雨はまだ止まない


 核の場所を特定し、あとは何度か殴って破壊するだけの簡単なお仕事。


 簡単なお仕事(激ムズ難易度)。


 こちらはとにかく一発も攻撃を喰らってはならない状況でありながら、相手は広範囲攻撃を何度も繰り出して当たった瞬間勝ちクソゲーの押しつけができる。


 あまりにもクソゲーすぎるが、いつもの事だ。


 当たったら負け。防具なしでG級個体を相手にいしてるのと同じ同じ。


 ........いや、そう考えると難易度えぐいな。


 昔のモンハンをソロ裸ノーダメ縛りやってるって考えたら、アホじゃん。


 アホじゃん(2回目)。


「チッ、もう学習されたか。攻撃パターンを変えてきやがった」

「■■■■■!!」


 俺をぺしゃんこにするパンチを懐に入り込んで避けることにより、倒れ込みを誘発しようとした俺であったが、中ボス雨は既に学習しているらしく倒れ込みをしてこなくなった。


 核の場所が判明してから約5分ほどが経過。


 既に3回弾丸をぶち込んでいるが、それでもまだ倒れてくれない。


 幸いなことに、核が体内で動き回るタイプじゃない。場所が分かれば、あとはとにかくそこを狙って攻撃を仕掛けるだけである。


「下。からの、首狙い。分かってんだよ!!お前の攻撃はなぁ?!」

「■■■■!!」


 雨は倒れ込みを辞めた代わりに、地面の雨を動かして捕縛に切り替えてきた。


 が、足元で蠢く不自然な雨を俺が探知できないわけが無い。


 その場から飛び退いて一撃を避けると、雨はそれに合わせて首を狙った斬撃。


 これに当たると一撃死。


 俺が最も警戒している攻撃なので、当然当たらない。


 警戒していて、なおかつ視界も多少は確保出来ているのだ。


 死角から飛んで来ようが、ある程度は対処できるだけの実力はある。


 当たらんよ!!


「痺れろ」

「■■■■!!」


 攻撃をかわし、その合間に弾丸を打ち込む。


 今回は全身の動きを僅かに止めるために、適当な場所に向かって放った。


 弾丸が雨の中に吸い込まれて、中ボス雨が僅かにスタン。


 その間に、立ち位置が微妙になっていたので修正する。


 この戦いの中で最も注意するべきは、ジャンピング倒れ込みだ。


 範囲が広く、当たれば即死。


 これ以外は割と適当に動いていても避けられるが、これだけはちゃんとした立ち位置を撮ってないと食らってしまう。


 俺が立ち回りを意識しているのは、ほぼこいつの存在のせいである。


 オメちゃんと同じく、あるだけで警戒しないといけないクソ技。


 さっさと削除してどうぞ。


「チッ、もう復帰しやがった。こっちの攻撃ターンを寄越せよ」

「■■■!!(がんばれ!!)」


 頑張ってんだよ既によ。それと、オメちゃん、ちょくちょく薙ぎ払う手に当たって吹き飛ばされてキャッキャ遊ぶのやめてくれない?


 こっちは真剣勝負なんだよね。


 と言うか、なんでこいつはこんな化け物みたいな一撃を食らってキャッキャできるんですかね?


 基本スペックが違いすぎて涙が出そうだ。


 涙が出ても雨に流されてしまうが。


「■■■■!!」

「派生パターンがなぎ払いの確定行動。ここにいると、確実にやってくるのは確認済み」


 今度は両手台パン。


 これは攻撃チャンスである。


 俺はあえて次の攻撃が当たりやすい位置に移動すると、その後の派生技を誘発させる。


 両手台パンの直後、その腕の横にいると確実に薙ぎ払ってくる。


 そりゃ当てやすいもんね。


 やり得だと思うだろう。


 しかし、俺からすれば確定行動ってだけでありがたい。


 そこを基盤に戦術を立てやすくなるからね。


「切り替え、双剣突撃!!」


 武器を切り替えて、双剣突撃で空中に退避。その直後に腕が襲いかかるものの、俺には当たらない。


 そして、即座に武器を切り替えて銃のフルコンボをぶつける。


 クールタイムと魔力調整は完璧だ。


「ダブルバレット、トリプルバレット、クイックリロード、フルバレットファイア!!」


 対単体最高火力。


 さぁ、これで4度目の核への攻撃。


 きっちり核を捉えた。


 さてあと何回ぶん殴ればお前は死んでくれるんだ?


