクリームソーダを置いた。おっさんが一人でこんなもんを頼んでたら変だよな。久々に飲んだクリームソーダはおいしかった。
俺は無意識に首筋の傷跡を撫でていた。俺は公にはもう死んだ身だ。新しい戸籍は何とか手に入りそうだったが、タグを取り除くのに普通の病院を使うわけにはいかなかった。まさか自分が闇医者のお世話になるとは。いや、そもそも闇医者なんてものがこの世に存在していたとはね。シティーハンターの気分だ。
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