1 巻 2 章 3 話

mcs(モロクリアン・カスタマー・サービス)の局長は曹長と固い握手を交わした。


スノーが局長に駆け寄りモジュールを見せたが、わからない様子だった。


「クラウン来てくれ!」


スノーに呼ばれて駆け寄ると、曹長が横から「よくやった!」と褒めグータッチをした。照れ笑いをしていると、スノーがモジュールを見せてきた。

「これ何か知ってるんだろ?教えてくれ。」


「僕は知ってるってよりか、見た事があるんだ。たぶん。」


「たぶん?シシッ!スノー、持ち帰ってステーションのmcsに提出してくれ。」局長はそう言って、まだ踊って騒いでいる局員達に指示を始めた。


「ちょっと、聞いてみる。」

クラウンはディスプレイを出し、コール音がスピーカーで響く。

局長が振り返って局員達にボリュームを下げろのジェスチャーをしている。


「おいすー。」


「あ、ブラスト!元気?今モニター繋いでいい?」


「うん、いいよ。」


ディスプレイにはドクロのニット帽のブラストと羽を広げた美女達が手を振っている。


「クラウンも元気ー?どこにいるの?ん、マーズ?」


「マーズだよねー?赤いもん。うふふ。でしょー?」美女達の笑い声に、局員達が振り向き、我先に詰めかけた。画面が見えなくなると、局長が局員達を剥がした。


「うはは。そっちは楽しそうだね。」ブラストは笑った。


「そっちの方がどー見ても天国でしょ。」クラウンはすねた顔で言った。


画面にブラストが近づき首を振った。

「エリーに調達を依頼されて、毎日毎日ピクシーエンジェルになりたい娘がクリオネ花が欲しい、衣装をアップグレードして欲しいって、もうクタクタだよ。」


「あは。こっちは結構楽しいかな。これさー、前に回収してなかった?」

クラウンはモジュールを画面に近づけた。


「おおー!ヤバイの持ってんじゃん!」


「これ何?」


「その辺ハックされて襲われなかった?」


「襲われたー。けど、大丈夫。」


クラウンが笑顔で振り返るとmcs局員達が美女に手を振っている。


「それ、ハッキングのモジュール。前にハニが襲われて回収してたやつ。」


「そーだったんだ。」


「それ、下手につなぐとまたハックされるから、コード送るね。ちょっと待ってて。」


美女達をかき分けて、作業をしていると、ピクシーエンジェルズが愛想よく踊って見せたり、投げキッスをしたり、局員たちは大人しくニコニコして、待ち時間は終始うっとりしていた。


画面にブラストが戻って来ると一斉に「シシシッーー!!」ため息の合唱。


「ん?コード読み取って。で、ログって所だけ押して。他押すと、また戦場に戻るから気をつけて。」


慎重にログをクリック。

ーアルバ山のフレイヤを守りし者よ。エレメントは火口から持ち出してはならぬ。我が身を焦がす業火から守り抜けー


「また謎かけかー。前のもそんなだったな。ちなみにギルドに持って行くともうちょっとマシな解析できると思うよ。」


「うん。ありがと。局長いいですか?」


「情報共有が条件なら。ウチで扱える代物ではなさそうだ。」局長はうなずいた。


「あ!クラウン、街中で発動しないようにしっかり保護シートとか絶縁テープで包んでギルドに持って行った方がいい。じゃないと大騒ぎになる。」


「うん。やってみる。ありがと、じゃまたゲームでー。」


「おいすー。」「バイバーイ♡」ブラストとピクシーエンジェルズは手を振って挨拶した。


「クラウン、協力ありがとう。是非、後でmcsに寄ってくれ。」

局長はディスプレイにサインした。


局員達は基地の復旧作業やスピリット回収など手際よく働いた。

1時間もしないうちに数機の輸送機が到着し、救護班と一緒にクラウンはステーションへ戻った。


⭐️


アルカディアステーションは飾り気はないが最低限の施設が揃っていて、ギルドもそこにあった。


壁は一面グレー一色。

カウンターにモジュールを提出した。カウンターのタッチパネルの前でクラウンとスノーは面白がっている。


「おー!今回だけでこんなに稼げるのー?!大量のスピリット回収のおかげだ!」


「スゲーなオイ!オレももらえるのか?」


「2000クレジット払って、ギルドに入ればもらえるよ!」


「高っー!!マジかよ。クラウン金持ちだったんだな。オレ1500クレジットしかねーや。ダメだ。」


「僕、貸してあげるよ。報酬から返せば問題ないよね?」


「いいのか?オレ、ギルドになる!」


⭐️


続く。

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