第18話

「コードルルー」通信が入る。「今どこにいる?」

「今は」ギルド員は足元遥か彼方に広がる地形を見下ろしつつ答える。「サハラの目のところだ」

「ゲラダヒヒは捕まえたか?」質問が続く。

「いや……まだだ」ルルーは声を低くして答えた。「さすがにすぐには見つからない」これは言い訳に聞こえるだろうか? みっともない発言か? 思考が渦巻く。

「そうか」予測に反して反応は淡々としたものだった。「モンスターに気をつけろよ」

「──了解」ルルーは不自然な間が開かぬことに留意し、卒なく答えた。

 通信はそれきりだ。

 自分が今いる位置と、成果についての進捗状況。

 彼らが欲するのはその情報だけだ。逆にこちらが何らかの情報を欲したとして、彼らは──まあ、差し障りのない範囲内でそれを与えてくれはするだろう。

 こちらの任務、業務に必要であると判断される限りにおいては。

 例えばそう、この地帯における気候の変動予測はどうなっているのか? だとか、他の地帯での進捗状況はどうなっているか? だとか。

 ギルド内に何か新しい製品──武器や防具、あるいは薬品など──が持ち込まれたか? というようなことにも答えてもらえるかも知れない。参考情報として。

 ギルドの酒場に何か新しい酒が仕入れられたか? についてはどうだろう。参考情報として──まあ、相手の通信員の性質とセンスによっては、もしかしたら教えてもらえるかも知れない。

 ふふふ、とルルーは少し笑い、笑った後で自分が笑ったことに気づいた。ああ、幸福のベクトルだ。少しほっとする。

 ギルド員に限らず生きている者は、何かを思い込むことで幸福になれる。だが何かを考え込むことで、逆に不幸になる。あらゆる生き物を見ていて導き出される法則だ。

 つまり今自分は余計なことを考え込んではいけない。さくっとやるべきことをやって、何かをふと思ったならそれを信じてそうなのだと思い込んで、時間の上を進んで行くだけだ。

 余計なこと──ルルーは自分が何に対しそう思っているのか、情報解析機構の片隅で理解していた。

 レイヴン、だったか──あの醜い、反美的クリーチャーとその一行。

 地球産生物でもないくせに、でかい面して──なりは極小のホコリにすぎないが──のし歩いていやがる連中だ。

 無論ギルドには報告済で、対応については指示待ちの段階だ。とはいえ、恐らくその指示が届く頃にはもう、あいつらは地球から脱出しお家に帰っているだろうけれども。

 ルルーは気配を感じて動きを制御した。来たか、ゲラダヒヒ?

 手に入れたばかりの最新鋭装甲で対峙してやる。

 それがお前らモンスターに取って幸福か不幸かについては、問答無用だ。

 これは我々ギルドの執り行う任務だ。

 つまり、正義の行いだ。そういうことだからだ。

 外殻機構の赤い光が、二つ同時に強い光輝を放った。

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