夏の牢獄、まだ見ぬ花火に君を描いた
夏野りら
序文
これは、僕が高校生の頃、故郷の田舎町で体験した物語だ。
親愛なる、
(名前が変わってしまったらごめん。僕たちは……特に彼女はきまぐれだから。実際に二人になるかどうかも定かじゃない)
突然だけど、もしも、ただ本を読み続けただけの人間が、本当の困難に直面した時、彼らはその困難を乗り越えることはできるのだろうか。
高校生だった僕と彼女は、お互いに本が好きだった。
当時の僕は、現実で思い出を作ることよりも、小説の中での疑似体験のほうがずっと勝っていると信じて、本を読んでいた。
だけど、彼女の場合は、自分自身の運命と向き合うためだった。その瞬間から内容を血肉にするために、僕なんかよりもずっと、
実際に困難を前にして、僕たちのような人間は、本で得た学びや気づきや教訓、そういったものを生かすことができるのだろうか。
僕は、生かすことができないと、半分くらい思っている。様々な本を通して得られたものを、本当の意味で自分自身の中に取り込むのは、君たちが想像しているよりはるかに難しいことだ。
だけど、もう半分くらいは、これから話す僕たちの体験を根拠に、生かすことができると信じている。
自分達の気持ちしだいで、という不確実な話だけど。
僕たちには、学生だったという以外に、様々な制約があった。
大人になってからする様々な経験を経ていたのでは遅すぎるという、もどかしさもあった。
そんな中で、僕達が本を読み続けたことは、無駄じゃなかったと信じている。
今から僕が語る内容は、時に、親子として、語るには相応しくない箇所もあるだろう。だけど、そういう部分も含めて、僕は全てを赤裸々に話そうと思う。
これは、夏の似合う彼女と、本にしか興味のなかった僕の、最初で最後の恋の物語。
そして、運命に抗おうとした、二人の高校生の物語。
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