「■■■■■!!」

「一応最高記録なんだけどね」


 まだまだ元気そうでなによりだよ。それじゃ、クイックリロードのクールタイムが上がるまで逃げ続けないとな。


 双剣で突っ込んでもいいと言えばいいのだが、やはりどうしても限界はある。


 双剣だと雨に対しての武器相性があまり良くないのか、核を攻撃する際に体内部分にまで突っ込む必要が出てくるのだ。


 そうなれば、再生時に巻き込まれて死ぬ可能性がある。


 実際に試してはないが、ワンチャンそれで死ぬとなれば試すのは少々怖いのだ。


 多分大丈夫だとは思うんだけどね。だからといって、無理してやらたい訳ではない。


 今のところ安定しているのだ。このまま確実に行こうぜ。


 という訳で、ちょくちょく牽制しながら攻撃を避け続ける。


 そしてクイックリロードがのクールタイムが上がったので、手動リロードを挟んで再び攻撃のチャンスを待つ。


 チャンスはすぐにやってきた。


「■■■■!!」

「また台パン。当たり個体か?切り替え、双剣突撃!!」


 空に飛び上がり、またしても肩を狙おうとしたその瞬間。


 横に薙ぎ払った雨の腕が俺の横に迫ってきていた。


 ........は?なんで?


 ........そうか。こいつ、俺が確実にこの場所に飛ぶことを学習して、薙ぎ払ったあとの行動をちゃんと考えたのか!!


 学習するんだから当たり前といえば当たり前。


 しかし、どうしてもゲーム感覚が抜けない俺からすれば盲点。


 ここで決め切るしかない。


「バン!!ダブルバレット、トリプルバレット、クイックリロード、フルバレットファイア!!」


 最後の望みをかけた一斉射撃。


 全弾を打ちつくし、雨の核を攻撃する。


「ゴボッ!!」


 その直後、俺は水の中に飲まれた。


 捕まった。マズイ、死ぬ。


 死を覚悟したその時である。


 雨の体は一気に崩れ去り、そのまま雨が地面に落ちる。


 俺もその中に巻き込まれたが、幸いなことに水が緩衝材になってくれたのか怪我はなかった。


 ザパーン!!と凄まじい音が鳴り響き、ずぶ濡れの中体を起こす。


 何が起きたのかって?簡単だ。


「ごホッゴホッゴホッ........ハハッ、弾けやがった」


 雨の支配者を守護する者は死んだのだ。


 無惨にも飛び散る水の残骸。


 そして、地面に落ちているのは割れた少し大きめの結晶。


 俺の勝ちだ。


「■■■■■!!(かったかった!!)」

「■■■■■!!(ようやく勝てたな!!)」

「■■■!!■■■■■!!(やったー!!勝ちましたー!!)」


 そして俺が勝利したことを喜ぶ旧支配者たち。


 小さいマスコットの姿でワイワイ喜ばれると、ちょっと可愛く見える不思議。


 おかしいな。オメちゃんはともかく、タコさんとラーちゃんはで会った瞬間にSAN値チェックが入るレベルなのに。


「........はぁ。ようやく勝った........疲れた........」


 ここでようやく勝ったことを自覚した俺は、ゆっくりと地面に倒れ込む。


 泥で汚れるとか、そういうのはもう気にしてなかった。


 どうせ、このステージが終われば服は乾くし綺麗さっぱりになるからね。


 引き継がれるのは、傷のみである。


 傷も癒してくれてええんやで?


「あー........疲れた。でもまだ来れで中ボスなんだよねぇ。先が長すぎるんだけど」

「■■■■(それはがんばるしかない)」

「■■■■■?(どうせクリアするまでやるのだろう?)」

「当たり前だよね。ここでリタイアしたら、負けた気になるし」


 俺はそう言うと、空を見上げる。


 あとラスボスが待ち構えているらしいんですけど、この調子で勝てるんですかね?


 雨はまだ止む気配がない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る