竹の塚トモ&竹の塚タカキのネットラジオ!
@take-radio
第1話
「皆さん、はじめまして!私、ネットラジオDJの竹の塚トモとっ!」
「…皆様、はじめまして。私、ネットラジオDJの竹の塚タカキです。」
「竹の塚ラジオをはじめますっ!」
「もう7月ですね!時が経つのは早いものですねえ」
「タカキさんは、もうあじさいはご覧になりました?」
「ほう?紫陽花が俳句では夏の季語である、と。豆知識をアピールしているのか?」
「やはり小説投稿サイトに挑む者だな…。気迫が伝わってくる。」
「今度のデートの事を考えていただけですって!タカキさんと一緒にあじさいを見に行こうかなって、思ってただけですよっ!」
「どうした?小説投稿サイトに小説未満小説を投稿するんだろ?」
「気後れしているのか?」
「…う…」
「文章の猛者達の集まる所…ですよ?」
「正社員雇用で、福利厚生社会保障の身分に繋がらなかったら、コーナーごと凍結でもいいぞ?ごっこ遊びだからリラックスだ、トモ」
「タカキさん!それは下心!下心!」
「そうですよ!ネットラジオネーム『未確認名称』さんからお便りが届いたんですよ!」
「『未確認名称』さんか…」
「いつもお便り頂き、ありがとうございます。妻とともに、これからも…たぶん…宜しくお願い致します。…たぶん」
「じゃあ、読みます!」
「『お久しぶりです。ネットラジオネーム未確認名称で失礼致します。2回目のネットラジオの投稿です。2回目です。
突然ですが、「SF」「ミステリー」「現代ドラマ」「ホラー」「詩•童話•その他」「異世界ファンタジー」「恋愛」「歴史•時代•伝記」の各ジャンルの小説ごっこに参加しませんか?
お二人をモチーフとした小説未満小説を味わってみたいです。
というわけで、よろしくっ!』」
「…タカキさん、手を握っていてくれます?」
「…もう少し、肩に身体を預けてもいい…かな…?」
「どんどん甘えてもいいぞ」
「昨夜、お前が自身の文章表現能力の限界のさらにその先に挑みたいと言っていたしな?」
「…憧れるのは…やめたいな…と…タカキさん?」
「……」
「そのリアクションは、不謹慎ですよっ!」
「…………お前は、自身の表現能力を文章に全て注ぎ込めばいいだけだ。……オレは、…信じているよ…。」
「目線を合わせて言って下さい…」
「ほら、目を閉じるんだ、トモ」
「…ん…」
「…ちゅ…っ」
「これか?このクリアファイルに入っているA4用紙が小説未満小説か?」
「…うん…」
「耳が真っ赤だ。ここにしてほしいか…?」
「あっ」
「…ちゅ…」
「…コーナー、進めて…いい?」
「…そうだな…私が読んだほうがいいだろう…」
「…ん…」
「今回の小説未満小説のジャンルは…ミステリー。」
「女性向けの、短い小説未満小説です。…んっ…。タカキさんと、私が恋人設定です…」
「タイトルは…『恋人は一番のミステリー』」
「7月に入ったばかりの季節。絵の具の原色に近い青の空。」
「原色の白に限りなく近くなってきたアイボリー色の雲。」
「木々は、黄緑色の新緑より、黒々とした深緑色の葉が多くなってきた季節。」
「気温も真夏を思わせるようになってきた頃の事である。」
「鉄筋コンクリートのマンションの3階の一室。純白に近いオフホワイトの壁紙のリビングで、淡いピンク色のワンピースを着た女性が、携帯電話の画面を操作している。」
「タカキさん!不思議な事があるんですよ!」
「トモは、ブラウンのダイニングテーブルの椅子に足をぶらぶらさせて座っていた。淡いピンク色のワンピースから、素足の色白さが際立つ。」
「私にとっては、トモが一番不思議に思われる。なぜ、休日の昼ご飯の後にすぐアイスを食べたがるんだ?」
「そう言って、答えたのは恋人のタカキだった。新海を思わせる濃紺のTシャツと原色に近い黒のデニムで、男性らしく腕組をしてソファに座っていた。」
「アイスにしたのは今週だけですよ?タカキさんが、急に会いたいって言うから…」
「少し上目遣いで、恥じらいを見せるトモ。」
「今回は申し訳ない。急に時間ができたからだ。次回からは、事前に約束をしておく。」
「タカキは、トモの変化を見逃さなかった。」
「だが、アイスの答えになってないが?」
「少し笑みを浮かべるタカキ。少しいじわるしたくなる気分だった。」
「それは…う…」
「さらに恥じらうトモ。」
「自然とタカキは、トモの白い生足に目を向けている自分を自覚していた。」
