言葉と詩、幾つかの事実

シナミカナ

もしも僕が蝉なら

僕が蝉なら


夏を楽しみに待ち

綿密に計画するでしょう


来たるべき日に

地中でもがき

これに全てを賭けるかのように足掻き

他のオスよりも早く地上へと這い上がり

脱皮し、成虫となるでしょう


その速さはずば抜けており

私のライバルなどいない状態で

私はメスを呼ぶため鳴くでしょう


そして数日して気付きます

「あまりに早く出てきたせいでメスがいない」


ライバルがいなければ

ターゲットもいないのです


どうして何も考えずに

早いことが良いことだと思ったのか

どうして周りに合わせなかったのか

僕は悔やみ鳴くことを止め

すぐに果てるでしょう


少し遅れて大勢の仲間が地上へと這い上がり

地面に斃れる私を見て言うでしょう

「なんて意気地がないやつだ」

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