幼女
「ビビったぁ」
ふぅ、と息を吐いた。
何故こんな動作をしたと言えば、紛れもなくそれは一難去ったことには他ならないのだが。
とはいうもののなんだか思うところはあった。
何があったかと言えば、俺が遭遇した外人の人がすなわち一難そのものであるのだが、まあ、それを対処するために俺は治安維持組織に通報をしたのだ。
いや、別に所かまわず話しかけられただけで不審者だと騒ぎ立てるようなことはしないが、困ったことに俺は見てしまったのだ。
何をと言えば異能である。
あの男が表情を変えたタイミング、その次の瞬間、男が見ていた奥、つまり俺の後ろで何かが落ちた音がした。
そして振り返れば、それは紛れもなく人であった。
だが、それを見て即座にあの西洋人のせいにするほど俺も短絡的ではない。
それでも、異常だったのだ。
落ちて来た男たちは尋常でないほどにおびえていた。
そしてその男たちが見ていたのが、俺、ではなく、その向こうにいる西洋人だった。
と、なれば、西洋人の男の人が何かをしたと思うのも仕方のない事だろう。
すぐに怯えた男たちは意識を失ってしまった中、俺は思い出したのだ。
と、言うより、よく考えてみれば初めから怪しかった。
強い奴を探していると言うから、何というか少なくとも正々堂々と戦いを仕掛けるようなタイプだと思っていたが、そうではないのかもしれない。
彼の言う強い奴だとわかれば所かまわず襲いだすと言う可能性もあった。
だから、一瞬動きを止めていた隙をついて俺は治安維持組織に通報した。
丁度と言うかなんというか、ここに来るまでの間に俺は治安維持組織を見かけていてもしかするとすぐに来てくれるのではないかと思ったのだが、その思惑通りに事が進んだのだった。
そして、思うところと言うか、気がかりと言うか、そのうちの一つはここにあった。
何かと言えば、俺は通報した後、逃げたのだ。
何故かと聞かれれば、そりゃあ異能犯罪を行っている可能性のある男の前にずっと立って見張っているわけにもいかない。
それに隙を見せたのだから、そのうちに離れるのは普通の事であったと言えよう。
で、なのだが、その後大丈夫そうなら現場に戻って状況の説明をしようかななんておもっていたのだが、どうにもそれらしき人物はいなく。
かといって、俺は治安維持組織に再度連絡することも出来なかった。
正直先日の一件が気になって、あまり関わりたいと思えないのだ。
先日の一件と言うのは、もしかしなくても陽炎のことに他ならないが。
あの時から異能倶楽部は異能犯罪組織として認知されてしまっている。
しかも、勘違いは治安維持組織にまで浸透しているようで、下手したら冤罪で捕まってしまう気がしてならないのだ。
なまじ、証拠の残らない異能と言う力があるだけに、一度疑いを向けられれば逃れるのもそう簡単ではない。
まあ、正直、戻った時には落ちて来た男の人たちもいなかったから、その人たちが色々と話してくれていることを祈ろう。
それともう一つ気になる要因があって、それは根本としてあの外人が本当に異能犯罪者ではない可能性もあると言う事であるが、実は男たちが落ちてきたのは偶々だったとか。
まあ、それでも恐らくその場から逃げようとしていたようだから、全くの無罪と言う事もなさそうだけど。
そんなこんなで色々と引っ掛かることがある俺だが取りあえず家に帰ることにした。
あと、道中で幼女を拾った。
は?
