【短歌集】

cover No.31-40

　朝ぼらけありあけの月と見るまでに吉野の里に降れる白雪

夜明けと思い障子を引いたほうほうとかがやくものは白雪だった

　山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬもみぢなりけり

太陽を遮断された渓流の流れることができない紅葉

　ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ

盛大なあくびをさそう春の日にそんなに急いでどこに行くんだい？

　誰をかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに

長生きをしてるんですからと松にすら言われてしまって岩戸を閉ざす

　人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける

梅の香は一瞬のふりして永遠の現在形をとどめているね

　夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月宿るらむ

夏の夜は短い月は雲の宿を無事に取ることができたのだろうか

　白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける

糸が切れ落ちるしかない真珠めく風に散らされる草の上の露

　忘らるる身をば思はず誓ひてし人の命も惜しくもあるかな

消えていくわたしの身（み）より裁かれるあなたの身体を心配しています

　浅茅生の小野の篠原忍ぶれどあまりてなどか人の恋しき

浅茅生の小野の篠原忍ばせた心のかわりにのたうちまわる

　忍ぶれど色に出でにけりわが恋は物や思ふと人の問ふまで

黙しても咲いてしまった向日葵へ「恋してるの？」と問う人の顔

＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝

百人一首第31－40番を題材につくりました。

読んでいただきありがとうございます。