第11話 おはだのはなし

 イモリちゃんの脱いだ皮が水の中に放置されていたので、プラケースの蓋を開けてお掃除をしていたら、向こうを向いていたはずのイモリちゃんがぐいーんと頭をらしてこちらを見上げ、「ごはんですよね?」と圧をかけてきました。


 昨日食べたばかりでしょう。


 そんな風にしてもあげませんよう。


 しかしまあかわいいので、あげたくなってしまうんですがね……。

 我慢です……。



 さて、今回は、そんなイモリちゃんのお肌のお話です。


 まず、イモリの皮膚ひふはすごいんです。


 なんとイモリは肺だけではなく、皮膚でも呼吸ができるのです(※1)。

 皮膚呼吸、なんて呼ばれているものですね。


 ……といっても、人間も皮膚呼吸はできますよ。

 ただ、その量は総呼吸量の0.5〜0.6%ほどだそうです(※2)から、人間の皆さんは、基本的にはしっかり肺を使って呼吸をするようにしましょう。


 一方で、イモリと同じ両生類のカエルは、全ての呼吸量のうち30〜50%が皮膚呼吸なのだそうです(※2)。


 イモリがどの程度皮膚呼吸をしているかは分からなかったのですが、人間よりは遥かに多いのではないかなと思います。



 そして、そのイモリちゃんのお肌のさわ心地ごこちは、


 ぬるん。

 とぅるん。

 もてぃん。


 という感じです。


 うろこが無いことと、表面に粘液が染み出ていることで、そのようなお肌になるんですね。


 ですが、これは、お肌の表面の話。


 イモリちゃんを触ってみると、筋肉や骨があるためか、皮膚の下はかなりしっかりしているように感じます。

 石巻貝さん食べちゃった事件もしかり、かわいい見た目をしておきながら、意外とワイルド……。


 それと、皮膚の表面に関しても、実は細かな凹凸おうとつがあるので、柔らかいながらも、丈夫そうな触り心地です。

 柔らかいのに丈夫……。なんというか、表現が難しいのですが……。


 草むらなどで、アマガエルさんを手で捕まえたことがある方はいらっしゃるでしょうか。


 アマガエルさんたちの場合は、捕まったときに手の隙間からぬるんっと逃げられるくらい、お肌がなめらかだと思うのですが、イモリちゃんのお肌は、アマガエルさんたちよりはゴツゴツしている感じです。



 しかし、イモリちゃんのお肌はやはり、柔らかくてしっとりしています。


 イモリちゃんが陸の上で長時間のんびりしていると、多少はお肌の水分が少なくなるらしく、特に陸の上のツルツルしたところにいると、お肌がツルツルの面にぴとっと引っ付いてしまうようです。


 飼い主は、イモリちゃんが、引っ付いたおててやお腹を、よいしょよいしょとがしているのを目撃したことがあります。






※1 ブリタニカ国際大百科事典【サンショウウオ類】より

※2 ブリタニカ国際大百科事典【皮膚呼吸】より

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