1巻 2章 1話

⭐️1章のあらすじ⭐️


600年後の銀河、ひきこもり生活中。人助けをしたなりゆきでギルドに加入したクラウン。カルーセルステーションで仲間のブラストと初のクエスト、コンテナ回収に向かうも、テロ事件に巻き込まれる。ブラストと協力して戦い、無事にクエストを達成した。

ブラストと別れ、たった1人で次のクエストへ向かう…。


⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️


クラウンの宇宙船


「マザー、アビリティをアップさせて。」


ーできません。アビリティを上げるにはクエストを遂行してくださいー


「マザー、今の最強クエストはどれ?」


ーナイトメアを討伐。本当の恐怖を知ることができます。推奨レベル35ですー


「殺す気か!オススメのクエストは?」


ー推奨レベル4、マーズ。連合軍に合流し基地の解放をサポート、補給物資を届ける、スピリット探査機の回収のクエストが最適ですー


「オリンポス山周辺のベース、前も取られたってニュースになってなかった?詳しく教えて。」


ーマーズ、タルシス地域のオリンポス山の基地を解放すべく連合軍が集結しています。タルシス山地の基地は抗戦が続いています。アルバ山側へ補給物資を届ける、基地の解放をサポート、周辺のスピリット探査機の回収も達成すると特別報酬ですー


ー目的地に設定しますか?ー


「うん。向かって。補給物資を届けるだけでもいっか。」


ー宇宙船オリオンには現在ドッキングできません。アルカディアステーションに向かいます。到着予定は8日後ですー


⭐️


数日後。


ー明日、到着予定です。3年ぶりの母星着陸ですね。おかえりなさい。マップをダウンロードします。マップガイドを再生しますー


「ダウンロードだけでいいよ。なんとなくわかるから。」


ー紛争地帯ではジャミングされる可能性が高いです。ジャミングされた場合、ギルドスーツとチョコのマップシステムは機能しませんー


「もう眠いって。マップガイドオフ!」


⭐️


赤い光で目が覚めたクラウンは、窓から久しぶりに母星マーズを見た。

アルカディアステーションはドックの半分が軍用車両などで埋め尽くされていた。急に緊張してきたクラウンはドクロのアクセで髪を縛り気合を入れた。


チョコとドックに降り立つと、ヒューマノイド兵に通行書を要求された。


「ギルドから補給部隊の支援に来ました。クラウン・アグニとチョコです。」


ギルドのワッペンを見せるとスキャンされ、行き先を言い渡された。

「装甲バスに乗って、曹長の所へ行け。」


バスに乗り込むと、すらりとした手足の長いヒューマノイド兵、アーマースーツで武装した人間兵、横幅はヒューマノイド兵の2倍はあり、軽装プロテクターのトカゲに似たモロクリアン局員たちが無言で座っている。軍用犬ロボットもいる。


チョコが軍用犬ロボットに駆け寄り、お互いに尻尾を振っている。


通路を挟んでモロクリアン局員の隣に座る。

モロクリアン局員が話しかけてきた。


「アンタの相棒は変わってるな。」


「あ、ペットロボです。サポートで連れてきました。」


「名前は?」


「チョコです。」


「よろしくな、チョコ。」


「あ、僕はクラウンです。」


「シシッ。クラウンな。スノーでいい。オレの相棒はゴーストだ。」


会話はそれで終わり、赤い砂煙を立ててバスは走り出した。


⭐️


バスは数時間、アルカディア平原を走った所でゆっくり止まった。

バスの運転手をしていたヒューマノイド兵が立ち上がり、無言でバスを降りた。


「あれを見てみろよ。」

前にいた人間兵がそう言いながらバスから降りていき、奥にいたヒューマノイド兵、モロクリアン局員と続き、スノーとクラウン、犬たちも降りてバスは空になった。


遠くに目的地アルバ山が見える。山の麓から煙が上がっている。

山に続く砂漠には、折れた輸送機の胴体とスピリット探査機の残骸が点々とあった。


クラウンは戦争の恐ろしさを目の当たりにして言葉を失い、血の気がひいていった。


ヒューマノイド兵「このまま進むのは危険です。」


人間兵「補給物資すら積めずに終わりか。」


モロクリアン局員「補給部隊がどうなったかだけでも確認しよう。あの折れた輸送機の先の所だ。行ってみよう。」


6人と2匹は輸送機の先にある補給部隊へ歩き出した。

アルバ山へ向かって転々と残骸は続いている。

赤い砂漠の窪みに倒れた兵士の影が見えた。

近づくと半分顔が焼け落ち、ロボットの部分が剥き出しになったヒューマノイド兵が、こっちを見た。


砂漠の窪みに入り、負傷兵をバスの運転手がゆっくり起こした。

みな座って戦況を聞いた。


「アルバ山から煙が上がり、山からクラゲ型のバイキングが飛んできて攻撃してきた。補給が済んで飛び立ったばかりの輸送機が次々に落ちて、このザマだ。自分は補給したばかりで落ちてきた輸送機を避けれずに衝撃にやられた。バイキングが飛んで来た後に、スピリット探査機が補給部隊を攻撃しはじめた。まだ補給倉庫に曹長や物資は残っているから抗戦しているかもしれない。」


バスの運転手は負傷兵を励まし、肩をかした。


武装した人間兵とヒューマノイド兵が先頭に立ち、輸送機の残骸の所まで行き、スピリットを撃ち、手招きした。

一つ前進。


さらにその先の、砂漠に突き刺さった輸送機の羽根を盾にして、攻撃してくるスピリットを撃ちながら進む。


胴体がドーム状になった所に入り一息つく。


先頭の2人の前にスピリットの姿が見え攻撃していると、最後尾の負傷兵の後ろにスピリットが現れた。


「ロージー!」バン!

スピリットが倒れる。

クラウンが引きつった顔で先頭の2人にうなずく。その先の坂を下り、屋根だけの倉庫に警戒しながら入って行く。


倉庫に積まれた箱の影から先頭の2人が手招きし、モロクリアン局員2人が続く。あと少しの所で、スピリットの攻撃を受けた。

スノーが膝をつき、ゴーストが箱の後ろまでスノーを引きずって潜んだ。


先頭の2人がスピリット2体のうち、1体を討ち取った。

クラウンが倉庫にスライディングで駆け寄り、スノーの側に滑り込んだ時、残りのスピリットが攻撃を仕掛けた。追いかけてきたチョコがしぶきをあげて箱ごと吹っ飛んだ。

クラウンは全てがスローモーションに見え、赤いしぶきと転がるチョコをただ見ている事しかできなかった。


⭐️


続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る