第15話 決戦! 首無し騎士

 フレイムファントムを蹴散らした俺はふらつく体を剣を地面に突き刺して支えた。

 敵から攻撃を受けたわけじゃないのに、ふらついているのは先手の一撃のせいである。

 慣れないと乱発はできそうもなかった。


「グゥォォォォ!」


 デュラハンが声を上げると、再びフレイムファントムが召喚される。

 数が減れば無制限に出てくるのであれば厄介なことだ。


「セリオスさん、作戦はどうする?」

「フレイムファントムには炎属性魔法は効かないので、魔術師チームはデュラハンへの攻撃くらいだな……君らが来てくれたので、デュラハンへ向かってもらいたい。フレイムファントムは我々神殿騎士が受け持とう」


 セリオスが神殿騎士達に指示をだして、デュラハンを囲うように展開しながらも、それぞれがフレイムファントムと戦い始めた。

 武器を魔法で聖別化していることで、フレイムファントムの炎の体を斬り落としていく。


「フレデリック達は遠距離から魔法による火力支援を頼む。デュラハンはマヒ攻撃をしてくるから、盾も持ってないのが近づくなよ」

「オレに指図するな! 巻き込まれないようにするんだな!」

 

 俺はフレデリックに一言告げると、一人デュラハンへと突き進んだ。

 一足先に飛んできたので、俺しかこの場にはいない。

 

(倒すことよりも、被害を減らす方向でまずは動くか、どれだけスキルを持っているかも確認しなくちゃいけない)


 デュラハンが大剣を俺に向かって振り下ろしてきた。

 

〈磁力魔法:斥力〉マグネス:リパルション


 巨大な鎧騎士のデュラハンの全力で振り下ろされた一撃であったが、俺の盾との間に斥力を発生させてその衝撃を緩める。

 相手が鉄製の装備を持っている限り、磁力魔法の有効性は揺るがなかった。

 デュラハンなんかは鎧騎士なので、俺一人でも足止め程度ならば十分動ける。


「グゥゥゥォォォ!」


 振り下ろすどころか反発して持ち上がる大剣にデュラハンは無理やりにでも俺に攻撃を当てようと力を込めだしていた。


〈磁力魔法:引力〉マグネス:グラビティ


 俺は横にそれて一撃を交わすと、デュラハンの体を目標に引き付ける磁力魔法を仕掛けた。

 古戦場に散らばっている鎧兜や剣、槍、盾、斧など武器防具がデュラハンに向かって集まっていく。

 それらは強い磁力を当てているので、どれもが銃弾のような勢いを持っていた。

 ドガガガガと金属がぶつかる音が響き、デュラハンが鉄くずの塊のような姿になっている。


「いまだ、フレデリック! ありったけの魔法を叩き込め!」

「だから、オレに指図するな、!」


〈獄炎魔法:煉獄〉ヘルフレア:プルガトリオ


 フレデリックの持っている杖に灼熱の火球が現れ、巨大化した。

 膨大な熱量と質量をもったそれを杖を横になぐことでデュラハンに向けて飛ばす。

 デュラハンは防御したり、援軍を呼ぼうにも全身を古戦場に散らばっていた武器防具が引っ付いて、動きが制限されていた。

 魔法をよけることもできないデュラハンは火球をもろに浮けて爆発炎上を起こす。

 

「あっつ! うわっつ!」

 

 俺は盾で爆風を防ごうとしたが、円形盾、いわゆるバックラーなので防御性能は低かった。

 離れてはいるものの、まばゆい光と共に、熱が俺を襲ってくる。

 それでも、デュラハンとの距離は取りたくなかった。

 完全に死ぬまで油断できない……。


「あいつ……生きてやがる!」


 フレデリックの最大火力の魔法を受けたデュラハンだったが、鎧の一部が溶けながらも、俺に向かって動いてくる。

 デュラハンが乗っていた黒い馬と身動きを制限していた武器防具が消滅していた。

 動きは鈍いので、無効化されているわけではない。


「やるしかないか……」


 磁力魔法を使いすぎて、体が熱くなってきていた。

 鼻血まで出始めたら、倒れるまで時間はかからないことをこれまでの経験からわかっている。


「一撃だな……」


 爆風を防いで、変形したバックラーを捨てて、両手で剣を構えた。

 デュラハンも大剣を同じように構えて、足を止める。


「いくぜ!」


 俺はまずはふつうに走り、デュラハンとの間合いを詰めた。 

 デュラハンは先ほどとは打って変り、横なぎに大剣を振るう。

 ブオンと空気を斬る音がして、刃が俺に迫った。


「横なぎはチャンスだ!」


〈磁力魔法:回転〉マグネス:スピナー


 磁界を操り、デュラハンの大剣を無理やりその場で横向きに回転させた。

 デュラハンは握っていた柄を離し、その腕を大剣が斬りさく。


「グゥォ!?」


 驚きの声が上がり、大剣の柄が俺の方を向いたところで回転が止まった。

 目の前にある柄を握り、レイナからもらっていた聖水をデュラハンの大剣に振りかけて、聖別させる。


「こいつでトドメだ!」


 大剣の柄を両手で握り、デュラハンに切っ先を向けると聖別武器から逃れようとデュラハンが距離をとった。

 フレイムファントムを呼び出そうと手を上空に掲げるが、セリオスたちがデュラハンを囲んでホーリーフィールドを発生させているのでデュラハンの増援はない。


〈磁力魔法:加速〉マグネス:アクセラ


 重量があって重いはずの大剣を俺は腕力と、魔法による加速で横なぎに振りぬいた。

 デュラハンの体が横一文字に斬れて、サラサラと灰になっていく。

 フレデリックの魔法で生き延びたが、瀕死のようだった。


「チッ……クソ兄貴め……」


 魔法を使いまくりで疲労困憊の中、フレデリックの声だけがやけにはっきり聞こえてくる。


(出番うばっちまったな……この後の話し合い参加したくねぇ~)


 デュラハンにトドメをさしてから、依頼の本来の目的を思い出した俺は頭を抱えるのだった。



 




 

 

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