◆
幼女を拾ったと言うのは少し語弊があるかもしれない。
いや、大分あるだろう。
まあ、とにかく俺は家に帰る途中で幼女と出会った。
「ん?」
始めに異変を感じたのは、服を引っ張られた時だった。
ピンと服が張る前に、何かに掴まれた感覚に俺は立ちどまり、同時に背後を確かめた。
とは言え、俺が求めたその原因となるそれを視界に収めることは出来なかった。
どうしたとことかと、首を傾げそうとした時、俺は気付いた。
視界の端、と言うか、下の方に小さな頭が見えた。
つまるところ、俺の進行を妨げる人物は俺より小さいと言う事だった。
これには俺も驚いた。
勝手な先入観があったのだ。
俺の今の身長は136cmであり、同年代と過ごすにあたっては俺より低い人間などいない。
故に、俺の顔より低いうちに頭があるなどとは考えることが出来なかった。
だが、かろうじて気付いた俺は視界の中にそれを入れるように顔を下に動かした。
うん。幼女だ。
自称幼女である俺が言うのだから間違いない。
まあ、それはともかくとして小学生だろうか。
俺の身長で小学生と同じくらいらしいので、きっとこの子もそうなのだろうか。
そんなことを思ってみれば、金色の髪が目を惹いた。
そして、目があう。
上目がちに俺を見る目は、青く、それでいて造形からは日本人的な血は感じなかった。
西洋人。
そう表現すれば、先ほどの男が頭に浮かんでくるが、それはともかくとして紛れもなくこの女の子は西洋系の血が入った顔立ちをしていた。
だが、そんなことも一瞬。
俺がその手から逃れようと軽くその場を離れるようにして距離を取ろうとすれば、女の子の手は強く俺の服を掴んだ。
「いや、あの、離してほしいんだけど」
西洋的な顔立ちと言えど、日本語が操れないわけじゃない。
と言うか、通じなきゃ俺は詰む。
そう思って、何とか通じてくれと願いながらそう言った。
だが、帰って来たのは英語っぽい何かだった。
「うーん。わからん」
そんなことを思って少し、俺は色々と試しては見たのだが、どうすることも出来なく。
やっとの思いで離れてもらうことに成功した。
そして、家に帰ったのだが、鍵をかけて振り向いた俺の後ろにはその子がいた。
だから、別に拾ってきたわけじゃないのだが、結果的にはあまり変わらない結果となったのだった。
英語分からないし、簡単なコミュニケーションも取れない。
そんな風に悩んでいた時、天使が舞い降りた。
つまり、ツムギちゃんの帰還である。
「リオ君。遅くなってごめんね」
そう言ってツムギちゃんは入って来た。
そして俺はツムギちゃんに泣きついた。
「ううん。委員会の用事だったんだから仕方ないよ。それよりお願いがあるんだけど」
俺は一通りのことをツムギちゃんに話すことにした。
と言うか、俺では頭も英語力も足りない。
「何から話せばいいかな。えっと、取りあえずその子の話を聞いてほしいんだけど」
そんなことを言えば、彼女は二つ返事で承諾してくれた。
何から何まで申し訳ないと思いつつ、俺は労いの意味も込めてお茶を淹れてくることにした。
あっ、高いとこのもの取れねぇや。
よく考えてみれば、ツムギちゃんが俺の家に来るようになってからと言うもの、色々としてくれるので結構頼っているのだが、高いところにあるものは使っていなかった。
と言うか、ツムギちゃんに頼り過ぎでは?
人間としてダメでは?
お茶も淹れられないって……
人知れず俺は膝を地面についた。
◆
「──で、今日からこの子はここに泊まることになったと…………え?」
金髪幼女との対話を試みた結果、ツムギちゃんが下した判断はこのようなものだった。
訳が分からない。
第一、親とか探すのが普通ではないのだろうか。と言うか、例えば、身寄りがないとしても警察に行くのが妥当だと思うんだけど。
なんて、思うものの、俺より遥かに頭のいいツムギちゃんがそれを思いつかないわけがない。
きっと、何かそれが出来ない理由、あるいは、するとよくない理由があるのだろう。
正直、俺にはさっぱりなので、もしツムギちゃんの判断が間違っていて誘拐、監禁の罪に問われないことを願うしかない。
「いや、でも、俺、お世話とか出来ないよ」
「それは問題ないよ。私も一緒に住むから」
「ふぇ?」
そんな言葉に俺は変な声を漏らした。
いや、仕方ないだろう。
だって、今の言葉が意味することは、美少女巨乳幼馴染(聖人)のツムギちゃんが俺と一つ屋根のしたで暮らすと言う事で…………あれ?いつもとそんなに変わらないような。
「だからこそ、家じゃなくてリオ君の部屋にこの子を置くんだし」
「え?なんか言った?」
「ううん。何でもないよ」
俺が必死に頭を回している最中にツムギちゃんから発せられた言葉を聞き取れなかった。
聞き返せば、何でもないというのならさして大した事でもないのだろう。
まあ、そんなこんなで、俺と幼女とツムギちゃんと言うよくわからない組み合わせの共同生活が始まった。
共同と言っても、俺はあんまり役に立たないため、色々とツムギちゃんにやって貰って申し訳ないが。
出来るだけ手伝おうと誓って、俺はツムギちゃんに高いところにあるお茶っぱを取ってと頼んだ。
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