幼なじみ①
──── 九条財閥とまではいかないが、西園寺財閥もそれなりのグループで、その西園寺財閥の御曹司であるこの僕、西園寺蓮は幼なじみで親友でもある九条柊弥が時に心配でならない。
あの柊弥が妙に執着している“最高のおもちゃ”とは、一体どんな女なのだろうか。僕は柊弥と付き合いは長いけど、女に興味なんて更々ないってタイプだったはずだ。『連絡が来ねえ』『女ってマメに連絡してくるもんなんじゃねーの?』等々。あの柊弥が女と連絡を取りたいだなんて、信じられないよ。
・・・・“最高のおもちゃ”……か。どんな女が気になるね……楽しみだ。
「ようやく柊弥の“最高のおもちゃ”とやらが拝めるわね」
「ハハッ。落ち着きなよ、凛」
「蓮、私はいつだって落ち着いてるわ」
柊弥の女絡みの話となると、すぐ機嫌が悪くなって苛立つ凛を毎回宥めるのが兄である僕の役目でもある。凛は柊弥のことが大好き……とは言っても、ラブではなくライク。“柊弥は私のモノ!!”という独占欲が年々増していて、本当に大変だ。
・・・・さて、そろそろ来てる頃かな? 僕の予想では、オドオドした小動物系女子だと勝手に思っている。いや、でも分からないな。柊弥のルックス、もしくは家柄目的で上手いこと言い寄ってきた女……という可能性も捨てきれない……となると、それなりの女だろうな。相当な手練れか?
うーーん。まあ……試してみるのもありかな? 柊弥は僕の大切な幼なじみで親友だからね──。
──── 予想も何もかもが覆された。
柊弥の隣に居たのは綺麗な顔立ちをしていて、化粧っ気のない素朴な女だった。小動物系女子でもなければ、金目当て女子でもなさそうだ。どう見ても、柊弥に向けている視線が他の女とは違う。むしろ柊弥を毛嫌いしているようにも見える。
それに、ハイハイと言うことを聞くような女にも見えない。どちらかと言えば、気の強い方だろうな……このタイプは。
・・・・へぇ、なるほど? 今までに無いタイプだ。これは面白くなりそうな予感がするね。まあ、あの柊弥が自ら選んだ女だから問題はないと思うけど……やっぱり心配だからね、ちょっと揺すらせてもらうよ?
僕達を見て戸惑っている彼女は、あろうことか柊弥のことを『九条』と呼び捨て。それを上杉さんが見逃すはずもなく、彼女を連れて行ってしまった。
「ちょっと柊弥!! 正気!?」
「あ? なにがぁ?」
「あんなド庶民の何処にでも居そうな女!! 容姿だって、よく言って上の中レベルじゃない!!」
「まあ、そうだわな~」
「あんな女のどこが気に入ったわけ!? 信じらんない!! もっと他にいるでしょ!?」
「おい、凛。俺のおもちゃにケチつけるわけ? この俺が選んだおもちゃに」
・・・・あの柊弥が、まさか……女を悪く言われてイライラしているだと!? これは想像以上の展開だな……。まあ、柊弥は無自覚なんだろうけど。不機嫌になった柊弥に、凛はシュンとして黙りこくる。
「まぁまぁ……凛。柊弥のサーバントちゃんをそんな悪く言ってはいけないよ? 柊弥はそんなにイライラしないでくれ。な?」
「別にイライラなんてしてね~し。俺、ちょっくら行ってくるわ」
上杉さんに連れて行かれた彼女のことが、気になって仕方ないんだろうね。上杉は反対していたからなぁ、一般庶民をサーバントにするのを。彼女が悪く言われていないか、心配になっているのか? 柊弥は。……本当にらしくないね。
「……うん、そうだね。行ってあげなよ」
「柊弥。上杉はサーバントリーダーよ? 今、柊弥が首を突っ込むのは如何なものかしら。柊弥のことを『九条』だなんて……許されるはずっ……」
「俺が許してんの。なんか文句あるー? それに……あいつをイジメていいのは俺だけ。俺のモンを勝手に触ったり、傷付けたりする奴は許さん」
そんなセリフ、柊弥の口から聞いたことがない。それに、今まで僕達に見せたことのない表情の柊弥に、凛も前田も僕も驚きが隠せなかった。
まさに真剣そのもの。
・・・・柊弥にこんな表情をさせて、ここまで言わせる女……一体何者なんだ? よくよく考えてみたら、この部屋に入れている時点で彼女は柊弥に──。
「もういい、バカ柊弥!! 勝手にすれば!?」
「こら、凛。そんな言い方はやめないか。柊弥、行ってあげな? 困っているだろうから」
「言われなくてもそうするっつーの」
柊弥が部屋を出ていった後、なんとか凛を宥めた。正直疲れるんだよなぁ……。前田さんにも宥めるのを手伝ってもらって、やっと落ち着いたって感じ。
少しすると上杉さんが戻ってきた。
「上杉、まさかあなた……尻尾を巻いて戻って来たんじゃないでしょうね?」
「私はサーバントリーダーとしての責務は果たしました」
ということは、ペナルティは与えた……ということか。
「……ああそう」
不服そうに腕を組んで、ソファーに座っている凛。上杉さんは頭を下げて凛の後ろへ回った。そこへ柊弥達が戻ってきて、微妙な空気が流れながらも自己紹介をし合った。
・・・・『七瀬舞』……か。
「そろそろ教室へ行こうか。柊弥、ちょっといいかな?」
「あ? なに?」
「前田さん、舞ちゃん連れて先に行っててくれるかな?」
「承知いたしました。では、参りましょう」
「え、あ、はい」
上杉さんとは違って、前田さんは良い意味で他人に一切興味がない。彼女に何かをする……なんてことはないだろう。だから、前田さんに任せておくのが無難。
僕と柊弥以外が出ていった部屋は、とても静まり返っていた。
「んだよ」
「彼女のことが本当に大切なら、今すぐサーバントを辞めさせるべきだ。分かっているだろ? 柊弥のサーバントになるってことはっ……」
「狙いの的になる……って言いてぇんだろ?」
“そんなことは重々承知”と言わんばかりの顔をして僕を見ている柊弥。
「何をされるか分かったもんじゃないよ。陰湿なことをする奴も必ず出てくる。だからっ……」
「仮にあいつのことが大切ってんなら、サーバントにすべきでしょ。これから一生俺の傍にいるとして、この3年間俺の傍に居るのが耐えきれず、壊れちまうのなら……それまでだったってことだろ。逆を言えば、この3年間俺の傍にいれたら……ま、無敵ってことっしょ」
・・・・驚いた。まさか柊弥……彼女のこと本気なのか? いや、まだ自覚していない可能性もある。柊弥が自覚する前に、彼女を試す必要があるな。変な虫だったら、排除しなくてはならないからね。
「随分とお気に入りなんだな。舞ちゃんのこと」
「……だから言ったろ? “最高のおもちゃ”だってさ」
・・・・柊弥には悪いけど、彼女はきっと……すぐに壊れてしまうよ。
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