第2話
パーティーが解散し、他のメンバーが各々の場所へと去って行った後も俺は相変わらず冒険者ギルドに入り浸り、日々孤独にクエストをこなす日々を送っていた。
「はぁー……!」
にしても魔物退治も採取依頼も一人だとめちゃくちゃ疲れる。ギルドに併設されている冒険者食堂の席で食事を終えた後もテーブルに突っ伏しながら全力でため息をつく。そもそも俺
「後十二年くらいはあのまま続けるつもりだったのに……どうしてこんなことに……」
やばい。なんか泣けてきた。俺、いつから間違ったんだろう。最初からか。そうだろうな、きっと。
「ねえアル、ちょっと隣いいかしら?」
「ん? ああ……」
頭を抱えていたらギルドの受付嬢……のライラが皿が乗ったトレーを持ちながら話しかけてきた。俺が目をこすりながら適当に返事すると「ありがと」と一言言って三つ編みを揺らしながら隣に座ってきた。
「仕事はいいのか?」
「休憩時間中よ」
「そうか」
「いただきます」
ライラはそういうと焼魚定食をもぐもぐと食べ始めた。相変わらず魚が好きな奴だ。にしても他に席は空いてるのになんで今になって俺の隣なんかに……。
「元気……ではないみたいね」
「まさかソロがこんなに辛いとは思わなかったんだけど」
「貴方は本来回復役だものね……。それでもよく二ヶ月も頑張ってると思うわ」
「ゴリゴリの前衛だった奴に言われると嫌味にしか聞こえないぞ」
「本当の事よ。後衛の子がソロになっちゃうと皆すぐに諦めちゃうんだから」
ライラはスープを一口飲んだ後「それでね」と言った。クエストの斡旋か?
「実は、貴方に紹介したい求人があるの」
「求人って……クエストじゃなく?」
「詳しい話は休憩が終わってから言うつもりだけど……ノコエンシスにある私立の魔法学校で先生になってくれる人を至急で探しているみたいなの」
「至急で?」
「ちょっと訳ありみたいでね。国立魔法学校を首席で卒業した貴方なら向いてると思って」
教師……教師ね……。冒険者を続けることしか頭になかったから、そんな事考えてもいなかった。しかしだからといってこのまま冒険者でいられるかというと自信はない。今は何とかやっていけているとしても、年を取ってやっていけなくなった瞬間、文字通り人生が終わる。そんな気がしてならない。
俺もあいつらと同じようで、あいつらとは違う道を進まなければならない。その決断をする日が、来たということか。
「話ぐらいは聞いてやるよ」
俺はやたらと旨そうに魚を食べているライラの三つ編みを指でぴょこぴょこ弾きながら、そう返事をした。
「あ、ちなみにそこ女子校だから。そういう事するとすぐ嫌われるわよ?」
「マジ?」
なんだそこは。
……ちょっと行きたくなっちゃったじゃねえか。
「……そうニヤけ面されると何か複雑ね……色々と」
ジト目で見つめてくるライラの視線が深々と突き刺さり、浮足立った心がすぐさま叩き落された。
「まったく。私に初――」
「それ以上言うな!」
あの頃はお互い若かったなあと、ついでに思い出させられたのだった。
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