1F ユーティリティ・エリア外周

【24時間自販機コーナー】全ての人に通ずる場所

 この会場の一階外周部、道路に面した区画には華やかな授賞式会場に似つかわしくない、様々な自販機を並べた世俗的な空間がある。


 売上重視であるなら、もっと目立つ場所に設ければ良さそうなものだが、何故か目立たない入り口と分かりにくい導線によってこの場所は構成されていた。

 会場の閉館時間であっても、この区画だけは二十四時間利用できる。時代を反映し、不夜城のように煌々と明かりを灯しているわけではなく、センサーライトで客が来れば照明が点る節電仕様だ。夜間の目印は、誘蛾灯のような控えめな看板だけ。見ようによっては個人経営のスナックのようでもある。


 日中と夜間で、これほど印象の変わる場所も珍しいだろう。本会場との行き来のできる通路が開放されている日中には、文字通り来場者の喉を潤す憩いの場所に。

 閉館時間には、行き場のない若者や深夜労働の中年が、一時の屋根と休息を求めて立ち寄る場所となる。


 人間模様が交錯するこの場所は、この会場の設計者の心情が微かに見える場所でもある。

 立派な飲食エリアまで備えるこの会場に、何故こんな場所が用意されているのか、その真意は謎であるが便利なことに変わりはない。


 たとえ文学に興味の無い者であったとしてもも、この場所だけは常に万人に向けて開かれている。



 ◯ 大切なあの子  /  太刀山いめ

https://kakuyomu.jp/works/16818093082061248412


 ◯ 香具山先輩は結果オーライ  /  小日向葵https://kakuyomu.jp/works/16818093082074664473


 ◯ コインスナック354  /  スロ男

https://kakuyomu.jp/works/16818093082081898424



 自主企画

【自動販売機】往き交い、すれ違う場所

https://kakuyomu.jp/user_events/16818093082042184846

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