マーダ『森の護り人・ファウナ』-ローダ第零章-
狼駄
《プロローグ》 憧れた黒髪を結いし女性との邂逅
───西暦2140年。イタリア西南の地中海に浮かぶシチリア。
特に人工知能。AIが人の代わりにあらゆる分野で活躍し、
しかも結局人々は地球温暖化を止める処か、自分達の
格差………。
一部の富裕層達は、そんな地球ですら生きられる医療に
そういう違った意味で
西暦という言葉。最早ただの記号と化し、
「フハハハハハッ!! 見るが良いこの様をっ!! これが人であるこの俺一人が起こした奇跡よっ! ………なんと美しきことか」
シチリアの火山よりも上空へ上がった金髪の男が地上の
火山の噴火すら
恐らくこの火山は永遠に失われ、シチリア島の形そのものすら、変えてしまうことだろう。
「………クッ! な、何て馬鹿な真似を!」
そこで声高らかに笑うあの
自分も宙で静止しつつ、己の無力を大いに
「こんなことをしたかった、させたかった訳では決してないっ!」
細見の剣を引き抜いて、その愚かの
その編み込まれた長い長い黒髪と、腕に巻き付く帯状の
この女性の本質は踊り子の方であり、恐らく剣の方は
緑の瞳が
「こんなことをさせたくなかった? 何を言っているのかまるで判らんっ! これは貴様が俺に与えし力だろうにっ!」
「グッ!?」
斬り結び、さらに軽々と弾かれてしまう女の剣。刃を伝わる
「アーハッハッハッ!! 貴様が俺をこんな風に仕立てたっ! だからと言ってお前に従う義理なぞないわッ!
男が情け容赦なくその剣を
向かっていっておきながら、身を守るのが精一杯だと思い知らされる。
「………この辺りには俺を
戦いの最中に在りながら、なおも地上の様子に酔いしれる金髪の男。ビンテージワインをグラスの中で転がす様な異常たるその思考。
人の欲望にまみれた塊がこの男の
「………ムッ? 何だあの娘は?」
そんな地獄絵図から広がりゆく森林火災の最中に、
───一体何を
この大焦熱地獄よりも
「ええいッ! 放ってなどおけるかッ!」
黒髪を結った女が男を捨て置き、少女へと向かい空を駆ける。人がこれ程まで空を飛べるのか。空気を切り裂く音すら聞こえる。
普段なら老若男女関係なく、己の自由としているのに、何故こうも
「わわっ!? ぶっ!?」
一気に迫り来る女性に片腕で拾い上げられ、顔を胸へと押し付けられた少女。金髪と蒼き瞳が女の胸に埋もれてゆく。
「馬鹿か貴様ッ! そこで一体何をしていた!」
勝手に救出した女が、またも身勝手な質問を容赦なく浴びせ掛ける。この問い掛けに少女は、胸の奥底にて小さな口をモゴモゴさせつつ幼き本音を此処に
「………き、
「は、はぁっ!?」
───不覚。
ただの幼子に綺麗と
綺麗………。そんな
それは同時にこの幼子が、この
独りの女と幼き少女…………。二人の人生の歯車を大いに狂わせたこの出来事。
シチリアという島の形状が変化する事件とは、比較する気にもなれぬ程の
よもや世界を歪ませる物語の1ページになろうとは………。当人達すら気が付かなかった。
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