「ソファに座って、話さないか?」
「焦るトモ。」
「コーヒー淹れてきます!ちょっと待っててください!」
「トモは急いで、キッチンに向かう。」
「それで?不思議な事とは一体なんだ?」
「タカキは、少し心配な様子で言った。」
「タカキさんが想像しているような事じゃないですよ。」
「”コサの団”関連の事があったらすぐに相談だぞ?根深い問題は、根気よく対処しなくてはいけないのだからな。氣を抜くなよ。」
「タカキの目が真剣な、かつ鋭さを帯びる。」
「トモは、タカキが心配してくれるのが嬉しかった。だが、同時にタカキの唇から目を逸らせない自分を自覚してしまった。」
「実害があるわけじゃないので、大丈夫ですよ。」
「トモは、内心、タカキに話した事を少し後悔し始めていた。心配させたくなかった。」
「いいから話せ。ソファに来い。」
「コーヒーとアイス、タカキさんの分はこっちですよ。」
「やっとソファに並んで座る恋人のふたり。」
「トモは不安そうだが、あえて明るく言ってみた。」
「私の閲覧プライベートのエックスアカウントに、時々、フォローリクエストがあるんですよ」
「…ん?SNSの話か?…そうだな…」
「視線が、宙を泳ぎ始めたタカキは、コーヒーを一口飲んだ。」
「鍵アカウントで、閲覧専用にしているのに、どうしてでしょうか?ファッションとか旅行とかグルメとかしか見ないのですが」
「トモは、自分で言っていて、不安になった。」
「…ん…ああ、問題といえば…」
「さらにコーヒーを一口飲むタカキ。」
「“コサの団“がここまでターゲットにしてくるのでしょうか?」
「表情が曇るトモ。」
「それは違うぞ!”コサの団”だって?」
「タカキは大きな声になってしまった。」
「…タカキさん…」
「いや、良く見てみろ?普通のどこにでもいる一般人からばかりじゃないか?」
「そうですけど…いえ!私の他のプライベートのアカウントには、…フォロワーさんは、ゼロなんですよ…?」
「…ゼロでいいじゃないか!」
「さらに大きな声になってしまったタカキ。」
「普通の…アニメとか…漫画とか…ファッションも好きそうな一般人じゃないか?」
「友達がほしいって、言ってただろう?」
「柔らかい表情のタカキ。」
「そういう意味じゃ…ないけど…」
「タカキさんが何かしたんですか!?私のフォロワーを増やしたんですかっ?!」
「目を見張り、驚くトモ。少し耳が赤くなっている。」
「トモ!」
「私には、愛の技術がある…それも成熟したものだ」
「その技術を持ってしても、分からないこともある、いいか?分からない事もあるんだ…」
「言い淀むタカキ。その耳は、少し赤い。トモの事になると興奮してしまうのが自覚できずにいた…まだ。」
「ふふっ、タカキさん、可愛いですね」
「嬉しさを隠しきれないトモ。少女のように口元を隠し笑う。」
「言っている事が、自分でも分からなくなるな、ははっ」
「珍しく照れるタカキ。」
「実は、ミステリー小説を書くのが好きなんだ。お前にミステリーを仕掛けたくなってな。」
「初めて、自分の事を話してくれましたね…?」
「名探偵には敵わないな」
「トモは、居住まいを正した。姿勢を良くした。」
「タカキさん、お話があります。」
「…出会って3か月目だし…そろそろ、同棲とか、考えてます…?」
「少しでも、一緒にいる時間が欲しくて…アイスとかケーキとか…毎週用意していたんです…」
「驚くタカキ。ミステリーの謎は…溶けた。食べようとしていたアイスと共に。」
「トモ!私は一緒に出掛けたいと思っていたんだ!すまない!すぐに出掛けたくてイライラしてしまったかもしれない。食べている時間が勿体ないかと思い込んでいた。」
「タカキは居住まいを正した。姿勢を良くした。」
「オレの方から言わせてくれ…お前とどのような時間でも共に過ごしたいんだ。…同棲してもいいか?」
「…………」
「………」
「タカキさん!評価をお願いします!」
「評価は、………………………………………、うん!」
「なんで、顔が赤いのですか!」
「タカキさん!小説の世界から帰って来て下さい!」
「タカキさんっ!」
「では!竹の塚ラジオは、今回はここまでです。また次回お会いしましょう。竹の塚タカキでしたっ!」
「タカキさん?!」
「う…うん!また次回ですっ!タカキさん!?う…うん?!」
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