―秋の田のかりほの庵のとまをあらみ我が衣手は露にぬれつつ

眠らずに闇を見ている人の袖はほつれのさきまで濡れている

―春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山

もう夏か風を眺める香具山のしみひとつない輝きを想う

―あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかもねむ

ながいなぁきみがいないと月影が照らし出すのはぼくの腕だけ

―田子の浦にうち出でてみれば白妙の富士のたかねに雪は降りつつ

表情をシルクで隠す霊峰に向かって雪がうまれつづける

―奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞くときぞ秋は悲しき

紅葉だけが彷徨う鹿の鳴き声に耳を傾ける夕暮れた山

―かささぎの渡せる橋におく霜の白きを見れば夜ぞ更けにける

天上の純愛の橋のホワイトが夜の寒さを忘れさせてくれる

―天の原ふりさけみれば春日なる三笠の山にいでし月かも

おなじ月こっちで見てもおなじ月それでもなぜかむこうで見たい

―わが庵は都のたつみしかぞ住む世をうぢ山と人はいふなり

山奥のこころしずかな生活はアイツ堕ちたと言えるものらしい

―花の色は移りにけりないたづらに我が身世にふるながめせしまに

さくらからさくらの色をわたしからわたしの色を奪っていく雨

―これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関

貴賤なく別れの涙のひと粒のまんなかにあるのは出会いの輝き

＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝

百人一首第1-10番を題材につくりました。

読んでいただきありがとうございます。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい